2章 30話 「パンがなければ菓子を食べればいい話」
ちょい早く投稿。
こんにちは。私はキアーラ・カサッツァです。
後の祭りという言葉があります。
お祭りは楽しくて嬉しいものなのに、この言葉は取り返しのつかない事を意味します。
なんだか悲しいですね。
「全員両手を上げたら、一人ずつ銃を手から離して床に落とせ」
まずは厄介な銃を捨てさせる。
本当なら身体検査もしたいところだな。
だが残念ながら、俺がのこのこ近づいたら、その瞬間に取り押さえられてしまうだろうからできない。そうならない距離からこいつらを無力化しなければならない。
それには仕込みが必要だ。
警官たちが苦虫を潰したような顔で渋るので、館長の頭を銃で突く。
「わかった! 捨てる! 捨てるから撃つな!」
警官Aが慌てたように言うが、警官BとCとアイコンタクトでどうしようかと、もたついている。
優柔不断な野郎はイライラするから、捨てやすいようにしてやろう。
俺の弁舌でな。
普通、素手での戦闘に自信がある獣人はわざわざ銃を持ったりしない。
馬鹿みたいな腕力で物を投げれば人は死ぬし、殴っても人は死ぬ。
つまり、こいつらがわざわざ銃を所持しているのは、ステゴロには自信がないからだ。
まずはその辺りを突いてやる。
「虎や狼なら銃なんて躊躇なく捨てるだろうになぁ。素手でも十分強いからな。犬は弱っちいから幼女が怖くて、銃を手放せないか?」
「っ! 大人を侮辱するんじゃないっ?!」
案の定プライドを刺激されて激高。
ただでさえ混乱していたのに、頭に血が上り倍率ドン。
おっと。警官Aが真っ赤な顔で銃をこちらに向けて来ようとしたので、素早く館長の頭をつかんでこめかみに銃を突きつける。
「おいおい。こんな幼女相手に凄むなよ。まるで図星を突かれたみたいだぜ? 本当にそうなのか? 弱っちいから銃を捨てられないのか? 力がないからなのか? こんな小娘相手に銃がないと対抗できないから捨てられないのか? どうなんだ? あんたらは弱いのか? だから俺に暴力を振るうのか?」
更に煽っていくスタイル。
この世界の獣人は強さに異常なまでのこだわりがあるからな。
弱いのかと聞かれて、ハイそうですかとは言えない。
ましてや怖いから幼女に銃を突きつけたなんて噂が流れでもしたら、獣人として終わりだ。
警官なんて力を誇示しなければならない立場のエリート様は特にな。
だから腹わたが煮え繰り返っていても逆張りするしかないだろ?
「そっ、そんなことはない。暴力を振るうなんてとんでもない。銃はあくまで……そう、飾りだ! 君のような子供でも、我々がどれくらい強いのかが、すぐに分かるようにするための飾りだ」
「そうだ、そうだ! 君のような強さがわからない子供に分かりやすくするのだ! だから銃は飾りなんだ!」
「逆に強いから飾りを持っているのだ!」
支離滅裂な言い訳でプライドを守ろうとする警官ABC。
ちょっと何を言っているのかわからない。
思いつきで喋るから更に脳のメモリを言い訳に使うことになる。
「さっきそこの男を撃つのに使ったのに飾りか?」
赤い。
「ぬぅ……。そいつは、悪人だから仕方ないんだ!」
「「そうだ!悪人だから仕方ないんだ!」」
思考停止の馬鹿反論。いい感じに処理速度が遅くなってきているかな?
いや、元からか?
「どうにも信じられないな。強面の男にビビったからつい撃ってしまったように見えたからな。相手は素手だったのにな。」
「ビビったなどと、そんなことは断じてない! 我々は君がいたからプライドを捨てて、君を守るために銃を撃ったんだ! 本来なら素手で取り押さえていた!」
会心の言い訳を思いついたんだろう。鼻息荒く言ってくる。
まぁ、それなら第三者への言い訳がたつかもな。
我が意を得たりとでも思ったのだろうが、そうはいかない。
「そうか、プライドを捨てて銃を撃ったのか。確かにいまも俺に銃を向けようとしたし、プライドのない人間なのかと思ってしまった。やっぱりあんたらは俺に危害を加える人間なのか?」
ほら、今度は幼女に銃を向けたと言う失態の言い訳を考えろ。
「いっ、いやそれは誤解だ! 銃を向けようなんてしていない! 向ける必要もない! 君を助けに来たのだからな!」
露骨に話を逸らしてきたな。馬鹿すぎる。
それに通報があって来たって今しがた言ったばかりだろうに。
途中で俺に気づいたくせに何故俺を助けにきたことになるのか。
子供だと思って適当をこきすぎだ。
こと、ここまで来ても、こちらを侮る短絡さには呆れるが、まぁ馬鹿の方が都合はいい。
「ならもう銃はいらないよな? 銃があると、怖くてたまらない。銃を捨ててくれれば、あんたらが強いのも、俺のためにやったことだと言うのも信じよう」
「そうかそうか! 信じてくれるか!」
そう言うと警官たちは何故か嬉しそうに銃を捨てる。
こいつらの中でプライドが守られたんだろう。
よくわからんが。
「まだ怖いから銃をこちらに蹴って寄越してくれ」
「わかった。これで信じてくれるな?」
そう言って警官Aが3人分の銃を蹴ってこちらに寄越す。
「あぁ、信じよう」
俺は銃を開いている方の手で一丁持つ。
二丁拳銃スタイルだ。
そして俺はふと気付いた様に王虎の方を見やり、警官たちに語りかける。
赤い。
「本当にその男が通報にあった男なのかな? その匿名の人は、特徴を言ったりしていたのか?」
「間違いない! 虎の獣人だとの情報があった!」
「ん? 本当に虎の獣人だったか? ライオンじゃなかったか?」
「「「え……?」」」
「まてよ……? もし、ライオンの獣人様だったら問題じゃないか?」
だんだんと顔が青ざめて行く警官たち。
さもありなん。ライオンの獣人は須らく、この国を牛耳る「真なる開拓の一族」だからな。万が一銃で撃ったとなれば、一族郎党もろとも処刑されるだろう。
「確認した方がいいんじゃないか?」
心配している風を装って言ってやると、警官たちは俺が銃を持っているのも忘れて王虎に群がる。打って変わって丁寧に仰向けにしている。
赤い。
みればすぐに虎の獣人だとわかるだろうに。万が一の可能性を否定したいのだろう。
随分熱心に確認している。俺はその間に最後の仕掛けを施す。
「うん! 大丈夫だ! こいつは虎で間違いない!」
安心した様に言いながら、警官Aが立ち上がる。
「よし、これでわかってくれたな? こいつが悪人だったと言うことは、我々が強く誇り高い正義の味方であることだ。さぁ、君も銃を捨ててこちらに来るんだ」
何故、王虎が虎の獣人で悪人だと、こいつらが強く誇り高いことになるのか不明だ。
だから素直に口にする。
「何故そうなるのかわからん」
気絶した館長に無理やり持たせた銃を、間抜けづらした警官Aに向けながら。
「えっ?」
うん。間抜けづら極まれりだ。ハニワみたいになってる。
まぁ、全部解決したと思ったら、やっぱり銃を向けられて、しかもその銃は気絶した人質に持たせているという状況。
「頭が悪いのか? 現状を忘れちゃったのか? それとも目が見えなくなっちゃったのか? こいつを殺されたくなかったら両手を上げろ。そして後ろに下がれ」
なお、殺されそうになっている本人の両手に銃が握られている模様。
そしてその手を操る様に俺の手が添えられています。館長の指がトリガーにかかっていても俺の指は細っこいので、館長の指ごとトリガーを引けます。
「どっ! どう言うつもりだっ!」
どう言うつもりでしょうね?
「どうもこうも、さっき言っただろ? こいつを殺されたくなかったら両手を上げて入口の外まで下がれ。そして包帯と車のキーを用意しろ。あと財布もだったか?」
さて、先ほど俺は子供でも大人を殺傷できる銃を4丁も手に入れた訳だ。
両手両足につけてスタイリッシュ・ガン・アクションも可能だ。
これなら悪魔だろうと天使だろうと泣かす事が出来る。
しかしそれには大きな問題がある。
極めて重要かつ致命的な問題だ。
それは先日申し上げた通り、俺が魔力を持っていないという事だ。
この世界の銃は魔力なるものがないと撃てない。
つまり俺が持っているものはただの鈍器✖️4でしかないのだ。
そう今までのは全部ハッタリだ。
魔力がない人間はこの世界ではほぼ皆無なので、警官もまさか俺の行動がハッタリだとは思わなかったのだ。
否。思えなかった。
なぜなら。
___撃ち殺してやろうと思う気持ちは本物だからだ。
チラリと王虎の方を見ると、未だに目を覚まさず倒れたままだ。
そして床にも胸にも血が広がったままだ。
そして胸が上下に動いていない。
そして赤い。
赤い。
赤い。
赤い。
赤い。
そして赤い。
あ〜。目の前がチカチカする。
頭がガンガンする。
自分の口からギリギリと軋む音がする。
どこからか、獣が唸る様な呻き声が聞こえる。
世界がグラグラと揺れている。
「お、おい? 大丈夫か?」
魔力がないなら、魔力があるやつに引き金を引かせればいい。
「あ〜、やっぱり包帯も車のキーも財布もいらねぇや」
「なに? なんだと? 何故だ?」
そして王虎を撃ったくせに、俺を心配するように見て近づいてきた、敵どもに弾をぶち込んでやればいい。
「自分でとるから」
同じように赤くしてやればいい。
俺はこいつらがしたように、こいつらの胸めがけて引き金を引きまくった。
お読みいただき誠にありがとうございます!
もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!
感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!
作者にとってとてつもない励みになります!
引き続き頑張っていきます!




