2章 28話 「なにが引き金になるのか分からないって話」
どうもこんにちは。私はキアーラ・カサッツァです。
晴天の霹靂と言う言葉があります。
霹靂とは雷です。雷は音と光がすごいです。
みなさんは雷に撃たれたらどうしますか?
「その男性を離せ! さもなくば発砲する!」
拳銃を構えたまま警察を名乗る男の一人が王虎に警告を発する。
その間にも他の男達は室内に入って来て王虎を取り囲む。
当然のように全員が拳銃を構えている。
___なんだこれは?
どう言う事だ? ここで出てくるのはマフィアだと思っていたのだが……。
俺たちの商売を邪魔してきた黒幕なりマフィアなりが出てくる場面じゃないのか?
なんで警察が出てくるんだ……?
なんだって商売上の小競り合いで、態々警察が動く?
「早くしろ!」
男の叫ぶ声で俺はハッと顔を上げる。
銃という明確な危険があるのに、思考に囚われるとは失態だ。
周りを見渡すとどうやら最初に警告を発した男がまた叫んだようだった。
「おいおい。そんな物を善良な市民に向けてどう言うつもりだよ?」
落ち着いた声音で王虎が肩をすくめながら男の方を向く。
なんの気負いもない自然体に見える行動だが、その手には館長を掴んだままだ。
人一人をあたかも重さがないかのように片手で持つ王虎の腕力が、改めて化け物級だと言うことがわかる。
「動くな! 妙な真似をしても発砲する! こちらの指示に従わない場合も発砲する!」
その化け物ぶりをまざまざと見せつけられた警官達が震える声で叫ぶ。
額に冷や汗を流して腰が引けていて、懸命に虚勢を張っていることが見え見えだ。
「おいおい、随分と威勢がいいな。一体どんな理由で俺が撃たれなきゃならないんだ?」
王虎も当然それに気づいており、一欠片の緊張も見せず、穏やかに王虎が語りかける。
だがその眼光の鋭さは健在で、それを見た警官達はますます及び腰だ。
「その男性に暴行を加えているだろうが! 早く手を離せ!」
それでも大声を張上げる警官。
職務に忠実なのか、それともビビっている自分をごまかす為なのか。
まぁ、後者だと思うが。
しかし……銃口を突きつけておきながらこのビビり具合。
足とか生まれたての子鹿状態。
しかも銃を構えていながら、こいつらからは暴力の匂いがしないな。
殺気とでも言おうか? 力を振るうことに慣れた人間特有のスゴ味のような物を全く感じられないのだ。
……こいつら発砲すると言いながら、実際には撃つ気あるのか?
王虎もコイツらの言動に違和感を覚えているな?
チラリと俺の方を見てきたので頷いてやる。
「暴行? 何のことだ? これはこういう健康療法だぜ? 肩こりに良いらしい」
「ばっ、馬鹿なことを言うな! そんなわけないだろう!」
「そうだそうだ!」
「そんなことで健康になるはずがない!」
王虎は無茶にも程がある言い訳で馬鹿にしているように挑発する。
怒らせて、情報を引き出そうと言う腹だろう。
この後どのような状況になろうと立ち回りを優位に持っていくつもりだ。
だがそんな事はつゆ知らず挑発にも律儀に反応する警官達。
心なしか返答が間抜けだ。
「あんた達が知らないだけさ。なぁ? 館長。そうだよな?」
万力のような力で首を掴まれ、もう少しでも力を込められれば首を折られてしまうかもしれない館長は、少しだけ動く頭で懸命に頷いている。
「ほらな? 館長もこう言っている。あんたらの勘違いさ」
そう言いながらニヤリと笑う王虎。
……凄く悪者っぽい。いやマフィアは悪者だけど。
だってまだ館長から手を離さないし。
まぁ俺もこの状況なら離さないけど。
「かっ、勘違いではない! 匿名の通報があったのだ! この劇場で謎の巨漢が館長に恐喝と暴行を働いているとな!」
「市民を守るのが我々の仕事だ!」
「抵抗は無駄だ!」
王虎の極悪スマイルに警官達は、たじろぎながらも気勢をあげる。
どもっているのはご愛嬌。それに王虎はまた肩をすくめた。
しかし、通報か……。
俺たちが此処に来てから数十分しか経っていないし、暴行どうこうの話をするなら数秒前の出来事だ。通報者がテレパシーでも使えない限り、それと間の抜けた警官達が空間転移でもできない限り辻褄が合わないタイミングだ。
もう少し情報が欲しい。今度は俺から王虎にアイコンタクトを取る。
王虎は目だけで頷くと一歩前に出て、警官達を威圧する。
「じゃぁ、その匿名さんが間違えているんだ。 まさか、間違えで善良な一市民の俺を撃ったりしないようなぁ!」
地響きのような恫喝に、警官達が構える銃口がガクガクと上下に揺れる。
だが、ここまでされても警官達が銃を撃つ気配はない。
それどころか目に涙を浮かべて、顔面は蒼白。今にも倒れてしまいそうだ。
よく見ればどいつもコイツも若造ばかりだ。
まだオムツも取れたばかりのチェリーボーイばかりってところか。
となると……。ますます不自然だ。
今までのコイツらの態度からコイツらは王虎の事を知っている。
確かに王虎の見た目はクソでかい筋肉隆々の虎男だから初見でもビビるだろう。
しかしだ、警官で、今にも発砲できる状態で、大義もあって、何を恐れる?
「わ、われっ! 我々は脅しには屈しない!」
「くっし、ないぞ!」
「あわわわわっ」
つまりコイツらは王虎のヤバさを知っていると言う事だ。
そんなものは関係なく命が脅威にさらされている状態である認識しているのだ。
多分コイツらを送り込んだ人物に教えられたから。
だから目の前で無様にビビリ散らかしている。
「あぁあん?!」
「「「ヒィーっ!!」」」
だが、何故コイツらなんだ?
王虎が相手であると認識しているならコイツらでは実力不足の役者不足。
なんなら一個小隊でも連れて来るべきだ。
「……狙いはなんだ?」
王虎の恫喝にとうとう腰を抜かしてしまった警官達をみて俺は呟く。
するとその声に反応したのか、警官の一人が俺の方を向く。
目が合うと、そいつは驚いたかのように目を見開く。
なんだ? 俺がいた事に驚いたのか? まさか今まで気づかなかったのか?
逆に俺がその間抜けさに、驚いているとそいつが口を開く。
「子供がいる」
呟くようにそう言うと、驚きに染まっていた間抜け面が真面目な顔になる。
あれ……?こいつ震えてないぞ?
俺が気づくのと、そいつが王虎に再度銃口を向けるのは同時だった。
王虎は手に持っていた館長を横に放り投げて___
パンと乾いた音がしたと思ったら王虎の胸でパッと赤いなにかが弾ける。
続けて他の警官も王虎に銃口を向ける。
「子供を守る」
パンとしてまた赤いものが弾ける。
「俺たちが守る」
パンとしてまた赤いものが弾ける。
そして、どさりと王虎が床に倒れる。
そして床に赤いものが広がった。
俺はそれをただ見つめていた。
お読みいただきありがとうございます!
こっから段々と動いていく予定ですが、故に難産です。
もうしばらくおつきあいください!




