2章 6話 『推理は俺の得意分野って話』
どうも今日は、キアーラ・カサッツァです。
推理物というのは探偵役に対する読者からの信頼があるから成り立つんだと思います。
こいつなら正解の道に進むに違いないという信頼です。
でも、逆に物語をミスリードする道化役もまた読者からの信頼があると思うんです。
こいつの推理は間違っているという信頼です。
そうでなければ、どっちの推理の視点で見ればいいのか読者は迷っちゃいますものね。
そして道化役はいつでも結論を決めてかかる傾向にありますよね。
「トントン姐さんは、その柔らかさとモチモチすべすべ肌を使った、ローションによる技が得意なんです。ですから肌の荒れはお仕事にも影響が出ます。
体型だって最も柔らかく、それでいて包容力のあるベストな状態があるんです」
再度しょんぼりしてしまったトントンさんに代わってフレアさんが補足するように言う。
彼女が秘書然とした姿をしているため、何やら優れた商品のご紹介のように聞こえるが、ご紹介しているのは18禁のエロエロテクニックだ。
もう、俺が幼女であると言う認識は無いんですね? そうですか……。
ローションによる技って……。この世界にもあるんだ。
人類はどの世界でも同じようなことを考えるんだなぁ。
ていうか、ローションもあるんだなぁ。
しかし、トントンさんの体系は計算されたものだったのか。
前世でもおデブタレントが、ワザと太っていたりした。
それはそれで健康維持が大変だと聞いたことがある。
健康に気を使っているなら、なおさらポーションでも治らないと言う症状がきになるところ。肌荒れの主な要因はストレスや無理なダイエットだったりするけど、だったら逆に6キロ太ったって言うのが矛盾するしなぁ。
「いつくらいから、体重に変動が?」
まずは色々聞いてみようと思い質問する。
「だいたい一ヶ月くらい前かな?」
トントンさんが思い出しながら答えてくれる。
一ヶ月で6キロか。食っちゃ寝していたなら不自然な増加でもないかな?
「運動は?」
「もちろん、しているわ。適度な筋肉をキチンと維持しないと、柔らかいプニプニにはならないんだから♪」
トントンさんが言うには、やはり体型の維持には色々な苦労があるそうだ。
その後もいくつか質問してみたが、ダイエット方法に不自然なところはなかった。
むしろ、彼女がこなしている運動をしたら、普通の女性はムキムキになってしまうのでは?
「それに運動の後のお風呂が格別なの♪ パピヨンのお風呂は広くて綺麗だから、何度も入っちゃうのよね♪」
「長時間お風呂に入るだけで、すぐ痩せられますしね」
フレアさんがしたり顔で追随する。
「フレアさん、それ水を飲むとすぐに体重戻るでしょ?」
俺がそう指定するとフレアさんは驚いた顔する。
「そうなんです! せっかく痩せたのに、水を飲むとまた元に戻るんです!」
「それって体の水分が外に出ているだけで、実際には、たいして脂肪は燃焼していないんですよ。だから痩せたことにならないです」
がーんという効果音が聞こえてきそうな表情になるフレアさん。
ていうか、フレアさんダイエットの必要なんてないでしょうに。
まぁ、あったかいお風呂が脂肪の燃焼を助ける働きはあると思うけど、それだけではダイエットにはならないよね。
「じゃあ、お水を我慢するのは、あまり意味がないのね〜?」
「むしろ血がドロドロになって詰まりやすくなるので、とてもこと悪いです」
血がドロドロと言うワードにビビったのか、二人は出したお茶をゴクゴクと飲み始めた。
一瞬でコップが空になったので、すぐにお代わりを注いであげる。
ん〜。水分不足が肌荒れの原因かな? でもそれだとポーションで治りそうなもんだけどな? まだ断定はできないか。
「食べ物はどんなものを食べていますか?」
俺は次に太めの体型維持のため、偏った食生活しているのではないかと睨んだ。
「トントン姐さんには、たくさん食べていただかないといけないので、飽きないよう毎回何種類ものお料理をお出ししています」
「具体的には?」
「お肉類、芋類、きのこ類。お魚などもお出ししていますね」
淀みなく答えるフレアさん。
まるで有能な秘書のようだ。
芋を食べているなら、ビタミンも食物繊維も取れているなぁ。
魚食べているならカルシウムも取れているだろうし。
「姐さんはお芋とキノコが特にお好きで、何度もお代わりをなさいます」
余計な一言を放った瞬間、トントンさんの声が上がる。
「もう!フレアちゃんったら!」
恥ずかしがったトントンさんの張り手がフレアさんの背中を襲った。
バシンという音と共に崩れ落ちるフレアさん。
トントンさんは両頬に手を当てイヤンイヤンと首を振っている。
……これだけ元気でパワーが出せるなら、栄養不足とかでもなさそうだ。
残るはストレスか。
そう思ってトントンさんを見ると、ちょうど目があって笑顔で返された。
ストレスっていう線もなさそうだ。何故ならマダムがケアしてしまうからだ。
彼女の能力なら人からストレスを取り除くなど容易い。
しかし、となると原因がさっぱりなんだよなぁ。
「どうしたもんか……」
俺が思案にくれていると、トントンさんの目が光ったように見えた。
「この場で原因がわからないなら、パピヨンにきてみたらいいじゃない♪」
なるほど……これが狙いか。
何故マダムがトントンさんをよこしたのかと思ったが。
『断ればいいんじゃないか』
そうもいかないんだよ。見てみなよ。
目線でルナに促した先には、俺がパピヨンに来るかもしれないと聞いてキラキラした目で俺をみているフレアさんがいた。
多分友達を家に呼ぶのが嬉しいのだろう。
断りでもしたら、この表情が一瞬で曇ることは必至。
甘いのもちょろいのも自覚してるんだけどね。
初めてのお友達にこんな顔されちゃあね……。
「パピヨンに行きますか……」
俺はこの世の春がきたと言わんばかりの笑顔を見ながら、更なる思考の海へと飛び込む。
運動もしていて、食べ物も問題がないのに肌が荒れて太る。
そしてポーションが一時的にしか効かない。
逆にいうと一時的には治っているんだ。
ということは治った後でまた発生しているのではないか?
つまり直した後に、また肌を荒れさせる何かがあるのでは?
考えられるものといえば……。
「ローション。ローションって誰が作っているんです?」
春が来ているフレアさんに聞いてみる。
「ローションですか? エルフの方々が作っているはずです」
やはり! ポーションもエルフ作成、ローションもエルフ作成。
ここに因果関係があるに違いない!
俺が原因究明の糸口を見つけると、ルナが俺の隣にやって来て告げる。
『違うんじゃないかなぁ?』
おいおい、水を差すようなことを言うんじゃないの。
お前は助手らしく、俺の推理力に感嘆の声を上げていればいいんだよ。
一時的に治っていることが外的要因であることの証左だろ。
『ん〜』
なおも納得いっていない風であったルナを無視して、俺はフレアさんとトントンさんに改めてお願いする。
「パピヨンに連れて行ってもらえますか? 」
「喜んでぇ!!」
「うんとサービスしちゃうんだから♪」
客としていくんじゃないですよ? 分かってます?
俺は一抹の不安を感じながらも、娼館に行くという行為にドキドキするのだった。
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