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37話 『パピヨンの秘密の話』

やったよ!ユニークが1000を超えたよ!

これも読んでくださっている皆様のおかげです!

ありがとうございます!

 

 どうもこんにちは。キアーラ・カサッツァです。

 この世界に生まれ落ちて十余年。

 最近わかってきたのですが、この世界の人間は感情と行動が直結している傾向があります。

 理性がないわけではないのですが思い立ったら即行動がデフォルトっぽいです。



 なんでこう直情的なのか……。

 死が隣り合わせだからなのか? どうせ死ぬならやりたいように生きる的な?

 生きるだけ生きたら野垂死にいたしますみたいな。

 傾奇者かな?


 そのせいで今現在か弱い人間のしかも幼女の身でありながら獣人のガチバトルに生身で介入させられております。


 しかしながら今後もそれでは困るので俺はナイフとフォークを下ろさぬまま王虎に言う。


「王虎。甘えすぎだ。マフィアのボスがこんな状況でキレていいと思ってんのか」


 まずは一応この中で一番責任ある立場の王虎を嗜める。

 それを聞いた王虎はバツの悪そうな顔をしながら戦闘態勢を解く。


 俺はこれ見よがしに舌打ちをしながら言ってやる。


「マフィアが意味もなく暴力を振るうな。チンピラじゃないんだ」


「だけどよ、こいつが俺やバンビーニを侮辱したからよ……」


 なおも不服そうに言い訳をする王虎に、イラっとした俺は寸止めしていたフォークを突き出す。


「いてぇ!!」


 大げさな野郎だな。王虎は飛び跳ねながら後ずさる。

 ズボンの上からだからそんなでもないだろうに。


「ガキじゃねぇんだから小娘に煽られたくらいで一々騒ぐんじゃねぇ」


 王虎のビビった表情を見ながら王虎にいう。


「こ、小娘……!」


 反対側からはフレアさんの声がするが今は無視。


「俺言ったよな? これから敵が増えるって。

 だってのに煽られたくらいで敵対の道を選ぶのはどう言う了見だ?

 お前のなすべきことは敵を増やすことか?」


 この二人がどういう関係かは知らないが、最初の対応から少なくとも敵対勢力という訳ではないはず。

 ならばわざわざ敵対することなくむしろ仲間に引き入れるべきなのだ。


 王虎は自分の行動がいかに軽率だったかを気付いたようで表情を引き締め唸る。

 頭を冷やす時間をやるために俺はそれを横目に今度はフレアさんに話しかける。


「それとフレアさん。あんたはなにやら俺と友誼を結びにきたらしいけどよ。

 俺の同席者に喧嘩売るってのはどういうつもりだ?

 あんたのところでは相手の連れを侮辱しましょうって教えてんのか?」


 普通に考えたら友好関係を結ぼうとしている人間にする対応ではない。


「そんなわけ……!」


 フレアさんは焦ったように言い訳しようとするが俺は言葉を重ねる。


「じゃあ、あんたはマダムとやらの指示より私情を優先したわけだ。

 俺はさして重要な相手じゃないから王虎を煽る事を優先したんだな?」


 フレアさんの勘所であるマダムの名前を出してさらに追い詰めてやる。

 ガチバトルなんて考える余地もないほどにな。


「ち、違う……!」


 マダムの名前を出されてことで益々あわあわと焦るフレアさん。


「違うならどう言うつもりだ?」


「それは……その男が我々を侮辱したから……」


 叱られた子供のように俯き加減にボソボソと言うフレアさん。

 まぁ実際に叱られているんだけれども。


「あんたら二人が侮辱するしないは俺に関係あんのか? それは私情じゃないのか?」


 幼女が大人を相手に未熟さを指摘すると言うなんとも不思議な図。


「ムカついたやつの対応が先。俺のことは後回し。その程度ってことだろ? 要するに舐めてんだ」


 否定しようと顔を上げたフレアさんを視線で射すくめ黙らせて俺は続ける。


「二人は知り合いみたいだし、じゃれあい程度なら本筋の前のコミュニケーションで済ませてやる。

 だが、ガチで喧嘩するってんなら他所でやんなよ。俺も暇じゃねぇんだ」


 呆れたように鼻で嘆息し、肩をすくめてお開きを言外に告げると王虎が俺の前に回ってきた。


「すまねぇ。俺が悪かった。つい昂ぶっちまって」


 王虎は即謝罪してくるか。


 落とし前をつけるべきタイミングでキチンと行動できる程度には頭が冷えたようだ。

 俺が水を向けたら率先して動けるくらいには頭が回るんだからちゃんとしてほしい。


「ボスのお前がそんなんで今後やれんのかよ?

 その程度でやっていけると思ってんのかお前?」


 だから嫌味の一つもこぼれてしまうのは許してほしいね。


「返す言葉もねぇ。本当に申し訳ねぇ。この通りだ」


 そういって王虎は再度頭を下げる。

 今日はマフィアのボスの頭がよく下がる日だ。


「頭下げられるくらい面子の立てどころわかってんなら、煽られたくらいで熱くなるんじゃないよ、まったく……」


 俺が最後に小言を言うと王虎のでかい身体が小さくなったように肩を落とした。


「あの!」


 今度はフレアさんから声がかかる。


「申し訳ありませんでした!」


 そちらを向くとガバリと音がしそうな勢いでフレアさんが頭を下げる。

 90度どころか折り畳まれているレベルの謝罪。

 身体柔らかいな。猫だからかな?

 あ! 胸が邪魔でつっかえてる! すげぇ!


「決してキアーラさんを蔑ろにした訳ではありません!」


 フレアさんも完全に戦闘態勢を解いて頭を下げたまま叫ぶように言う。


 ふぅ。これで刃傷沙汰は回避できただろう。いや爪傷沙汰かな?

 フレアさんに関しては実は怒ってないんだよね。

 外様だし。むしろ俺の方が何を偉そうに説教してるんだ的な?

 いや王虎も外様なんだけどね! 身内じゃないんだけどね!


「弁明を! 弁明をさせてください!」


「……どうぞ」


 まぁ、ここでまた喧嘩でもされたら困るので一応怒っている風に言葉短に続きを促す。


「まず誤解を解いておきたいのです。我々パピヨンは子供たちに顧客を取らせてはいません!」


「あぁ?」


 この野郎今言ったばかりだろうが……。


「黙ってろ」


 俺は王虎を一瞥して黙らせる。

 心なしかしゅんとする王虎。


 なんか幼児退行してない? 感情揺さぶられすぎてバグってんのか?

 ……落ち着くまで放っておこう。


 俺は王虎を後回しにしてフレアさんに目で続きを促す。


「確かに幼い子たちも姉さん方と一緒にお酌をしたりなどのお相手はしますし、姉さん方が夜の相手をする際にそばに付いくことはありますが、実際に仕事をすることはないのです」


 いやそれも結構なことだと思うけど……。

 致しているところを見ている訳でしょう?

 前世日本なら十分幼児虐待ですけど。


 頭を下げ続けているフレアさんは俺の微妙な表情に気づくことなく続ける。


「仕事をする姉さん方の身の回りの世話をしたり、仕事風景を見せることで娼婦がどう言う仕事かを学んでいくのです」


 あぁ! つまりは日本の遊郭で言うところの禿(かむろ)か!

 確か日本の遊郭にも遊女のそば付きとして身の回りの世話をしながら仕事を学ぶ見習いがいたはずだ。

 何才くらいまでをそう呼ぶのかは忘れたけど子供はそんな待遇だったはず。

 遊郭で生まれた子供や幼くして売られた子供とかがなるんだったかな?


「だが、仕事を覚えた後は客を取るんだろう?」


 黙っていろと言ったのに王虎が横から口を挟んでくる。

 なんなのもう。マフィアのくせに堅物かってんだ。


「あの……これは黙っていていただきたいのですが……」


 なにやら不穏な前置きだな。

 フレアさんが少し顔を上げて上目遣いで言ってくる。

 頭が上がったので谷間がダイレクト顕現!

 聞きたくないがこの流れは聞かざるを得ない!


「その段階でどうしても無理な子は他の仕事に着くのです」


「他の仕事?」


 どう言うことだと思った俺はおうむ返しに聞き返す。


「はい。心の傷や色々な理由でどうしても無理な子はいますので。

 そう言った子はパピヨンの人間であることを隠してこの店のような飲食店で働けるように斡旋しているのです」


 ……なんだと?


「なぜそれを隠すんだ?」


 俺が驚いていると王虎がわからないと言うふうにフレアさんに聞く。


「斡旋先には限りがありますので。断腸の思いではありますが公表することで一般の方に詰め寄られても対応できないのです。身内だけ、それもどうしても無理な子だけ」


 フレアさんも素直に王虎の問いに答える。

 答えてしまっている。


「……他の子たちから不満はでないのか?」


 王虎が待遇の差に疑問を持ったようで更に質問する。


「私たちはお互いに辛さがわかっていますから。自分がやれるなら自分がやります。

 人にそれを押し付けることはしません。ましてや私たちは家族ですから」


 フレアさんは柔らかな笑みで言う。家族と言うパピヨンの皆を思っているのだろう。


「飲食店で働く子たちも娼婦になった子たちの思いを無駄にしないためにも懸命に働きます。

 何かあって働き口がなくなったらその分だけ娼婦になる子が増えますから」


 どこか自慢げに話すフレアさん。


「お店の方達にも好評なのですよ? 姉さん方の仕事を見ていますので接客はお手の物ですし、色事の近くにいた為に自然と色気が身についてしまいますので、看板娘としてもってこいなのです」


 ぬぅ……。

 フレアさんは秘密と言いながらも自慢するように語っているが、こいつは確かに人に話していい内容じゃない。


 要するにやっていることは人材派遣だ。

 日本でも人貸しと言って江戸時代あたりから存在していたがそれとは違い、より近代的なシステムに近い。


 人貸しはただ人材を提供するだけで、何かあったときに責任の所在は曖昧で派遣された個人に責任を負わせることが多いし、ピンハネは高額で不都合があったらトカゲの尻尾切りをされる。


 しかしパピヨンの派遣業は下地となる教育を施した上で派遣するし、何かあった時の責任はパピヨンに帰属するし、ピンハネもなにも家に金を入れるようなものだし、家族だって言うなら尻尾切りもされないだろう。


 安定してね? こぞってみんな所属しに来ちゃわね?


「頑張ってお店を任されるようになった子もいるんですよ?」


 さらにドヤ顔で続けるフレアさん。

 コリャなんなら小さい店の丁稚より待遇いいまであるな。


 ……職業柄どうしても女性限定でしかも人数も限られているが、これは確かに救済しているわ。弱者救済を。


「そのシステムを考えたのは(くだん)のマダムさん?」


 内心の驚きを隠しながらもフレアさんにそれとなく聞く。

 これも秘密のはずだが……はたして


「そうなんです! マダムが考えたんですよ!

 すごいですよね! 斡旋先がどんどん増えればもっともっと仕事を貰えるようになるのです!」


 ここで完全にガバリと起き上がるフレアさん。

 鼻息荒く力説するが、その表情は最初の印象より随分幼い。

 この娘、化粧とか立ち振る舞いでそれらしく見せていたけど実際はかなり若いんじゃないか?

 そして少し……いや大分アホの子なんじゃ?


「その分他のやつの仕事が奪われてしまうけどな」


 俺が指摘してやるとフレアさんは今気づいたと言うふうにハッとした顔で俺を見た。


「勘違いしないでくれよ? あんたらを差別する意味ではなく言うんだが、世間的には弱者と言われている孤児や半獣人なんだよな? その子達は」


 フレアさんは弱者のあたりで顔を硬くしたが頷いた。


「それ旧移民からしたら面白くないんじゃないか? 旧移民の中にだって仕事がない奴はいるだろうし」


 俺がそう言うとますますフレアさんは顔を硬くした。


「嫉妬とかすごそうだよな? だからバレないように秘密なんだと思うけど」


 そしてマダムもこれがバレたらまずいはずだ。

 弱者は切り捨てる。それが絶対正義のこの街で弱者を優遇(・・)している。


 しかも公娼ということは国から認可を受けて公に娼館を経営しているのに、それ以外のことを行なっている。

 つまりお上に逆らっていることになる。

 パピヨンも受け入れ先もヤバイのではないだろうか?

 だが今までそれを隠しながらも実際に実行している。

 出来ている。単独では無理だな。

 協力者がいるはずだ。それも随分上の立場の人間に。


 マダムか……。

 俄然興味が出てきたね。

 そしてそれほどの人物がこの残念なフレアさんを派遣してきた理由も気になるところだ。


 娼館って言ったら情報収集する場所ランキングで酒場の次にランクインするところだから、ちょっと仲良くしておこと思ったがこれはがっつりお話しする必要がありそうだ。


 フレアさんをもうちょっといじめてマダムとの会合を有利に進めましょうかね?


「こりゃぁ中々の大人物らしい…マダムという人間に興味が出てきたよ。お話し……聞かせてくれるよな?」


お読みいただき誠にありがとうございます!


もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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