28話 『誰が相手で何をするべきなのかの話』
タイトル変更しました。
旧題:幼女なのにゴッドファーザーになれと言われました。
こんにちは、キアーラ・カサッツァです。
人間追い込まれると、どうしても視野狭窄になってしいます。
そして狭まった視界では、見えるものも見えなくなってしまう。
目が見えなくなった者は、得てして画期的な解決方法を求めてしまうのです。
「敵を倒して一発逆転を狙っているなら諦めな」
俺の言葉を聞いた王虎から表情が固まる。
一発逆転で世界が華々しく変わっていく。
そんなもんは夢物語だ。現実にはありはしない。
前世で一発逆転を狙って無様に死んだ俺が言うのだから間違いない。
「仮に古参のクソどもに勝てたとしてもスラムは無くならない。
今まで上にいた奴らが落っこちて、そのすぐ下のやつらが上がるだけだ。
何の解決にもならず、あんたの望みである誰もが幸せに暮らせるという願いも叶えられない」
俺はそう断言してやる。
闘争の先にあるものなんてのはそんなものだからな。
「だから諦めろって言うのか?
奈落の奴らを救い上げたお前が?」
期待を裏切られた気持ちにでもなったのだろう、ありありと王虎に失望の色が見える。
つい前世の自分を見ているようで、イラついて強く否定しちまったが俺は夢を諦めろとは言っていない。
「早とちりをするな。まだ俺ならどうするかという、あんたの質問に答えたわけじゃない。
あんたがどう思っているのかを確認をしただけだ」
そしてそれを確認したことで王虎がどう思っているのか、どうしたかったのかも分かった。
そしてこれからどうするべきなのかの確信も得た。
俺は自分の考えを伝えるため、言葉を待つ王虎の目を見る。
「王虎。あんたは相手を間違えているんだ。
復讐心と自分に対する憎悪で目が曇っている」
面と向かって否定の言葉を言われた王虎の顔が引き攣る。
今の王虎は目的と手段が混同してしまっているのだ。
王虎のやりたいことを、端的に簡潔にいうなら、それは差別の撲滅だ。
これほど解決困難なものは他に類を見ないのではなかろうか?
前世の地球でも終ぞ解決を見なかったのだから。
差別をなくそう! そう主張するものが同じように差別をしていたり、
差別をなくそうと運動が起こってもそれは結局、立場の交換を望むものばかりだったり。
虐げられてきたものが今度は虐げる立場に回りたい。
差別をなくすと言う目的が、差別をしてきたものに思い知らせるに変わってしまう。
今の俺ならそれも仕方ないことだとわかる。
新移民として差別を受ける立場になって、今までのことを水に流して手を取り合いましょうとはとても言えない。
だが、その先には真の解決はない。
それを俺はこの世界で理解した。
しかしそれは過去の歴史を知るからこそわかることで、王虎に分けれと言うのは酷と言うものだろう。
「俺が間違えているだと……っ?
俺は敵を違えたことなどない!」
肉食の獣人が狩る相手を間違えているという侮辱にも似た指摘に吠える王虎。
確かに俺も完全に間違ってはいないとは思う。
だが間違っていないが、正しくはない。
俺はこの男に正しくあって欲しいと思ってしまった。
だから苛立ち、牙を剥く王虎に俺は言葉を続ける。
彼を否定する言葉を続ける。
「それは誰の敵なんだよ?」
「だからそれは俺達の___!」
「あんたのだろ?」
たいして大きくもない俺の一言に王虎が止まる。
「あんたが奴らに勝ちたいんだ。
あんたが奴らから奪いたいんだ。
あんたが奴らにツケを払わせたいのさ」
___つまりはさ。あぁ、くそ。そうか。
「あんたは敵をやっつけて贖罪がしたいんだよ」
きっと王虎自身もそうと思って行動していたわけではないだろう。
大願の為にがむしゃらにやってきたんだと思う。
でも振り返ってみれば根本にあるものはそうだったと気づくのだ。
「お前に……何がわかる」
そう発する王虎の声は地の底から響いてくるかのように低い。
俺のような小娘にしたり顔で説教されて、怒りに震えるのも仕方がないだろう。
だがしかし___
「分かっちまうんだなぁ。これがさ。俺にも経験があるからさ」
___本当に噴飯ものだ。赤面ものだ。
王虎を見て気づけた。
俺も前世でそうだったんだ。
なんで馬鹿息子を引きずり下ろすことしか考えられなかったんだろう。
なぜ社長が死ぬまで頑張ってたのか?
それは俺たちのためだった。
きっと行き場のない俺達の居場所を守ろうとしてたんだよ。
それなのに俺たちは社長の為に会社を守る!なんてさ。
逃げりゃ良かったんだ。
本当に社長が守りたかったのは俺たちで、そうと決めた自分の矜持だったのだから。
そんで逃げた先で社長の名前を冠した会社でも立ち上げればよかった。
社長にできたんだから俺たちにだって出来たはずなんだ。
その背中をずっと見てきたんだから。それこそ死ぬ気になってれば出来た。
俺と一緒に死んでくれって仲間に頼んでやればよかった。
したり顔で王虎に弁舌ぶったけど、なんのことはない小っ恥ずかしいまでに手前勝手な懺悔だったと言うわけだ。
恥ずかしすぎて逆に笑えてくる。
こいつは王虎にも申し訳ないな。
そう思ってチラリと王虎を盗み見ると、なんとも言えぬ顔でこちらを見ている。
……やはり俺のような幼女が言っても説得力がなかっただろうか?
そう俺が思って次の言葉を探していると、王虎も何かを言いかけてはやめ、言いかけてはやめを繰り返してから俯く。
そして深くため息をひとつついた。
そのあと幾ばくかの間が空いてからこう言った。
「……わかってくれるというのなら、経験のあるアンタに聞こう。
俺たちの敵はどこのどいつだい?」
その物言いに皮肉かと思ったが、その表情は真剣だ。
……でかい図体して随分まとまった考えだ。
だから俺も真剣に答えようと思ったがつい笑いが漏れる。
嬉しくなるな。
こいつはこの期に及んで、まだ得体の知れない小娘から可能性を見出そうとしている。
どんだけタフネスなんだよ!お前は!
こいつならどんな相手でも大丈夫だ!
そのことに歓喜の笑いが溢れ出る。
「くはっ! どこのどいつ?
ちいせぇ、足りねぇ、みみっちぃ!
チンケなことぬかすなよ。アンタの敵は全部だよ。
この世界の全てを敵に回すんだ」
改めて伝えよう。
「森羅万象敵にして、食い物着るもの住むところ、仕事も娯楽も死んでゆっくり寝る場所も、全部、全部手に入れる。奪うんじゃ足りねぇ、貰うんじゃ少ねぇ。新たに生み出す。創り出す」
真摯に答えよう。
「……そのために森に手を出す食い破る!」
それが最善の道だから。
だから俺は最善で最悪の道を王虎に提示するのだ。
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