2章 51話 「整理整頓は大事でそれは思考も同じって話」
※前回までのあらすじ
アイドルのプロデュースをしていた主人公のキキ。そのアイドル公演が何者かに邪魔されてしまった。
解決を図ろうと劇場に赴くが、キキを襲う貞操の危機だったり、そのついでに顔面ボコボコにされたり。
元マフィアのボスである王虎は銃弾で死にかかったり生き返ったり。
更にはいけ好かない警察署長と部隊が強襲してきて、王虎が捕まってしまう。
仕方ないのでキキは娼館に行ってお姉さん達と色々する事にした。
(間違ってはいないはず)
どうもこんばんは。キアーラ・カサッツァです。
身からでた錆という諺があります。
悪い事が起こるのは、元を正せば自分の行いが原因であるという意味です。
情けは人の為ならずの反対の意味と言えますね。
つまり両方合わせれば因果応報であると。
ということはやっぱり私に災難が次から次へと降りかかるのは、私が悪いことばかりしていたということになるのでしょうか?
「すぐにでも戻りたいでしょうけど、まずは話を聞いてちょうだい。今はこれ以上事態が悪化することもしばらくはないわ。下手に動かない方がいいし、むしろ取り返しのつかない事態になりかねない」
千々に乱れた心を鎮めるために宇宙世紀に思いを馳せていた俺だが、取り返しのつかない事態と聞いてせっかく立て直したそれも無駄となってしまう。
「マダムでも取り返しのつかないほどの?」
このお方がリカバリーできない事象などあるのかとつい聞いてしまう。
「……私にだって出来ないことは沢山あるわ」
あぁ、本当に俺は馬鹿だな。
そう言うマダムの柳眉は少し顰められ表情に影がさす。その瞳は悔恨に塗られていた。
以前彼女が見せた取り乱した姿を思い起こせば、過去に何かあったことなど容易に想像できたのに。
「それに、予想外のことが起こりすぎているもの」
だがマダムはすぐにその陰りを引っ込めると、この話はおしまいとばかりに肩をすくめて戯けたように言う。ここはありがたく乗らせてもらうとしよう。
「マダムでも予想外の事とかあるんですねぇ」
俺も努めて明るく戯けて見せる。
「私にだって予想できないことはあるわよ」
人をなんだと思っているのと可愛らしく拗ねて見せるその姿は、まるで幼い少女の様にも見える。この女性は一体幾つの顔を持っているのだろうか?
「……理解できないものは予想できない?」
そう聞いたのは彼女のことをもう少し知りたいと思ったからだ。
少し目を見開いたのは本当に驚いたからか、それともサービスか。
「ええそうね。例えば貴方とかね?」
ふふふと笑う顔は年上のお姉さん感に溢れている。
……これもいいものだ。ドギマギしちゃうっ! だって男の子なんだモン!
「……自分は随分わかりやすい人間だと思いますけどねぇ?」
だが、男の子たるものそんなことをおくびにも出さずに、心外だぜと澄まし顔でヤレヤレと呟くのだ。
しかしそんなクールな俺を見てマダムが悪戯を思いついたような顔をする。
むっと、俺は警戒心もあらわに距離を離そうと思ったが、彼女の次の行動で逆に前のめりになるハメになった。
「むほっ」
なんとも情けない声が、持ち主の意思に反して口から飛び出たが、俺は口を咎めたりしない。
何故ならマダムがその身に宿した神聖なる双丘を、自らの両の手で横から押し潰すようにしたからだ。重力にも負けずに前へ前へとその存在を主張するマシュマロメロンちゃんも流石に宿主のこの暴挙に抵抗する事あたわず、その形を変えることになったが、俺はそこにこの世の真理を見た。
光が有れば影があり、善あればまた悪もある。森羅万象表裏一体。
山が形を変えるならばそこに現れるのは?
___そう谷間だね?
それはまさに渓谷と言っても過言ではなかろう。普段のそこが雪のように白い柔肌が織りなす包み込むような谷間だとすれば、今顕現ましましているそれは、男をその深淵へと飲み込む魅惑のクレバス。
俺ほどの登山家(一級双丘アルピニスト)であっても、一度そこに堕ちて仕舞えば二度とは這い上がることはできないだろう。
だが俺もおっぱいクライマーの端くれ! ここで逃げるわけにはいかない!
「確かにわかりやすいわね♪」
頭上からそのような声がしたかと思うと、俺はヒョイと持ち上げられて椅子に戻された。
どうやら無意識のうちにテーブルを乗り越えて秘境探索に赴くところだったようだ。
俺を引き上げてくれたトントンさんには感謝の念を送っておこう。
次に挑むときはきちんと登山計画を提出してからだ。
その為にも今の現状をどうにかしなければならない。
だが俺は決意も新たにマダムに一つ頷きかけると、彼女は一瞬呆れた目をしていたが、真面目な顔に切り替わる。
「まず、今何が起こっているのか、一つずつ整理していきましょう」
俺も色々と考えたが、いかんせん鉄火場での事であり、四方八方に思考が飛んでしまっていたのでこの提案はありがたい。
「ことの始まりは貴方たちと私達が取り仕切っている、アイドルの公演自体を妨害された事ね」
そう、俺たちが利用していた劇場が突然一斉に利用を断ってきたところからだ。
何故、中規模小規模の劇場にとって客入りも良く、金払いも良い俺たちを拒むのか。
あまりにも不自然な対応に違和感を覚え、商売敵の妨害を予想しながらも対応しないわけにはいかなかった。
今では我がファミリーのシノギの屋台骨になりつつあるアイドルプロデュースは重要な案件だからだ。
「だから俺と王虎は劇場を行脚する羽目になった」
公演を断ってきた劇場の支配人達にアイドルという特殊な仕事についての魅力を熱く説明が可能で更に商売上の対応をできるのが俺しかおらず、付き添いもゴロッリオや兄さん達などの手が偶々空いておらず、偶々手すきで仕事をしろと嫌味を言われた王虎が渋々ついてくる事になった。そうでなければトップ2で行動をすることは無かった筈だ。
「結論から言うと、その妨害を望んだ勢力はいくつか存在していたわ」
「例えば劇場関係者と、そのお得意様ですか?」
今や王虎の手で壁の花になった支配人が確かそんなことを言っていた。
思い出したくない記憶だが。
「そうね。彼らはアイドルの公演を私達の宣伝だと思った。新しい形の顔見せだと思ったのね。だけど実際にはお金を払っても女の子達を買うことができず、その人達は騙されたと思った」
なんでそんなに詳しく知っているんだろう。お客さんから聞き出したのか?
だが、そんなこと言われても、うちはビンゴシートやグッズを買ってもらっているのであって、女の子を買ってもらっている訳ではないんだがなぁ。
「あらかじめそう言う仕事ではないと言ってあったはずですがね?」
マダムに言ってもせんなき事だが、理不尽なクレームには愚痴の一つも溢れるというものだ。
「表向きにはそう言うことになっていて、実際は違うと思ったんでしょう。うちの娘達も一緒にいたりしたからなおさらね」
薄く笑いながら言うマダムの言も一理ある。
確かに我がスター☆プラチニスとパピヨンのアイドルユニットであるミッシング・C・ムーンは別の所属事務所だと言ってはいるが、売り出し方ややっている事を見れば、それが建前に過ぎず無いのは周知の事実だからな。
「だから嫌がらせのために公演できない様に圧力をかけて妨害をしたと」
思い通りにならないから嫌がらせなどと、そいつらは子供かよと思うが、自制の効かない権力者なんてそんなもんかもな。
「そうすれば根を上げて商売をすると思ったんでしょうね。実際にうちのお店に来てどうすれば買えるのかと、それとなく聞いていくお客様の数は少なくなかったわ。舞台上で歌って踊るあの娘達がそれだけ魅力があったと言うことでしょう」
肯定的な言葉を口にしてはいるが、うんざりしているのが伝わってくる。
そりゃ、娼館で娼婦以外を買いたいとか言い出すのは無神経にも程があるよな。
どこの世界にも厄介粘着ユーザーは出没するのだなぁ。
前世でもあったが、どう考えても最初から壊れていたのに、運んだこちらに難癖つけてきて弁償金をせびる輩もいたし。
だが、それは自分の立場の方が高くて守られているからできる事であって、リスクがあるならその限りではない筈だ。
「そのお得意様たちはバンビーニを敵に回してもいい程に、うちのアイドル達を求めたと?」
そう。マフィアを相手に難癖をつけるなんてよっぽどイカれてなければできない。
それは命懸けでも欲しいってことだからな。もしそうなら、ある意味男前とも言えるが、本当に男前だったら嫌がらせなんてしないで、直接バンビーニにくるだろう。
故にそいつらは男前ではない。以上Q.E.D。
「そうではないわ。普段なら誰もそんなリスクを冒さなかったでしょうね。でも今回は貴方達を相手にできる味方がいたのよ」
まぁ、心当たりはあるな。
「警察?」
「そう。そしてそれを動かしたのが、王虎君の身柄を抑えたいと第二の存在。まぁ、直接警察を動かしたのは政治家だけれど」
そりゃそうか。国家権力を動かせるのは国家権力だけだ。
王虎の身柄を確保したかった奴、この際黒幕としてしまうか。
黒幕はマフィアであるはずなので、警察を動かせるはずがないのだ。
だが、改めて考えればマフィアとしての禁忌を冒してまで王虎の身柄を求めるとは随分と酔狂な奴だ。
王虎個人の価値など言っちゃ悪いが、バンビーニの持つ大したシノギにもならないスラムの一角を支配していることと、くっそ強いことしかない。それも単体の武力など高が知れているから大した価値もない。
まぁ、世の中には単身ホワイトハウスに殴り込みに行って大統領に宣誓させたり、ちょっと走るだけで軍事衛星を狂わせる奴もいるかもしれないが、王虎はそこまででもない。
ないよな? ワンチャンある? 背中に鬼飼ってる?
もしそうなら政治家は欲しがるかも?
「政治家は欲しがらないし、今回の事も少し手を貸しただけ。それも多少強引な命令で警察を動かす程度のね? おそらく政治家自身は何故王虎君をその存在が欲しているのかは知らないわ。貴方が考えている通りにマフィア同士の抗争だとでも思ってるでしょうね」
おそらくと言いながらも確信を抱いているように断言されておられる。
ついでに当然のように俺の思考を読んでなさる。
もう慣れっこですけどね。
「なぜ、そう思うんです?」
「そうでなければ私がお願いしたところで、絶対に貴方達が見逃されることはないからよ」
絶対にとは剣呑だな。
何故に王虎が囚われた理由を政治家が知ると俺たちが狙われるのか?
「黒幕の目的は王虎君が持つその知識を手に入れることだからよ。そして政治家はその知識が世に出ることを決して許さない」
王虎がそんな重大な知識を有していたとは驚きだ。
マフィアがなりふり構わずに欲し、政治家が決して許さぬその禁断の知識とはなんなのか。
お久しぶりでございます! コロナハザードが一応の落ち着きを見せたので再開です!
お休みをして申し訳ございませんでした。そして今回もお読みいただきありがとうございます!




