第五話
レンボアーの時よりもはるかに大きい何かが快感とともに流れ込んでくる。
それは、ブラッドボアーが進化個体だったためだ。進化個体は、単純に強くなっていることもあるだろうが、それにしても得られる力の一部が大きい。人やモンスターなどを多く殺している魔物は、強さに対して得られる力の一部が大きくなっているが、進化個体はさらに上を行く。簡単に言うと進化個体が生んだ二世代目以降や進化個体ではないそのモンスターと強さが同じでも得られる力の一部がかなり大きい。また、力の一部が大きいとそれが入ってくる時に快感を伴う。力の一部が大きいほど感じる快感も大きく、レンボアーでは快感は感じなかった。能力が上がっていくにつれて、快感を感じるために必要な力の大きさが大きくなるためだ。この森の適正程度の人がレンボアーを倒したら快感は感じるだろう。力の一部の大きさは変わることがないため、何かが入ってくる感覚は自分の能力の上がりにつれて変わることはないが、快感は変わるため自分の能力の上がりについての基準になりやすい。
少し体が軽くなったように感じる。モンスターを倒すと成長はしているが、ここまで感じることは少ない。フィルミレの町に行く前の森で倒した熊でさえ、ブラッドボアーより弱いとはいえ、ほんの少しの快感を感じるだけで、能力の変化は感じられるレベルではなかった。ここからも、進化個体であるブラッドボアーの特別さが分かる。
ブラッドボアーを見る。
アイスアローは、その名の通り氷の矢を放つ魔法だ。刺して傷つけることと凍らせることを両立した魔法だが、威力は低い。だが、魔力の消費量も少ないため、妨害や牽制には適している。
アイシクルスピアは、氷柱の槍を作って放つ魔法だ。氷柱の槍は、硬くて鋭く、魔力の消費は多めだが、並のモンスターなら軽く貫くほどの高威力を持つ。強力な氷魔法だがあくまで敵を突き刺す魔法で、そこに多少の冷気は発生して、傷口を凍らせえぐることはするが、全体を凍らせるまでにはいたらない。
だが、ブラッドボアーは、アイシクルスピアにより内側から凍らせられた。リーネは、アイシクルランスの本来の働きに加え、冷気による凍らせる働きを大きく増加させたことにより、今回の結果を引き起こした。
ここまでのことをするには、かなりの技術と魔力が必要なのだが、当のリーネはあっけらかんとしている。僕自身も、さすがとは思うが驚いたりはしない。互いの実力は把握しているし、二人の実力が異常なこともあってだが。
それは置いといて
「お疲れ様」
「うん、お疲れさまでした」
僕たちは互いをねぎらう。
「さてと、ブラッドボアーはどうするかな?」
「鞣したらいい革として使えそうね」
僕たちの攻撃によって多くの傷がつけられているが、無事な部分も多く使えそうだ。ブラッドボアーの皮は意外と丈夫だったし、素材として使えるかもしれない。ただ、新しくこれでコートを作るかと言われると性能としては微妙だが。
牙もかなり硬く鋭いので何かしら使えるだろう。
使える部分が多そうなので
「丸ごと持っていけばいいか」
「それでいいんじゃないかな」
皮をはぎ取るのは少し時間がかかる。わざわざここではぎ取ったり解剖したりする必要はない。皮を素材として持ち帰りたいならそのまま持っていく者もいる。その場合は、それが入るだけのマジックバッグが必要だったりする。人手が足りれば入れずに運んでいくこともできなくはないが。
ブラッドボアーは、体長が二メートルほどもある。マジックバッグには余裕で入るが、万が一、中身の検問があったら困るから入れておきたくない。人が良く通る場所や、町などの近くで、進化モンスターが出たことは問題で、もし倒したなら、表彰されたり報奨金がだされたりする。そうなったとしてもならなくても目立つ。本来、それはいいことなのだが、僕たちは、最低でもこの国を出るまではそのように目立つことは避けたい。
「じゃあ僕が持ってくね」
リーネにそう声をかけて、ブラッドボアーから五センチぐらい離れたところから手をかざして、入れと命じるとともに、特殊な魔力が放たれる。すると、ブラッドボアーが跡形もなく消え去る。
魔法の本質は、魔力を使い超常現象を起こすことだ。魔法名を唱えることは、現象を具現化しやすいようにするための補助だ。それを言うだけで、魔法の発動はある程度簡単になり、威力などの要素もある程度保証される。そのため、魔法名を唱えなくても発動させることはできる。口で唱えることはしなくても、その魔法名を知っていて心の中で唱えるだけで、多少の補助は受けれるが、唱えた場合と比べて発動させることが難しくなる。また、ある水準のレベルの技量がないと威力などが落ちたりもするが、相手に何の魔法を使ったか、いつ発動させるかなどを分かりにくくすることができる。他に、かなりの技量がいるが、魔法名を唱えるより速く組めるなら、発動時間を短くしたりもできる。
僕が使った魔法は、作ったといったほうがいいかもしれない。
魔法は、魔力を使って超常現象を引き起こすので、難しいが、起こしたい現象をイメージし魔力をうまく使って組み上げることができれば新しい魔法を作れる。ただ、それを補助なしですべて自分でやりとげなきゃいけない。一度できたら、自分自身が使うには二回目以降は楽になっていく。その魔法に名前を付けることでその名前は力を持つようになる。すると、他の人が、起こる現象と魔法名を知っていることで、その魔法が使いやすくなる。これがさっきの補助の真相だ。いわば、その魔法を作った人の力を借りているわけだ。作った魔法をその人が広めなかったり、あまり広がらなかったりということもあり、同じ現象を引き起こす魔法でも違う魔法名ということも結構ある。
僕が使った魔法は、一応、《異次元の箱》というような魔法名にしている。
まず、自分自身とつながった空間を異次元に創り出す。これは、とてつもなく難しく、とてつもなく多くの魔力がとられる。いわば、一つの小さな世界を生み出すと一緒だからだ。
そして、さっき、行ったことは、その空間に物を出し入れをすることだ。これは、自分自身とつながった空間、いわば自分の中に入れたということほぼ同じだ。そのため、これには、あまり魔力をとられない。
ちなみにだが空間の広さは、今でもかなり大きいが、自分自身の魔力が多くなっていくにつれてさらに大きくなっていくようだ。それと、生き物は入れることができない。また、外の時間と比べて時間の流れがかなり遅い。そのため、素材などの長期保存が可能だ。
デメリットとして、その空間の維持のために自分の魔力を少し占領されることか。
この魔法は、荷物検査をすり抜けることができる。ということは、違法なものなどを持って都市の中にも入れるわけだ。だから、一般的に存在しない。だが、これを思いついてこのような魔法を作った人は何人もいるだろう。かく言う僕もその一人だ。いや僕たちもか。僕とリーネはこのような魔法ができるんじゃないかと思って作った。だから、リーネも使える。ただ、警戒されても困るので周りには使えることは伝えなかった。教えても使える人はいなかったと思うけどね。
なぜ、この魔法があるのにマジックバッグも必要かというと、旅人が荷物を持っていないのはおかしいし、よく使うものを簡単に取り出せるよう入れておいたりするためだ。異次元の箱のカモフラージュにもなる。
さてと。空を見ると、太陽がそろそろ南から西のほうに入ってきていた。
ちょうど、少しお腹が空いてきたし
「じゃあ、どっか休憩できる場所探して、昼食にしようか」
「うん」
僕はリーネにそう言って、二人で歩きだす。
説明下手ですいません。
説明多いけどそのようなところも楽しんでくれたならうれしいです。
区切りがついたら、説明のまとめを作ることと、内容を読みやすいように直すことをしたいと思っています。
読んでくださりありがとうございます。
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