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第四話

 森の中を歩く。

 木々が生い茂り薄暗い。

 僕たちが歩いているのは、人が歩いてできた獣道のようなところだ。街道がないだけで、冒険者や狩り人が通ったりするためできた。

 ただ街道と決定的に違う。


「プギッ」


 僕が振るった剣が猪のようなモンスター、レンボアーを斬る。レンボアーは倒れ、やがて動かなくなる。


 それは、モンスターが道とか関係なくでるということだ。

 だが、人による獣道に意味がないかと言われると全く違う。人が歩いたため、地面はある程度ならされていて動きやすい。多少見通しもよく、何より道に迷わない。このようにあったら多少楽になる。


 レンボアーを倒した僕は僅かに何かが自分の中に入っていくのを感じる。それに気持ち悪さとかはなく、少し力がわいてくるように感じる。


 それは、倒した生物の力の一部がそれをなした者たちに渡ったからだ。その力は、それをなした者の筋力、頑丈さ、スタミナ、魔力の質や量などの能力を少し上げる。上がる能力の量は、戦い方、その者の能力、自分の願いや思い、相手の能力などによってその力から割り振られる。例えば、相手の攻撃を受けること重視のいわゆる壁役の重戦士の場合、頑丈さやスタミナ、その次に筋力が上がりやすい。

 倒した生物が強いと力の一部も大きいため、必然的に上がる能力の量は増える。だが、能力が上がるにつれて、能力も上がりにくくなる。

 生物を倒すことによって能力が上がるといってもそれはほんとに少しずつだ。その積み重ねにより強い生物などにも対応できるようにもなるが、訓練した人相手に能力で負けることもざらにある。当たり前のことだが能力は、生物を倒すこと以外でも上がるためだ。そのため、生物を倒すことが強くなるための絶対ではない。まあ、生物と戦うことによって自分の身体能力や技量も上がり、+αで倒したことにより能力が上がるわけだから有効なのも事実だが。

 また、生物を倒したら強化されるのは人だけではない。動物、モンスターもしかりだ。動物は、それによりモンスターとなることもある。


 僕はレンボアーに近づいてしゃがむ。


「せっかくだし、今日は、このレンボアーを食べようか」


「いいね。そうしましょうか」


 僕は、後で食べるためにナイフを使い血抜きをする。それが終わった後、小さな袋の口もレンボアーが入りきるぐらいまで広げて中に入れた。その袋は、レンボアーは入りきるとは思えないほど小さいのにレンボアーはその中に何事もなかったように入り、袋の様子は入る前と変わらない。


 それは、マジックバックと呼ばれるものだ。マジックバッグは、魔導を使って作ったもので、見た目よりも大きな容量があるため多くのものが入る。マジックバックはそこそこな値段がするが、容量が大きいものは比例以上にどんどんと高くなっていく。レイが持っているマジックバッグは、レンボアーが丸ごと入ったし、その他に必要なものが入っているはずだから、かなりの容量があるのだろう。また、マジックバックには生きた生物などを入れることはできない。


「さてと、何か来たようだね」


 僕は立ち上がりつつ言う。

 数十メートル先にレンボアーよりも黒くて大きい猪がいた。目は赤い。


「ブラッドボアーか」


 ブラッドボアーは、レンボアーが進化したモンスターだ。

 進化というのは、モンスターや動物が多くの生き物を倒したことによって起きる。進化前と比べて圧倒的な力を持ち、場合によっては、それに対抗できる人がおらず村を壊滅させることもある。

 野生のモンスターはなぜか人を殺すことによってモンスターを倒した時と比べて大きな力を手に入れれる。このブラッドボアーも恐らくこの森に来た人を殺したのだろう。他のモンスターを倒すだけでも進化できないことはないがこの場所では難しい。頻繁に人が入る場所ではその前に狩られることが多いからだ。どちらだとしてもレンボアーとは格が違うことには変わりない。

 ブラッドボアー、血濡れた猪、その名は、その赤い眼を表しているだけではない。その牙は、普通の革鎧程度なら簡単に貫通させれる。その突進は、とても速くて重く、盾をもってしても受けとめれない。そして返り血を浴びて赤く染まる。この森を通ることができる適正程度の力を持つパーティーだった場合、その一匹相手に全滅する可能性が高い。そのワンランク上のパーティーでも、確実に倒せる保証はない。


「でも、レイと私なら大丈夫」


 リーネが言う。


「そうだね」


 そうは言っても、これぐらいの敵だったらどちらか一人でも倒せる。僕たち二人の前だったら、敵ではない。


 僕は剣を構え、ブラッドボアーに向かって走り出す。


「アイスアロー」


 リーネが氷属性の魔法を放つ。


 魔法には属性があり性質が違う。基本属性は、火、水、土、風だ。派生で、氷、雷、対属性の光、闇などもある。これらが普通の属性とされている。例えば、ウインドカッターは風属性だ。相手のモンスターには、属性によって耐性や弱点がある場合もある。また、人によって得意属性や苦手属性や使えない属性も存在したりする。それができる理由は様々だが。リーネは、全属性使えるが、氷、風、光といった魔法が得意だ。


 リーネから放たれた、五つの氷の矢は、僕の横を通って、ブラッドボアーに吸い込まれるように進む。そして、少しの時差を置いて次々に刺さっていく。

 ブラッドボアーは、氷の矢が刺さり痛そうにするが、それに構わず突進を続けようとする。

 最後の一本の氷の矢が刺さったころに僕らの距離は僕の攻撃圏内になる。リーネは、これを見越して、この矢の数、速度にしたのだ。


「ウインドアクセル」


 僕は風属性の魔法を使う。自分の後ろで風の爆発を起こし、一瞬の速度を上げる魔法だ。相手との距離を詰めたり、逆に前で風を起こし下がる目的で使われる魔法だが、ぶつかる距離でやるとどうなるか。

 僕は魔法に合わせて、前に飛ぶ。空中ですぐに距離はゼロとなり、僕の構えた剣と、ブラッドボアーが当たる。多くの人は、そのまま押し返されるように思えただろうが、逆にレイがブラッドボアーのその巨体を押した。

 ブラッドボアーは驚愕の表情をする。

 僕は、勢いが乗っている剣を外す。そのまま空中で顎に蹴りを入れた。


「フゴッ!」


 ブラッドボアーは、勢いの乗った蹴りを受けて少しのけぞる。


「アイシクルスピア」


 その隙をリーネが見逃すはずがなく、氷柱の槍を放つ。その槍は、猪の胴体に深々と突き刺さる。

 アイスアローにしても、アイシクルスピアにしても、ブラッドボアーは固い皮膚を持っているため普通は簡単に刺さらない。だけど、こんな風に刺さるのは、威力、鋭さ、速さが高いから、一言でいうとリーネの魔法がすごいからだ。

 アイシクルスピアは、少しレベルが高い魔法だが、さらに多くの魔力が込められていて、刺さるだけではなく、ブラッドボアーを傷口から全身を凍らせていく。


「フガッッッ!」


 ブラッドボアー、怒りの表情を浮かべ、リーネの方へ行こうとするがするが、大きな傷を受けたこととにより少しふらつき、初動が遅れる。

 そもそも、行かせる僕ではなく、その牙に剣を当て押し返す。ブラッドボアーはうまく力が入らなかったのか、簡単に押し返される。

 おまけに剣を振り、深い傷跡を付ける。

 ブラッドボアーは、怒りターゲットを僕に変えるが、アイスアローが飛んできて、ブラッドボアーの体を傷つける。

 僕を倒さない限りリーネのほうに行けないのが分かったのか僕に攻撃をしてくるが、僕は全て剣でいなす。そして、隙ができたら剣で傷をつける。また、リーネは合間合間にアイスアローを放ちブラッドボアーを傷つける。

 体が凍ってきたのか、傷をつけ続けられたからか、どんどんとブラッドボアーは弱っていき、やがてその巨体が地面に倒れた。

遅くなってすいません。

楽しんでくれたら嬉しいです。

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