第三話
草原を二人歩く。
僕は、黒い革のコートを着て、腰には片手直剣を帯剣させてる。
隣で歩くリーネを見る。
リーネはひざ丈あたりまでの白と青のローブを羽織っている。そのローブは、前が開いていて胸からへそのあたりまでを留め具で止めて閉めている。また、横と後ろに大きくスリットが入っていて、動きやすくなっている。その下には、これまたスリットが入ったスカートと白いニーソックスをはいている。腰には、ローブの下に細い鞘に入った剣を帯剣させていて、右手には杖を握っている。
僕が見ていることに気付いたリーネは、こっちを見て微笑んでくれる。僕もそれに微笑み返す。
温かい日差しが僕たちや辺りの生い茂った緑を優しく照らす。
穏やかな時間が流れる。
服装についてだが、形、素材、作り手の技術や思い、魔導などによって、布などにもある程度の防御力を持たせたりすることなどが可能だ。そのことから、服装はある程度自由だったりもする。だが、重戦士など攻撃を受ける役などはやっぱり防御力の高い金属鎧などを使うし、攻撃を受けやすい役の人は、金属鎧じゃないにしろ革の鎧や部分鎧などを付ける人が多い。僕は、攻撃を受けない前提で動きが阻害されず防御力もある程度ある革のコートを着ている。また、魔法使いは魔法に耐性を持たせたり魔力を高めたりもできるローブが使われやすい。
しばらく歩いていると、遠くに何かの影が見えた。
そのまま歩いているとその豚のようなモンスターは、こちらを見つけて走ってくる。
「リーネ」
「分かってるよ。ウインドカッター」
リーネがそう唱えると、五十メートルぐらい先にいるモンスターに向けた杖の先から何かが放たれる。それは見えることはないが空気を切り裂いて進む。それがモンスターに届くと、モンスターは真っ二つに切断された。
魔法とはそれを使う者が魔力を使って、超常現象を引き起こすことだ。その魔力は基本的に、それを使うもの自身が持っている魔力が使われる。魔力は、生き物だけが持っているわけではなく、空気中や、自然や植物、一部の物などにも存在する。逆にそれらの魔力を使うものもあって、それも魔法と呼ばれることもあるが、魔術と呼ばれることもある。そこの区別はかなり曖昧だ。そのため、魔法や魔術、錬金術や占いなども纏めて魔導と呼ぶ。
人が持つ魔力量は生まれる時点で差がある。だが、魔力は、鍛錬や使っているうちに増やすことができる。それにも、上昇量の差やある程度で上がりにくくなるなど限界があるが、これは、魔力に限った話じゃない。
魔法は発動させたい魔法をイメージしてそれを組み上げて、魔法名を唱えることで発動できる。そのため、魔法を発動させるまでに時間がいる。難しい魔法、多くの魔力が必要な魔法ほど効果は高いが相対的に発動までの時間が長くなる。
魔法は基本的に、その魔法の発動に必要な魔力の量に+αで魔力を上乗せすることで、効果をあげることができる。上位の魔法と同じ魔力量を使ったなら、それは、上位の魔法のほうが圧倒的に効果が高いが。だが同じ魔法で同じ魔力でも効果に差が出る。
その一つが魔力の質の差だ。魔力の質が高いと、効果が大きくなる。また、魔力の質には魔法の種類による得意、不得意なども含まれる。魔力の質も、生まれながらの部分もあるが魔力と同じように上げることが可能だ。
もう一つが、魔法の技術だ。技術が高いと、魔力のロスを少なくしたり、うまく組み上げて、効果を高めたり調整することができる。また、発動時間を短くしたり、さらに少ない魔力で魔法を使ったりすることも可能だ。これは、誰でも上げようとすることが可能だが、極めるのはすごく難しい。また、同じ魔法を何度も使いその魔法の練度を上げることでも魔法の効果の強化は可能だ。
リーネが使った魔法は魔法自体は簡単なものだがハイレベルだ。発動までの時間もほとんどない。普通のウインドカッターと比べて、距離もかなり長い上、速く、威力も高い。精密だったため、モンスターの断面もなめらかだ。そして、使っている魔力量は通常よりも少し少ないぐらいだ。なにより、相手に合わせて調整されている。
リーネは魔力量、魔力の質共に普通の魔法使いと比べてとても高い。それらが高い人は、それらを高めることに目が行きがちだが、リーネはかなり高い技術も持っている。魔法使いとしてはかなり上のほうに位置するだろう。
「リーネの魔法はほんとにすごいよね。どれをとっても」
改めてそう思い言うと
「そうかな。でも、レイの魔法だってすごいじゃない」
そうは言っても彼女はやっぱりうれしいのか、微笑みながらそう返してきたので、僕は少し肩をすくめながら笑い返す。
しばらく歩き、今、僕たちは巨大な森の目の前にいる。イーレアス領とオーネスト領の間にあるレーリスの森だ。ここのことは便宜上、南のレーリスの森と呼ばれている。
ちなみに、ここに来る前、別のモンスターに出会ったがリーネの魔法によって瞬殺された。
「森へ入っていこうか。南のレーリスの森は、僕たちにとっては全く問題ない場所だけど、足元をすくわれないように気を付けて行こう」
「うん、分かっているよ。でも、だからといって気を張りすぎないでね。レイはそういうところがあるから」
「・・・そうだね。適度に力を抜いて行こう」
リーネに出鼻をくじかれ少し驚いたが、自分でもそういうところがあるなと納得して思い直す。そして、少し力を抜く。
リーネは、そんな僕を見てくすくすっと笑った。
僕はそんなリーネを見て咳払いをして、
「それじゃあ、行こうか」
「うん」
僕たちは森の中へ入っていった。
魔力や魔法とかの説明は、いつかまとめたものを書きたいと思っています。
それと、前回と同じくきりがよかったので短くなりました。
読んでくださった方ありがとうございました。