表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世は正しいようで、怪しく壊れている  作者: 海斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

10,枝眼

10,枝眼

 「“物語”を歪めている?」

 「そうだ、意図的に何者かが妖怪の物語を歪めて妖怪自体を変質させている」

 凪は淡々と答える。

 

 「そんな事って可能なのか?」

 思わず、頭に浮かんだ疑問をそのまま口に出してしまう。


 「さっきの話だとさ」

 言葉を選ぶようにゆっくりと続ける。

 

 「妖怪にとって存在自体が物語なんだろ?」

 「それを変質できたとしたら、ほとんど存在ごと作り替えるようなもんじゃないか」

 人間で例えるなら、人生を丸ごと上書きするような所業だろう。


 「じゃあ、ソイツに会えば人生大逆転ってのも夢じゃないってことか」

 自嘲気味に言ってみるが、凪と白峰は表情を崩さない。

 

 「その言葉に“絶対にあり得ない”と言い切れないのが妖怪の厄介な所だよ」

 代わりに凪から面白くない冗談を浴びせられる。

 

 「でも、そんな妖怪が今の東京(ここ)にいるとは思えない」

 今度は白峰が凪に食ってかかる。その声にはわずかに焦りが混じっていた。


 「そこなんだよねぇ」

 凪はいつも通りに軽く笑って——。


 「……いや」

 ふっと、声のトーンが落ちた。


 「妖術だけを見れば、神代(かみよ)の三化生に匹敵する」

 「だが——それだけは、あり得ないはずだ」


 「っ……!」

 “三化生”という単語を聞いた瞬間、白峰の肩がわずかに強張った。

 

 「なんであり得ないんだ?さっきはあり得ないとは言い切れないって——」

 「あり得ないんだ。」

 短く、断ち切るように凪が言う。


 「奴らは強大だが完全な三竦みの状態にある。」

 「どれか一つが派手に動けば、他が黙っちゃいない。迂闊には動けないよ」

 よほど確信があるのか、キッパリと言い切った。


 「先生。それで私はどうしたらいい?」

 

 「今まで通りに、って言いたい所なんだけどねぇ」

 凪が意味ありげにこちらを見る。


 「……ん?」

 「君のその“可能性”を可視化できる眼、……まどろっこしいから“枝眼(しがん)”と呼ぶけど」

 ……勝手に名付けられてしまった。だが違和感はない。

 それどころか妙にしっくりきた。癪だが。

 

 「しがん?」

 「無数に枝分かれする可能性を視る眼。悪くない名前でしょ?」

 小さな胸を逸らし誇るように言う。


 「その枝眼をもって、しおりを手伝ってくれないか?」

 「先生、正気?」

 すかさず、白峰が口を挟む。


 「私がやってるのは、迷子の猟犬探しとは訳が違う。常識が通用しない相手なんだよ?」

 「でも、彼は己を知りたがってる。違うかい?」

 凪が軽く言う。


 「……答えになってない」

 

 「しおり」

 凪が、少しだけ柔らかく呼ぶ。


 「私はね。焦燥感よりも好奇心で踏み込めるヤツのほうが、見えない真実に辿り着けると思ってるよ」

 「そっ、れ……は」

 白峰は何か言いかけたが、押し黙る。


 「湊」

 今度は僕の名前を呼ぶ。

 

 「しおりは今、動けない私の代わりに仕事を請け負ってくれてるんだ」

 凪は笑顔で「ほんと、頑張ってくれてるんだよー」と続ける。

 その言葉に、後ろの白峰が俯く。耳が、ほんのりと赤くなっている。


 「僕に何ができるんだ?」

 当然の疑問だった。

 妖怪の非常識さは昨日で思い知っている。戦闘経験なんてものはない自分になにができるというのか。


 「さっきも言ったが、君の枝眼は“可能性”を視る目。それは妖怪も例外じゃない」

 凪と視線がぶつかる。

 背筋がぞわりとする。猫の目を見ていると不気味な気分になるのはなぜだろうか。


 「実際に君はそのおかげで送り犬を知覚できた」

 ちょっと待て。あの出来事を“おかげ”で済まさないで欲しいんだが。


 「だから——」

 一拍。空気が静まる。


 「湊が視えたものをしおりが斬るんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ