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魔王の城はどんな城

ある程度書いたので、これから設定を再度練り直し清書版を書き始めようと思います。なのでしばらく更新ないかも。


今まで応援してくれたキミ! キミがいたから今のわたしがいる! 超絶感謝だ!

「ここって……わたくしたち、そんなに小さくありませんわよ?」


 戸惑うあんずちゃんに、出会いと態度がさんびゃくろくじゅーどひっくり返った女魔族、オーサイトはさらに戸惑いの声を漏らした。


「誰もここに入れなんて言ってないわよ」


 小瓶を落とす。思ったより軽い音で粉々になり、中の液体がむなしく地面に広がっていく。


「およ?」


 水たまりがキレイな輪っかになった。


 水面が揺れる。さっきまで自分の顔が映っていたソコはスミみたいに黒くなって、それから少しずつ別の景色が浮かんでくる。


 立派なお城だ。呪いで眠らされた姫が王子様のキスを待ちわびてそーな城だ。


(ん、ちょっと待てよ)


 魔王城なんだよね?

 じゃあ王子様じゃなくて魔王のキス?


「うえっ」

「いきなりなんですの?」


 久しぶりにあんずちゃんのツッコミをもらった。


「ちょっと! 魔王さまのお城を見た瞬間そのリアクションはなんなのですか!」


 これには戦闘メイドが猛抗議。いえいえ違うのですよ、魔王さま言うたらネガティブイメージ先行じゃん? こう、なんていうの? ムッサァーとしたオッサンみたいな、全身毛むくじゃらの大男にキス迫られるシーンを想像しちゃってね?


「へぇ、異次元の扉か」


 水たまりに浮かんだ景色をまじまじと見つめ、無精髭かつボサボサ頭、魔王の次にキスしてほしくないオッサンがそこに手を突っ込んだ。


「おお! 確かに水たまりの向こうに空気を感じたぜ!」

「サンダー殿、あまり無警戒に手を出されても困る」

「だってよブーラー、お前らも似たような魔法使ってたじゃないか。たしか在庫(インベントリ)とかいうの」

「そう言えばそうですわね」


 納得しかけたあんずちゃんにドロちんが猛反発した。


在庫(インベントリ)はアクセス可能な仮想異次元を生み出す魔法なの。道具ならともかく、生身の人間を長時間滞在させられないわ」

「へーそうなんだ」

「まぁそういう難しい話はよしてよ、飛び込んでみねーか? この水たまりに」

「サンダーさん、なぜそんなワクワクしてらっしゃるんですか」


 呆れ? いいえ、それ通り越して哀れな生き物を見下す視線です。そんな氷の視線をあんずさまから受け取りつつ、初老のおっちゃんは子どもように無邪気だ。


「だって異次元ワープだぜ? そんなのワクワクするに決まってんだろ? こんな魔法、人類にゃ到達できねー領域だ」

「へぇ、そうなの」


 大したことじゃないとでも言いた気に、女魔族は目下の水たまりをつま先でなぞった。


「ニンゲンって大変よねぇ、飛べないし勉強しなきゃ魔法使えないし、おまけに短命なのよね」


 そして、彼女はわたしたちに意味深な笑みをうかべた。


「どうぞ、ニンゲンのお客様。魔王城へご案内いたします」

「よっしゃ!」

「ちょ、サンダーさん!?」


 おっちゃん、またしても子どもようにはしゃいで水たまりにジャンプ。が、そのクツは水しぶきをあげず吸い込まれ、その身体は水面の中に消えていった。


「……あんず、行くのだ」

「ブーラーさん!?」


 まさかの宣言にあんずちゃん、身体を上下に揺らして猛抗議。


「なぜわたくしなんですの!」

「いいから」


 ブッちゃんと地面を交互に見る。それを三度繰り返した後、あんずちゃんは意を決して片足を突っ込む。


(あっ)


 すべった。


「んにゃあ!」


 ころんだ。

 そのまま水面へ落ちてった。


「バカねぇ」

「次は拙者が行く。次はドロシー、最後はグレースだ」


 ドロちんのささやき。タイミングを同じくして、ブッちゃんはわたしたちを交互に見てそんなことばを口にした。


 女魔族に聞こえないように。


「え、どして?」

「念の為だ。罠である可能性は否定できない……魔術に長けたドロシーならヤツの攻撃に対応できる。そしてグレース。お主なら仕掛けられる前に心の臓を止められるだろう」

「なるほどね」


 ドロちん、チラリとオーサイトを一瞥。それに気づいたオーちゃん、興味津々な感じでご様子伺い。


「ん? どうしたの? やっぱこわい?」

「ふざけんじゃないわよ……いいの?」


 確認するドロちん。

 ブッちゃんは無言で頷き、水面へ一歩踏み出した。


「……考えすぎだと思うけどね。まあ、何かあったらがんばって」


 残された波紋を見下ろし、ドロちんは迷いなくその後に続く。ブッちゃんへの義理か、いちおう目の前の女魔族を視線で牽制しつつ、ドロちんは静かに、鏡のように映る世界へ足を踏み入れた。


「……ふたりっきりね」


 不敵な笑みを浮かべる女魔族。こころなしか喜んでるようにも見える。


(まさか、わたしが心のなかでオーちゃん呼びしてることがバレた?)


 それはマズ、いやマズくはないか。


「改めて、ケイラックちゃんと知り合いなんだってね。同情するわ」

「え、なんで?」

「だって彼女、気に入った相手にはしつこいんだもの」

「ケイラックさんてどんな人なの?」

「どんなって、彼女は魔族のなかでもかなりの――まあ、それは本人に聞いたほうがいいんじゃない?」

「え?」

「いるもの、魔王城に」


 オーちゃんは地面を指さした。


「この扉は発動者じゃないと閉じられないの。罠じゃないし、後で追いつくから早く入ってちょうだい」

(警戒してたのバレてた件)


 そりゃそーだよねー。ま、警戒してたのブッちゃんだけだし、わたしはなーんにも心配してなかったけど。


「これがワープ魔法か、ふーん」


 どー見ても水たまりにしか見えない。けど実際にサンダーさんはじめ、みんなしてこの水たまりに飛び込み姿を消した。地面に穴があるわけでもなし、もしそうだったら水たまり自体がウソになる。


(ええい、女は度胸よ! 気合いイッパツでじゃーんぷ!)


 わたしは跳んだ。

 三メートルくらい跳んだ。


「うふっ、やっぱりかわいいわね、この子。ケイラックちゃんの言うとおり食べちゃいたいわ」

「ふぇ?」


 オーちゃんが何か言ってたけど、その声が届く前にわたしの耳は水面の底へ突き抜けた。






 突き抜けた、と思ったらそのままころんだ。


「イテッ」


 落下してたと思ったら横滑りしてた。なるほど、出口は地面に対し並行だった模様。


「だいじょぶか?」


 サンダーさんによる気持ちのこもった一言。ほっぺたに擦り傷があることからして受け身に失敗したらしい。わかる、わたしも地面と仲良しさんだったし。


「これで全員か」

「ううん、オーちゃんも付いてくるって」

「オーちゃんって、グレースあなた、仲良くなるのはやすぎません?」

「えっへん!」

「威張られても困りますわよ……」


 そこそこある胸を張りつつ、わたしの鼻は今までにない匂いを嗅ぎつける。風と花と木々。それは同じなんだけどなんか違う。アイン・マラハにあった生命あふれるあの香りじゃなく、こっちはどちらかというと……一見る不毛の大地だけど確かな生命が根付いていて、それがたくましく生きているような、そんな力が溢れていた。


「いやーいい景色だ」

「そう? 何も無いじゃない」


 ドロちんの言うとおり、アイン・マラハで見たほどの緑を感じない。完全な荒れ地でもなく、本当の意味で自然のままの土地が広がってる。わたしはここにある生命の鼓動を確かめようと深く息を吸い込んで、真後ろかのブオンって音に気づいた。


 振り向くと妙なブラックホールがありまして、そこから麗しい生足がにょきにょきっと。


「はぁーい」


 生足から生ひざ、生ふとももから生パンツのサービスシーン。わたしはさり気なくサンダーさんの目の前に陣取りつつ、最後のひとりをお迎え。そして、彼女はケイラックさんが見せたような嗜虐的な笑みを浮かべた。


「どう? 魔族の地の風景は――ようこそ。我らが魔王の城へ」


 オーちゃんが宣言する。わたしたちの旅は終着点を迎えようとしていた。

『ボロニーズ』Bolognese

 イタリア原産の小型犬。起源は不明。中世ヨーロッパの貴族に愛され、特にエカチェリーナ2世は毎夜添い寝しちゃうくらい溺愛。


純白かアイボリー色のカールしたもふもふ被毛。被毛の手入れは見た目の良し悪しだけでなく健康にも影響するよ。陽キャで従順な子が多くしつけは楽。臆病な面もあり、大きな犬には気をつけて。


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