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さぁ、決行しますわ。そして…わたくし達は幸せになります。(エピローグ)

それから、半年間。


レオナード皇太子は、色々な令嬢と知り合いたいと言っていた割には、

アーリアとフローリアとミレーヌの三人を代わる代わる呼んで学園で昼食を取り、

夜会では三人を交代でエスコートの相手を命じ、明らかにこの三人を結婚相手に考えているという事が噂になったのであった。


レオナード皇太子がアーリアと会っている時の態度は以前と全く変わりはなく、

国の事を真剣に話し合ったり、夜会のエスコートは完璧で、

時には前と同じく、宝石やドレスをプレゼントしてくれる。


でも、アーリアにとってその優しさは辛かった。

偽の優しさなんていらない。


その点、クリスはとても、誠意を見せてくれた。

アーリアがレオナード皇太子にエスコートされない日はエスコートをし、

先々の事を真摯な態度で話をして、相談に乗ってくれた。

アーリアの心を今まで以上に心配してくれて、

休みの時は、二人で街へ出かけたり、買い物したりして気晴らしにも連れていってくれた。




いよいよ卒業式の日。


皆が講堂に集められ、学園長の挨拶が終わり、卒業証書が配られて、

三人の令嬢は、卒業式が終わるとすぐに学園を抜け出した。


アーリア、クリス、スチュアート、フローリアの四人は馬車に乗り、急ぎ教会へ向かう。


ミレーヌは婚約者の辺境伯ハルディオスの用意していた馬に乗り、先に教会へ向かったらしい。


4人が到着する前に、司祭の前で誓いの言葉を言い、婚姻の証明書を貰ったミレーヌとハルディオス。


「わたくし達はもう、すんだわ。先に役所へ行っていますから、貴方達も急いで。」


「わかりましたわ。」


司祭がまず、スチュアートとフローリアを前で式を執り行う。


「スチュアート。其方は病める時も健やかな時もフローリアを愛し、一生を共にすることを誓いますか?」


「誓います。」


「フローリア。其方は病める時も健やかな時もスチュアートを愛する事を誓いますか?」


「誓います。」


「では誓いのキスを。」


フローリアが叫ぶ。


「時間がありません。すぐに婚姻証明の書類をお願いしますわ。キスは後で致しますから。」


司祭は慌てて、


「解りました。」


すぐ証明書類を作ってくれた。


そして、次はアーリアと、クリスの番である。


「クリス。其方は病める時も健やかな時もアーリアを愛し、一生を共にすることを誓いますか?」


「誓います。」


「アーリア。其方は病める時も健やかな時もクリスを愛する事を誓いますか?」


「誓います。」


「解りました。すぐに証明書類を作りましょう。」


キスをしたかったけれども仕方ないわ。

そう…わたくしは、クリスを伴侶に選びました。

とても、優しくしてくれて、わたくしを気遣ってくれて。

この半年間、幸せでした。

だから、これから先、もっとわたくしだけを見てくれるクリスと幸せになりたいと、そうわたくしは思ったのですわ。


アーリア達4人は馬車に乗り、役所へ着くと、先に来ていたミレーヌ達の他に、三大公爵家夫妻。ハルディナスの両親であるカッサルチス辺境伯夫妻、ルイスチーノ伯爵夫妻、皆、役所へ提出する婚姻証明書に両親として承認しなければならないのだ。

来た書類を受け取り、急ぎサインをするそれぞれの両親達。ミレーヌ達はもう済ませているみたいで、サインが終わると、ミレーヌが、


「窓口はあっちよ。優先して受け付けてくれるよう頼んであるわ。」


「助かりますわ。」


4人は書類を持ち、窓口へ駆け寄る。

まず、スチュアートがフローリアと書類を提出し、次にアーリアがクリスと書類を提出し、どちらも認められた。


「良かったですわ。」

「本当に…上手くいきましたわね。」


フローリアもミレーヌも嬉しそうに、アーリアに抱き着いて来た。

アーリアは二人を抱き締めて。


「上手くいって良かったですわ。後は…卒業パーティですわね。」


「がっつりと断りましょう。」


「ええ。そうしましょう。」


燃える3人の公爵令嬢達であった。



そして、いよいよ卒業パーティ。


卒業生だけでなく、出席した貴族達は皆、誰とレオナード皇太子は結婚を発表するのだろう。

興味深々で、壇上に現れるであろうレオナード皇太子を待っていた。


そこへ、それぞれのパートナーにエスコートされて、美しく着飾った三人の公爵令嬢が現れた。いや、もう、結婚したので、カッサルチス辺境伯爵令息夫人と、ハリスレッド公爵令息夫人とルイスチーノ伯爵令息夫人であるが。


壇上に現れたレオナード皇太子は三人の令嬢達を見て驚く。


「その者達は?エスコートを頼んだのか?」


アーリアは前に進み出て、


「わたくし達から報告がありますわ。レオナード皇太子殿下。まずはわたくし、先程、

クリス・ルイスチーノ伯爵令息と婚姻致しましたの。」


続いて、フローリアが前に進み出て。


「わたくし、フローリアは兼ねてから、婚約関係にあったスチュアート・ハリスレッド公爵令息と婚姻致しましたわ。」


そして、ミレーヌも前に進み出て微笑み。


「わたくしも同様です。兼ねてからの婚約者、ハルディナス・カッサルチス辺境伯令息とこの度、婚姻致しました。とても幸せですわ。」


周りの皆、驚いたように三人を見る。


レオナード皇太子は震えながら。


「今日、発表があると言ったはずだ。私の結婚相手の。それなのに、お前達は。」


アーリアはきっぱりとした口調で。


「国を統べる方が、女の気持ちも解らないだなんて、ちゃんちゃら笑えますわ。

そうでございましょう。

わたくしは貴方を信頼して、皇妃教育に励み、国の将来の事を共に語り、今まで生きて参りました。

とても幸せでしたのよ。

それが何?色々な女性を見たいから、婚約破棄してくれだって?

わたくしへの仕打ちは許しましょう。でも、それに婚約者で相思相愛の方がいるフローリア様とミレーヌ様を巻き込んだ事。許せませんわ。

そうでございましょう。

皇族の権力の横暴としか言えません。

女性を敵に回して、貴方は、上に立つ資格なんてありませんわ。」


フローリアが口を開く。


「いえ、アーリア様、アーリア様への仕打ちこそ、許されない事だとわたくしは思いますわ。

長年、国の為、いいえ、貴方の為に生きてきたアーリア様をいかに簡単に切り捨てて。

これから、発表する相手っていうのはどなたかしら?わたくし達の誰かを正妃に選んで後は側妃。馬鹿にするんじゃないわよ。どれだけ、女性の心に傷をつければ気が済むというの?」


ミレーヌが楽し気に扇を口元に当てて。


「わたくしから言える事は何ももうございませんわ。

皇太子殿下。ただ、貴方様の仕打ちは国内外に知れ渡っております。

婚約者のいる高位貴族の令嬢達は慌てて結婚するでしょうね。貴方様の毒牙に掛かる前に。

まぁ…わたくしが言うのもなんですけれども、わたくし達3人に勝る令嬢がいるとは思えませんけれども。」


レオナード皇太子の側近が叫ぶ。


「お前達、不敬であるぞ。」


レオナード皇太子が手で制して。


「この三大公爵家を敵に回すことを、我が皇家はヨシとしない。そうですね?父上。」


皇太子の父である皇帝陛下が奥から現れて。


「そうだな。それにしても、卒業式からすぐに結婚するとは、さすが三大公爵家、行動力がある。そして、今回の騒動。私の命でもある。まことに済まなかった。詫びさせて貰おう。」


皇帝陛下が三人に頭を下げる。


皇族が頭を下げるなんてあってはならない事だ。


アーリアは皇帝陛下に、


「頭をお上げ下さい。皇帝陛下。わたくし達、女性の気持ちが解って頂けたらそれで…」


皇帝陛下は頭を上げて。


「皆の者。三人の令嬢の結婚の成立を祝って拍手してやってくれ。そして、卒業パーティを楽しんで欲しい。私と息子は退席しよう。さぁ行くぞ。レオナード。」


「はい。父上。」


アーリアはレオナード皇太子が寂し気にこちらを見たような気がしたが、

気にしない事にした。


だってわたくしには、これから未来を共に夢見て歩むことが出来る愛しい旦那様が傍におりますもの。


クリスの腕に腕を絡める。

クリスが優しく微笑んでくれた。


貴族達の拍手に、三人の令嬢はそれぞれのパートナーと腕を組んで、

そして、奏でられる曲に合わせてダンスを踊る。


今日は最高の結婚記念日になるであろう。


アーリアは、クリスと共に居られる幸せを噛みしめて、

ダンスを踊るのであった。



その後、アーリアはクリスと共に、ルイスチーノ伯爵領へ行き、領地の発展に努めた。

子供も沢山恵まれ、温かい幸せな家庭を作ったと言う。


隣接する領地の兄のスチュアートとフローリア夫妻とは、生涯、アーリアは仲が良く、互いの領地経営を助け合い、フローリアも又、子供に沢山恵まれ、幸せな生涯を送ったとされている。


ミレーヌに至っては、夫のハルディオスと共に、隣国の侵攻を抑え、女傑と呼ばれ、

女戦士として大活躍をした。男の子一人に恵まれたが生涯、夫と共に波乱な人生を送る。

ミレーヌらしいと言えばミレーヌらしい。


そして、レオナード皇太子は、数年後、歳の離れた公爵家の令嬢を娶ったが、

散財が酷く、愚かな行いが多かった為、その皇太子妃は離縁された。

それ以降は、妻を娶る事も無く、皇帝に即位はしたが、従弟の子を養子に迎え、

国の為に尽くした。いつもどこか寂しげであったと言う。



拝見して下さり有難うございます。評価とブクマつけてくれると非常に喜びます。

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