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鬼邪殺戮怒≪キャサリン≫が案の定超生物Ωになった - その4・世界は続くよこれからも

「さて、いい加減ラスボスを叩きたいものだな」



 私の隣で腕組みし仁王立ちする巨漢は、今までの転生で見て来た中でも珍しくうんざりした表情を見せています。

 まあ世界征服を企む悪党とか宇宙の破壊者とか、殴れさえすれば何とかなる今までの敵とは訳が違いますからね(未来猫ロボの時は別にして)。

 何せ糸を引く何者かの実在に私が気付けなければ、オメガを異常なレベルで差別する世界中全人類の認識そのものと言う全貌すらも存在しないものが敵だった訳ですから。

 流石に人類絶滅はさせられませんし・・・鬼邪殺戮怒(キャサリン)なら可能でしょうけど。


 個人なのか秘密結社なのか、もっと大きな規模の何かなのか分かりませんが人間全てにオメガ差別を肯定させ続けて来た存在の痕跡、余りにも薄くか細く頼りない微粒子並みのヒントを手繰り遂にここまでは来ました。



 地図にない極地の孤島、吹雪の中に黒く聳える巨大建造物です。











 ・・・あ、珍しくバトルが描かれるって思いました?

 残念ながら、というか順当にネタバレダイジェストになります。

 だって殴れる実体が見つかったんだからしょうがない。



 結論から言うと、ラスボスは水槽に浮かんでる上に超次元量子コンピューターに繋がったでっかい脳味噌でした。

 80年代かな?

 元は普通の人間で、御年1000歳を超えているそうです。


 彼あるいは彼女は人同士の諍いの絶えない世界に絶望し、その解法として狼の群れの仕組みを元に「あえて差別される階層を作れば世界は平和にコントロール出来る」と言う余計な考えに至り、困った事に実行する能力も持ち合わせていたのです。

 まず自らをサイボーグ化して寿命を取り払うのと同時進行で世界を裏で牛耳る謎の人物に上り詰めました。

 そこで環境に影響のある大戦争を引き起こし、続いての工作でその環境に順応するための人間の遺伝子改造を各国政府や世論に肯定させました。

 遺伝子改造された人類の末裔が、現在の人間たちと言う事です。

 その後も本体は脳味噌としてネットの海を監視しながら、表の顔兼手足であるいくつもの国のトップや重鎮を含む無数の人間たちに指示を出し、オメガ差別を固定し続けるために暗躍して来たんだそうです。


 そんな差別するための玩具であったオメガが魔力を持っていたのは、完全に誤算と言ったところでしょう。



 うん、有体に言って狂ってますね。

 出発点の正義感はいいとして、私の映像記録に残ってる光景の数々がそのために正当化されては堪ったもんじゃないですし。

 それに人間を遺伝子改造するために一心不乱の世界戦争まで起こしちゃって。


 ええ確かに、オメガ差別以外の差別や国家民族間の戦争はピークに比べて随分大人しくなったみたいですよ?

 でもやってることが「健康のためなら死んでもいい」的なひっくり返っちゃいけない所がひっくり返った発想と言うかなんというか、ねえ。



 反吐が出ます。



 まあそんなわけで、本来鬼邪殺戮怒(キャサリン)のワンパンの「ワ」ぐらいで塵も残らないところをちょっと手加減してもらいました。

 私にも殴る分を残せ的なアレです。

 本当なら大負けに負けて全オメガに百発ずつ殴られるのが妥当なんでしょうが、こんな奴は初めから歴史に存在しなかった事にした方が世の中的にも穏当でしょう。


 鬼邪殺戮怒(キャサリン)パンチには幾分劣る威力の≪ディスインテグレート・リトルサンフレア≫が、この世界最大の闇を一つの島もろとも蒸発させました。

 極海仕様ジェットボートの窓から見える水平線はいつまでも赤く、その上空には私の魔法の影響で生まれたオーロラが輝いていました。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




 柔らかな風に乗り、チャペルの音が運ばれてきます。

 海を臨む白い教会は祝福と歓喜の声に包まれていました。

 ここでも元の世界と同じように、結婚式は教会で行われるものです。


 ドアが開いて歩み出たのはタキシードとウェディングドレスの男女・・・に見えて両方男です。

 そもそもオメガ男性同士の結婚が珍しいんですが、ドレスを着ている小さくてかわいいケモミミ側はこないだまでアルファだったのでよく考えるとさらにメチャクチャです。

 本当にオメガバースと言う世界観は業が深いですね・・・。


 まあ何て言うか、ケイン君とゲロゴリラ君お幸せに。



 そうこうしていると、結婚式の様子を遠くから眺める私と鬼邪殺戮怒(キャサリン)の体がうっすら光の粒子に包まれて行きます。

 そろそろ時間のようです。

 今までの転生は死んで終わりの時もあればこうやって役割が終わって送還っぽい場合もあり、後者なら大体30分ぐらいは別れを言う猶予があります。


 とは言え今回、墓場まで持って行く種類のいらん世界の秘密を抱えてしまったのでこのまま消えてもいい気がしますけどね。



 オメガリベリオンは既に国を名乗れる程度の規模があります。

 魔法と言う戦力を独り占めする事で私や鬼邪殺戮怒(キャサリン)無しでも多くの国と不戦協定を結べるまでになっています。

 また魔力操作も一般知識として広まったのでオメガが発情期に悩まされる可能性は低く、例のサイバー脳味噌と言う差別構造の首魁も消滅したので魔力操作が上手くないオメガのための発情期解消の研究も進むでしょう。

 正直もう手を出すところがありません。



「師匠!先生!」



 一人の青年が私達を呼ぶ声がしました。

 タキシード姿のケインです。

 なお師匠が鬼邪殺戮怒(キャサリン)で、読み書きなどを教えた私が先生と呼ばれています。



『駄目でしょ?主役が会場を抜け出しちゃあ』


「最悪結婚式は延期できますが、この時は延期できないでしょう。・・・俺はお二人が一体何者なのか、ずっと考えていました。魔法の力、鍛えれば鍛えるほど遠さが分かるあり得ない強さ、そして百戦錬磨の一言では済まないオーラ。この世の存在じゃないかも知れないとさえ考えましたが・・・当たらずとも遠からず、なんでしょうね」



 驚きました。

 今までの転生で私達の正体にそこまで迫る人物はいませんでしたから。

 まあここまで濃密に関わった子達も今まで居なかったので、転生してきた世界でもいずれは気付かれる可能性は普通にあったのかも知れませんが。



「これでお別れ・・・なんですよね。恐らくは永久に」


『ええ、間違いなくね。楽しい事も楽しくない事もあったけど寂しくはあるわ』


「お二人と言う道標を失って、俺達はこれからやって行けるんでしょうか?」


「やって行くしかないんだ。そして、お前達ならやれると思っている」



 水槽脳味噌は反吐が出る存在ではありましたが、奴がコントロールしていた以外の争いや差別を封じていたのもまた事実です。

 元の世界で見た様な人権闘争が歴史を圧縮したかのように起こるかも知れません。

 差別構造に縋りつく固陋(ころう)な層は長期間にわたり残るでしょう。

 オメガ側が明らかにやりすぎる事も、それが醜悪な利権構造として長年硬直化してしまう事もあるでしょう。



『そう、それでも。この世界に生きる人々が何とかしていく事なのよ』



 ・・・うん、これは自分でも偉そうすぎましたね。

 元の世界でも別に何とか出来てるわけでもないのに。

 というかアッチじゃ救世主でもメイドロボでも何でもない一般人なのに。

 なのにケイン君には刺さっちゃったみたいで男泣きに泣き出しています。


 なんかすまん。



 見ると、結婚式に集まっていたオメガリベリオンの仲間達、支えてきた人達がケイン君の後ろに広がっていました。

 全く、こんなめでたい日なのに肝心の結婚式をほっぽり出して何やってるんでしょうか。



「師匠!先生!俺、これから上手くやって行く自信なんか全然ありません!でも、コイツは・・・ゲロゴリラだけは幸せにして見せます!」



 うん、その言葉が聞きたかった。

 そうして私の意識は光の中に溶けていきました。



・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・




・・・・・


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~







『・・・スター。マスター、起きてください』


「うーん、寝起きにはブイエイトエンジンが、必要・・・」



 段々と意識がハッキリとしてきました。

 今回も無事帰ってこれたようです。


 ・・・ああ、そうでした。

 セコセコ動画に上がってた某実在の自治体広報読み上げキャラによる一人酒動画を参考にちょっと豪華なつまみを作ってワンマン酒盛り、そのまま眠りに就いていたんでした。

 まじでおいしかった。

 そして優しく起こしてくれるロボメイド。




 ・・・。


 おいちょっと待て、ロボメイド!?



「なんでアッチの世界で私の体だったロボメイドがこっちにいるんだよおおお!」


『正確な原因は不明ですが、マスターの意識と共に私のボディーも転送されてきた模様です。また長期間マスターの意識と同調していた影響で本来のAIにも変化が出ています』


「・・・ちょっと待て。武装はどうなってるの?確か最後の方には・・・」



 すると目の前で、メイド服のあちこちがウィーンがしゃんとばかりに複雑に音を立て目まぐるしく、かつ高速で変形を始めました。



『内蔵武装チェック・・・高出力パルスガン、対陸上戦艦フォトンセイバー、広域殲滅兵器ブレストブラスター、他各種兵装問題なく使用可能です』


「問題なく使用可能な事自体が問題なんだよチックショオオオオ!」



 っとと、賃貸の部屋であまり騒ぐのはマズイ・・・。

 しかしアッチのSF超兵器を持ち込む羽目になるとか、今度転生させられた時にもしメイドロボも一緒だったら転生神相手にぶち飛ばしてもいいと思います。

 そうだそうしよう。



『それよりもマスターの食事や使用後のネットワークデバイスを片付けることが先決と思われます。また今後の中長期的な懸案として、マスターの生活習慣と健康状態の改善を提案いたします』



 そんなわけで私はこの日、文明レベル無視兵器満載のメイドロボに健康管理されつつパソコン使い過ぎを注意される一人暮らしの女にクラスチェンジしました。

 どういうことだってばよ。





                  第六部

             メイドロボといっしょエンド

書きたいところまでは書きました!

段々鬼邪殺戮怒の影が薄くなるけどあいつ存在自体が敵が死ぬボタンみたいなもんだから乱用できないし仕方ないね!

その煽りで活躍させられるOLさんご愁傷様!

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