2.3日前
お待たせしました。
前回からギリギリ1週間超え。
■アイリス
「ココアが死んだ?しかも殺された?」
私、アイリスは衝撃に震えていた。
家でレインと一緒にマリーを慰めていると、衝撃の事実が耳に入ってきた。
「本当なの?」
家に連絡をしにきたココアの執事、セバスさんにきく。
「はい。もしもココア様の身に何かあれば、一刻も早くアイリス様に伝えるように、ココア様にいわれておりました」
「分かったわ。ありがとう」
私は動揺が収まらない。
今日の昼、マリーが王子に婚約破棄され、ココアに王子を寝取られたと思ったら…
寝取った張本人のココアが殺された?
(一体何が起こっているの?)
私は何が何だか分からなかった。
頭がぐわんぐわんする。
「それとですが…」
ココアの執事、セバスさんが申し訳なさそうな顔をする。
「なんですか?」
「ラッシュフォード王子様の元婚約者、マリー様はこちらにおいでになりますでしょうか?」
遠慮しながらも、回りくどいいいまわし。
王子様の元婚約者…
そのいい回しで分かった。
「はい。おりますが」
「そうですか。すぐにでも王城の騎士がマリー様を拘束しにきます」
「はぁ!?何故だ?」
レインが隣で叫ぶ。
ココアの執事が落ち着いて話す。
「それは、ココア様を殺す動機が一番高いのは…現状ですとマリー様になるからです。王城ではその話で持ちきりです。マリー様が犯人だと思ってる者もおります」
さらりと述べる。
「マリーはずっとこの家にいた。なぁ、アイリス」
レインが私に確認する。
「そうです。私たちと一緒にいました」
「しかし親友の言葉ですと…かばっていると思われますので、マリー様は暫く王城に拘束されるでしょう」
「まぁ、なんてこと!」
私は驚く。
「マリーはたった数時間前に、婚約破棄をされて憔悴しているのですよ」
理由は察していたが、ついセバスさんに叫んでしまう。
だがレインが私を抑える。
「アイリス、よさないか。セバスさんにいってもしょうがない。それにわざわざ騎士がくる前に、先に俺たちに連絡してくれたんだ。この意味はわかるだろ。ありがとう、セバスさん」
「いいえ。とんでもございません」
礼儀正しく述べるセバスさん。
私も落ち着く。
「そうよね、レイン。ごめんなさい、セバスさん」
「いいえ。とんでもございません」
再び礼儀正しく述べるセバスさん。
「アイリス、マリーは引き渡さないといけないだろう。だけど、落ち着いて伝える方が良い。騎士団があらっぽく伝えるよりかは」
「分かったわ。私が伝えてくる」
「宜しく頼む」
レインはセバスさんを見る。
「それで、ココアの死体は今どこに?」
「今も王城です。城内で王子の婚約者であるココア様が殺されましたので、現在は現場が封鎖されています。ココアの様の執事である私も入ることは出来ません」
(でしょうね。さすがに未来の王妃様が殺されれば、城は騒然としているでしょう)
「アイリス、俺は今すぐ現場に向かう。犯人を捕まえないと。王選の俺なら現場に入れるかもしれない」
「レイン、私も行くわ」
「いや、君はマリーを頼む。それからでいい」
「そ、そうね」
(私がいっても、何もできないかもしれない)
「じゃあ、セバスさん」
「はい」
レインは執事と王城に向かったのだった。
◆
私はマリーが寝ている寝室に向かう。
「マリー、お休み中のとこと悪いけど、入るわね。急用なの」
「はい。どうぞ」
部屋の中に入ると…マリーは泣きはらして目元を赤くしていた。
ちょこんとベッドで横になっている。
かなり弱っている。
「マリー、大丈夫?」
「うん…ありがとう。情けないところみせちゃったね」
「ううん。いいよ」
「それで、どうしたの?誰か来てたみたいだったけど。何かあったの?それにアイリス、顔色が悪いよ」
私を心配そうに見るマリー。
私は顔に出さないように精一杯表情をとりつくったつもりだったけど、効果はなかったみたい。
「うん、そうなんだ。実は、少し伝えなきゃいけないことがあるんだ」
「そうなんだ」
マリーは私を見るが、その表情は暗い。
あまり良いことではないと察したのかもしれない。
私は意を決する。
「実はね。驚かないで聞いて欲しいんだけど…」
「何?何でもいって。私大丈夫だから」
「えっとね、その…ココアのことなんだけど…」
「…うん」
ココアの名前がでたことで、悲しそうな顔をするマリー。
「えっとね…」
「大丈夫。マリー。私、ココアのことを恨んでないから。何かの誤解だと思ってるから。きっと会っても仲良くお話しできると思うから」
せいいっぱい笑顔を作るマリー。
「うん…その・・あれなんだ…もう、ココアとはお話しできないんだ」
「えっ?どういう意味。ココア、他の国にでもいくの?」
混乱するマリー。
「違うの。あのね…ココアは…その、死んだの」
「えっ……」
絶句するマリー。
彼女はぼーっとほうけている。
私の言葉が聞こえなかったみたいに固まる。
「私もさっき聞いて驚いたの。まさか…こんなことになるなんて」
「ど、どういう意味?…ココアが死んだ?」
放心するマリー。
「うん。そうなの」
「……」
マリーは沈黙する。
「アイリス様、失礼します。至急お伝えしたいことが」
私の家の使用人が扉の傍に。
彼はかなり焦っているようだった。
それに、外からは騒がしい音が聞こえる。
「マリー、ちょっと待っててね」
「え。う、うん」
私は使用人の傍に。
「なにかあったの?外が騒がしいみたいだけど」
「はい。家の方に王城から騎士団が押しかけてきています。マリー様を引き渡せと叫んでいます。その…かなり強い態度でして。今にも押し入らんばかりです」
(もう来たんだ…さっきセバスさんが来たばかりなのに。王城もそれぐらい本気なのかもしれない)
「分かりました。すぐ行くと伝えてください。私が行くまでなんとか持ちこたえてください」
「ははっ!」
使用人はすぐに玄関に戻る。
私は再び寝室の中に入る。
「アイリス…」
不安そうな顔で私を見るマリー。
「アイリス、何、どうしたの?なんだか外が騒がしいみたいだけど」
「うん。あのね…もう1つマリーに伝えないといけないことがあるの」
「まだあるの?」
驚くマリー。
「うん。ごめんね。マリーも色々辛いと思うけど、すぐに伝えないといけないから」
「う…うん」
マリーは枕を抱きしめる。
ぎゅっと抱きしめる。
「あのね。ココアが死んだって伝えたでしょ。実はココア、誰かに殺されたみたいなの」
「え…殺された?誰に?…何で?」
「分からない。でもね…それでね…実はマリーが疑われてるの」
「え!?私が…」
再び絶句するマリー。
まさか自分が疑われているとは思ってもいなかったのだろう。
ずっと私の家にいたのだから。
「大丈夫。私は知ってるから。マリーがずっと私の傍にいたことは。だから絶対に殺してない。でも、ほらっ、昼間の事があるから、どうしても疑う人がいるの」
「なんで…私が……」
ポツリと呟くマリー。
さらに外が慌しくなる。
激しい足音が聞こえる。
騎士団がこちらに近づいてきているようだ。
『お止まりくださいっ。無礼でしょ。人の屋敷に押し入るのはっ!』
『うるさいっ!どこだ、マリー伯爵令嬢はどこにいる!?私は王城から許可を貰っている。匿うものがいれば拘束し、抵抗するのであれば、住居に進入することも許されているっ!』
遠くから怒鳴り声が聞こえる。
(どうやら、騎士団が耐え切れなくなって、屋敷に入ってきたみたい)
私はマリーに向き直る。
「マリー、今から王城にいくことになるわ。私もいっしょだから安心して」
「え、王城、ココアがしんだ…」
混乱中のマリー。
私はメイドにマリーの外出用の服を用意してもらう。
泊りがけになるだろうから、色々準備する。
すると…
「ここにいたか、マリー伯爵令嬢。今すぐ王城に投降してもらう。異論はないなっ!」
とうとう騎士団がこの部屋まで来た。
私が部屋の前で立ちふさがる。
「分かりました。今外出の準備中です。少々お待ちください」
「逃げるなよ。見張ってるからなっ!窓から逃げようとしても無駄だ。屋敷は既に包囲している」
「そんなことしませんわっ」
―――こうして
―――私とマリーは騎士団に囲まれて、王城に行くことになった
―――疑惑と死の匂いがする王城に
【アイリス、婚約破棄まで…あと2.3日】
【残りのクローバー……3枚】
現在、更新が停止している作品 (2週間以上)ですが、連載を再開する場合は、活動報告で連絡したいと思います。