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禁色の闇姫  作者: ときおう慧実
三章 空音の男爵令嬢
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2

怒涛の展開が起きる章になるようにがんばります。

 木枯らしが啼く頃になると、大陸のほぼ中央に位置するジンデルでは俄かに寒気が強くなっていった。鮮やかな緑色は茶色く変化し、太陽を受けてキラキラと輝いていた川は静かに流れている。

 同じように夏から秋へと色を変えている王都の北にあるベッケンバウアーでは、高等部一年生の多くが興奮を抑えきれず声のトーンが上がっていた。というのも、冬が来る前にある野外演習への準備が本格的に開始されたのである。

 高等部一年においては皆等しく教養科に属するが、そもそもが前提として全員に兵役を課されるジンデルにおいて、演習の評価は軽視できない。あくまで公的なカリキュラムでは理論と体術しか許されていなかった基礎学部。それでも、魔法学園に在学する者が学外で魔法理論に励まないことは愚かの極みだった。そして、実践よりも知識が試される演習が一年生後期にある初の野外演習だ。


 王都ベッケンバウアーから見て西、光当たらぬ魔の砂漠を超えて隣国との国境にあるは工業都市フラウンホーファー。一般市民の生活用品はもとより、魔法の補助具の作成技術は魔法大国ジンデルを支えてきた。そんな、ライフラインは整った都市の外れにある荒野での三日間の野外演習――六人から八人のグループ毎の迎撃戦だ。若い彼らの気分が高揚しないはずがない。ましてや、貴族令嬢以外の成績優秀者はもれなく二年生からは別科に進級することもあり、たかが安全圏での野営と云っても馬鹿にする者がいるはずがない。


「では、明日の夕刻までにグループ編成を決めて一学年の担当教員に必要書類の提出とお願いしますね」


 今日も綺麗に巻いてあるキャラメル色の髪を揺らしながらのメルヘン教師アデルの言葉を思い出し、生暖かい気持ちでいると「フィーアっ!」と小さな棘のあるアルトが聞こえてきた。ハッとして顔を上げると、テーブルの向こう側にいるリーラの頬が膨らんでいた。リアムはカップを持ったまま苦笑し、ミックはあきれながら焼き菓子を食べている。

 オフィーリアたち四人がいるのは、身分関係なく使えるということになっているカフェテリアの一角。先ほど各々のホームルームが終わり、すっかり習慣化しているカフェテリアでのお喋りの最中に、オフィーリアの思考は少し他所へ行ってしまっていたようだ。


「ごめんごめん。ボケッとしてた。で、グループだっけ?」


 手元にあった焼き菓子を一つリーラの元にずらすと、リーラの口角は一瞬弧を描いた。先ほどより随分と柔らかくなった声で満足そうに笑う。


「えぇ、最低六人でしょ? 面倒だけどあと二人、どうにかしなくては」


 野外演習は毎年のことだが、ここ数年は四人から五人編成であった。それが、先ほどの発表では六人から八人だ。


 最初は春の魔法展開会と同じく、アデルがやらかしただけだと気にしていなかった。が、不機嫌丸出しのリーラを見てそれが伝達ミスではないとわかった。

 フィア、リーラ、リアム、ミック。この四人で組むことを疑わなかったことと、提出期限が翌日ということもあり正直悩んでいる時間もない。が、しかし。


「女生徒は却下よ」

「いや、あのね……」


 リーラの固い言葉に否定したのはオフィーリアだけであり、ミックは深く頷き、リアムは曖昧に笑っていた。

 聞くだけではあんまりなリーラの言葉だが、気持ちはわかる。なんせ天才の名を欲しいままにし、子爵家とは云えど既に嫡子(フィロ)を名乗ることを許されていているリアムと、下手な貴族よりもよほど玉の輿が狙えるアハテー商会の跡継ぎたるミックがいるのだ。

 普段からえげつないアタックにあっている二人が、三日間――準備期間も含めたらそれどころで済む筈がない長い期間を、色恋沙汰に費やしたくないのも当然だった。


「まぁまぁ、あくまで演習なんだからバランスで考えようよ」

「単純に魔術師としての力なら、殿下やイアン様、あとはカリ令嬢かしら」

「リーラ……」


 苦笑したままのリアムの言葉も、リーラは素気無く躱し、流石にミックの表情にも呆れが入る。


「あら、風の殿下とイアン様。ましてやイアン様は光魔法も使えるのよ? そこに水のカリ令嬢――ほぉら、バランスがいい」


 土のフィア(・・・・・)、火のミック、そして氷と雷の双子。確かに、七属性すべてを揃えるということはそれだけ対応可能な範囲が広がる。圧倒的優位に立つ。だがそもそも、派生属性である氷と雷、光を持つ者は全体でも数えるほどしかいない。

 それもあって、リーラが本気で言っているわけではないことは皆わかっていたので、明日の朝までに口説けそうな人材がいたら報告するということで落ち着き、オフィーリアは図書館へと足を向けた。

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