表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁色の闇姫  作者: ときおう慧実
二章 駿才の第一王子
31/39

16

後ほど活動報告あげます。

 何故。

 何故、私だったのか。






「失礼致します」


 地を這うような、血を吐くような、そんな耳を汚す声が聞こえる。

 荒い息が耳を犯す。汗ばんだ手が肌を撫でる。焼くような魔が目を溶かす。据えた匂いが鼻と喉に絡みつく。


 なにも差し出さずにすべてを得るなんて思ってはいない。そんなことは、ただの一度も。

 だからこそ、すべてを捨てよう。ただ、一つを除いて。


「南はどうなっている」


 虚ろな目をしながらの問いの形をとった確認に、だが部屋に入ってきた男は慌てることなく答えた。まるで、いつものことであるとでも言うかのように。


「万事、恙無(つつがな)く。正当なる(しるべ)――貴方様の威光をあるべき処へ戻すのは、そう遠くない未来でございましょう」

「はっ! 口先だけでないことを祈っておこう」


 嘲笑の際にやっと口角を上げると、男はにんまりと目じりを垂らした。


「そのときは、貴方様のその光で消してしまえばよろしいでしょう。……まっこと美しい、神の色よ」

「私に相応しいは、死の際に見せてくれる赤かと思うがな」


 それこそ自らを嘲笑う言葉は、だがしかし当人にとっては存在の証だった。

 この世界に生れ落ち、そして死ぬ時まで離れることはない体を巡る其れ。数多の赤を浴び、いつしか死の淵に立つ人間の血を浴びているときが最も心安らぐようになっていた。

 それこそ同じ色で満ちたグラスを傾け、口に運ぶ。口内で重量感を持って広がるそれは、何故か(・・・)鉄臭かった。


「北は征し、南に攻め入り……さて、東と西ではどう遊んでやろうか」


 腹部からの笑みは豊かな髪を揺らした。顎につく程度の長さのそれは柔らかな波を打ち、月光を受けることによって彼らが崇め奉る色へと変わる。


「さぁ……魅せてくれ」


 この身はすべて差し出すから。ただ一つ、己が心を除いて。






**二章 駿才の第一王子【幕】**

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ