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後ほど活動報告あげます。
何故。
何故、私だったのか。
「失礼致します」
地を這うような、血を吐くような、そんな耳を汚す声が聞こえる。
荒い息が耳を犯す。汗ばんだ手が肌を撫でる。焼くような魔が目を溶かす。据えた匂いが鼻と喉に絡みつく。
なにも差し出さずにすべてを得るなんて思ってはいない。そんなことは、ただの一度も。
だからこそ、すべてを捨てよう。ただ、一つを除いて。
「南はどうなっている」
虚ろな目をしながらの問いの形をとった確認に、だが部屋に入ってきた男は慌てることなく答えた。まるで、いつものことであるとでも言うかのように。
「万事、恙無く。正当なる導――貴方様の威光をあるべき処へ戻すのは、そう遠くない未来でございましょう」
「はっ! 口先だけでないことを祈っておこう」
嘲笑の際にやっと口角を上げると、男はにんまりと目じりを垂らした。
「そのときは、貴方様のその光で消してしまえばよろしいでしょう。……まっこと美しい、神の色よ」
「私に相応しいは、死の際に見せてくれる赤かと思うがな」
それこそ自らを嘲笑う言葉は、だがしかし当人にとっては存在の証だった。
この世界に生れ落ち、そして死ぬ時まで離れることはない体を巡る其れ。数多の赤を浴び、いつしか死の淵に立つ人間の血を浴びているときが最も心安らぐようになっていた。
それこそ同じ色で満ちたグラスを傾け、口に運ぶ。口内で重量感を持って広がるそれは、何故か鉄臭かった。
「北は征し、南に攻め入り……さて、東と西ではどう遊んでやろうか」
腹部からの笑みは豊かな髪を揺らした。顎につく程度の長さのそれは柔らかな波を打ち、月光を受けることによって彼らが崇め奉る色へと変わる。
「さぁ……魅せてくれ」
この身はすべて差し出すから。ただ一つ、己が心を除いて。
**二章 駿才の第一王子【幕】**




