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何故私は試験の前日に短いとはいえ更新しているのでしょうか……
課題も終わっていないというのに。
アドルフが意外な実力を魅せた後は、周囲の者たちの期待を最高値まで上げると共に、隠そうともしない迷いがあった。
下位貴族クラス用の競技場に足を踏み入れるは、同年代ではトップクラスの力を誇るコイブサーリの天才双生児が姉――リーラ・フラウリーノ=ヴィクグラーフォ・コイブサーリ。先ほど、弟のリアムが期待以上のものを魅せただけに、彼女を見る目は純粋な羨望が更に増えていた。
そんなリーラと競うようにして上位貴族クラス用の競技場に姿を現したのは、三大公爵家が一パルトロウの時期当主候補筆頭として名高い美貌の少年――イアン・ロベリド=ドゥーコ・パルトロウ。プラチナブロンドより落ち着いて太陽の色が混ざりながら輝く髪を靡かせている彼は下手な王室の人間すら凌駕し、貴族界の限りなく頂点に近いところにその若さで立っている。
何故この二人がかぶったのかと主催側を恨んでいる高等部一年はもとより、上級生や挙句は教師も同じだった。隣の競技場も見えなくはないがどうせなら一番いいところで見たいのは皆一緒で、悩んだ末に二つの競技場の間に溢れんばかりの人が集っている。
対し、友人二人しか観客がいない平民クラス用の競技場に立ち長く艶やかな黒髪を揺らして苦笑するは、公国からの留学生――フィア・ジェリドフ。十二にして寂しげな美しさを醸し出している彼女の観客は、これまた豪華だった。
天才双生児が弟――リアム・フィロ=ヴィクグラーフォ・コイブサーリに、国内外随一の商業を誇る商会の跡取り息子――ミック・アハテー。姉のリーラを見ずに新たな友人の魔法を見ることに疑問を持つ者はいただろうが、それも左程大きな違和感ではなかった。なんせコイブサーリの双子は入学式のその日に、初めての友人としてフィアを公の前で認めていたのだ。平民と云えどアハテー商会の名を背負うミックもそれは同じだ。明確に観衆の前で公言したわけでないにしろ、親しげにフィアと話す姿は既に友人だった。
リーラではなくフィアの魔法を見ると口にしたリアムに驚いたのはフィアだけだった。リアムとリーラにしてみればお互いのことなどとうに知り尽くしており、新たな友人の初の披露となど比べるもない。ミックにしてもリアムの発言は想定内であり、人々の伝聞でしか聞いたことがないリーラの魔法も気にはなるが属性すら未明のフィアの方が気になった。
結論として、この進行状態を一番恨んだのはリーラであった。弟や新しい男友達と同じように、リーラも生でフィアの魔法を見たかったのだから。
(リーラのあの顔)
引き攣った笑みを浮かべながらウインクを投げたリーラを思い出すと、クスリと小さな笑いが漏れた。それでも遠目には凛とした雰囲気を際立たせていたというのだから、やはり彼女も貴族だった。
競技場に足を踏み入れ、瞼を閉ざしてゆっくり一秒数える。お腹から空気を吸い込み、どんな小さな流れも逃さない。
果てしなく遠く、けれども限りなく近くで雷鳴が轟く。留まることなく小さく、けれども止むことなく大きく光が爆ぜる。
呼吸も忘れたかのように神の怒る音だけが響く中、その大地の音に気付いたのは数えるほどの若人だけだった。




