12. Confession
私の前に、二人の少女が身を寄せ合っている。
同じ髪、同じ肌、同じ瞳——。
薄暗い部屋の中では、どちらがどちらか、見分けがつかないほどだ。
混乱したまま、私はただ二人を見比べることしかできなかった。
「お兄様……」
戸口の少女が、夢でも見るような足取りで、こちらへ歩み寄ってくる。
その手は、すがるように私へと伸ばされた。
だが、私の前にいた少女が、立ち上がり、伸ばされたその手を遮るように、もう一人の少女をそっと抱き寄せた。
「……お姉様」
その声はどこまでも静かで、そして優しさに満ちている。
抱き寄せられた少女は、ほんの一瞬、行き場をなくしたように身じろぎしたが、やがて抗うこともなく、幼い子どものように、その腕の中へ素直に身を預けていく。
恍惚と潤んでいた目から、すうっと熱が引いていく。
あれほど私へ向けられていた激しさが、妹の腕の中で、嘘のように溶けて消える。
「この人は、私の姉です。——双子の」
初めから部屋にいた少女——妹は、姉を抱えたまま、静かに口を開いた。
見知らぬあの白い部屋で出会った少女。
初めて目にした時、少女は、澄んだ声で「ずっと待っていた」と微笑んでいた。
その後、枕元でひそやかに何かを呟いていたとき、そこには何かに迷う色が含まれていた。
そして、優しく私の身体を拭う手は、わずかに震えていた。
時に感情が揺れているように感じていたのは、別の人間だったからなのか。
私が接してきたのは、一人の少女ではなく、双子の姉妹だったのか。
「……私たちはずっと昔、ひどい事件で、たった一人の兄を失いました」
姉の髪をあやすように撫でると、姉は嬉しそうに微笑んで目を閉じ、妹の肩に頭を預ける。
「姉は、兄を忘れられませんでした。来る日も来る日も、兄を返してと泣き続けて、そうしているうちに、だんだんと……」
姉は静かに目を閉じたまま微笑んでいる。
すぐそこにいる妹の言葉は、まるで何も聞こえていないかのようだ。
「そんなとき、あの人が——あの『先生』が、現れたのです。あの男は、兄を取り戻せる、姉の願いを叶えてやれると、そう言いました」
兄の魂にふさわしい器を探し出し、そこに兄を取り戻す。
それは、普通であれば、一笑に付すような世迷い言だ。
しかし、この姉妹、特に姉にとっては、それこそ藁にもすがる思いだったのか……。
「私も、最初は……その話を、信じようとしました。姉が、あんなにも願うのなら。もう一度、兄に会えるのなら、と。でも——」
その横顔に浮かんだものを、私はうまく読み取れなかった。
後悔のような、怯えのような、けれどそのどちらとも違う、何か。
人の心の弱さにつけこんで、その願いを餌にする。
そんなあの男のやり口を思うと、知らず自らの手を握りしめていた。
訊かなければならないことが、まだ山ほどあった。
あなたたちは、なぜここにいるのか。先生の言う「器」とは、本当は何なのか。
そして、私はこの姉妹を——。
私が口を開きかけた、その時だった。
どこか遠くで、大きな物音が響いた。
硬いものが床に崩れ落ちるような、重い音。それは一度きりでなく、断続的に、少しずつこちらへ近づいてくる。
「先生が追ってきたのかもしれません。ここを出ましょう」
囁くようにそう言って、妹は素早く立ち上がる。姉の手を取り、私を振り返った。
「待って、まだ——」
「話は、後で。今は急がないと」
私は言葉を呑み込み、そっと立ち上がる。
腕にも足にも、かなり力が戻ってきている。
「うまくできたかわからないのですが、薬を中和する注射を刺しました」
首筋に走ったちくりとした痛みと冷たさを思い出す。
意識を奪われたとばかり思っていたあれは、私を眠らせるためではなく、薬から醒ますためのものだったのか。
「……ありがとう。だいぶ動けるようになってるわ」
「入口の扉からは、出られません。あちらは、いつも閉ざされています」
そう言って妹は、傍らに置かれていた古いランプを取り上げると、火を灯し、姉の手にそっと握らせた。
「お姉様、少し歩きますよ。これをお願いします」
姉は素直にランプを受け取ると、優しく私に微笑みかけた。
「お兄様も一緒ね」
「もちろんですよ」
答えたのは私ではなく、妹だったが、姉は満足そうに頷き、もう片方の手で妹の手を取る。
私たちは部屋を出ると、ランプの頼りない灯りだけを頼りに、足元の暗がりを進んで行った。
時折聞こえてくる足音を避けるように、妹は右へ、左へと道を選びながら、奥へ奥へと進んでいく。
やがて、前方に、わずかに大きく開けた闇が見えてくる。
「あそこです」
妹が、その闇の一点を指さして、私を振り返った。
「あぶないっ!」
その肩越しの暗がりの中に、ぬっと、人影が立ち上がるのが見え、私はとっさに警告の声を飛ばす。
妹が後ろを振り返った瞬間、闇から伸びた手が、妹の身体を力任せに突き飛ばした。




