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お城に戻ってからの話をしようと思う。

3/27 三話目

 それから、私とヴァインはお城に戻った。

 お城に戻った時に知ったのだが、私が攫われてひと月ほど経っていた。あと私が閉じ込められていた場所、王都の一角だった。監禁場所が近すぎると私は驚いた。

 王宮に戻るのは、目立たずに戻りたいという私の意志を尊重してお父様のもとへひっそりと戻った。ひっそりと戻るのって大分、おかしなことなのだけどヴァインはさらっとやってしまった。

 戻った時、お父様は腰が抜けていた。

「ナ、ナティ。無事だったのか、よかった。それでその少年は……」

 召喚獣も共にいたので、お父様はそれはもう驚いた事だろう。しかし、驚愕しておきながらもなんとか王としての面子を保ったお父様は凄いと思う。

「あのね、お父様――」

 私はそれから、攫われた時の事。

 ヴァインが私を攫った誘拐犯である事。

 ヴァインが私の事を好きで攫ってしまった事。

 ヴァインが魔法を使えて、召喚獣を従える事が出来て、王宮によく忍び込んでいた事。

 ヴァインを説得して、王宮に戻れた事。

 私がすべてを言い終えると、お父様は意味が分からないといった表情をしていた。お父様の気持ちがよく分かる。私も最初に聞いた時には意味が分からなかった。

「えっと……この少年が、ナティに好意を寄せていて、婚約話が出て王宮から攫ってしまったと?」

「そういう話なのですわ。それで何とか説得して、帰れたのですわ」

「……それで、平民なのに魔法が使えて、召喚獣を従えていると?」

「聞いたところによると、二十匹いるそうですわ」

「……冗談ではなく?」

「ええ。ですので、ヴァインは確かに私の事を誘拐しましたけれど、これだけの力を持っているヴァインを処罰するのはどうかと思うのです。私は無事ですし、ヴァインの力は我が国のためになりますわ」

「……攫われたというのに、ナティはそれでいいのかい?」

「ええ。問題がありません。……それで、ヴァインを王宮魔法師として推薦したいと思いますの。それでですね……、ヴァインが頑張ったら、わ、私と結婚させてほしいのです」

「は?」

 お父様が何故か、低い声を上げた。

「ナ、ナティよ、それはどういう……」

「その、ヴァインは私の事を好きと言ってくれましたし、わ、私もヴァインの事、結婚してもいいってぐらいには好きになりましたもの。ヴァインは私が他の殿方と結婚するとなるとまた私を、攫うかもしれませんし」

「そ、そうか……」

 お父様は何とも言えない表情をしていたが、私の話をちゃんと聞いてくれていた。

 後から聞いた話だが、私が攫われたことは極秘にされていたそうだ。混乱を防ぐために、誘拐されたという事実が明るみになる前に私を取り戻そうという事になっていたらしい。しかし、手掛かりがなく、誘拐犯からの接触もなく途方にくれていたようだ。

 そんな中で私がヴァインを連れて、帰ってきたという状況らしい。お父様はさぞ、混乱しただろう。

 それから取り乱したお父様の指示により、私とヴァインに対する事情聴取が行われた。

 私とヴァイン、それぞれからの事情聴取により、私の言っていた話が本当だと知った上層部は頭を掲げたらしい。

 まぁ、それもそうだと思う。

 様々な陰謀論がなされただろうに、私を好きだから、婚約が嫌で攫っただからね。

 それからヴァインは王宮魔法師として、王家に仕える事になる。ヴァインの両親は、王宮からの使いに卒倒してしまったらしい。表向きには私は攫われた事にはなっていない。そしてヴァインは、王都でその才能を見込まれて王宮魔法師になる事になったという事にしている。実際は全然、違うけれど。

 流石に誘拐犯でしたとは言えないから。

 突然、王宮魔法師として現れたヴァインを他の王宮魔法師達はライバル視したりと大変だったようだけど、ヴァインの力を見せつけたら大人しくなったようだ。

 圧倒的な力を見せつければ、魔法というものを誰よりも理解している彼らはヴァインの実力を誰よりも理解したのだろう。

 ヴァインは「私と結婚したいなら頑張って。待っている」って言ったらやる気を出して、魔物退治や盗賊討伐などを片っ端からこなしていった。そしてそのすべてを成功された。

 その圧倒的な実力をかわれて、その一年後、ヴァインは私と結婚をする事になる。

 表向きには、平民から王宮魔法師になって活躍した少年が、王女である私と心を通わせていったとされている。……実際の、少年に誘拐されて、そこで思いを通わせたといった事実は私達本人と王国の上層部のみが知っている秘密の事実なのだ。




 王女の私が攫われて監禁されて、何が何だか分からなかったけれど――ヴァインと出会えて、良かったと今の私は思ってる。





 end











というわけで、これで終わりです。

読んだ方は分かるかと思いますが『ガラス~』のifストーリーです。ヴァンがあのままディグに見つからなかったら、どうしていたかと考えたら、いざナディアが婚約となった時に衝動的に誘拐しそうだなと。

それで書いてみたくなって、名前などを変えて設定そのままで書いてみました。

どちらにせよ、結婚はするみたいな結論に陥って、こんな話になりました。

多分、これは陛下や上層部の混乱が凄まじい事になったんだろうなと思います。

では、ここまで読んでくださりありがとうございました。感想などもらえたら嬉しいです。


2019年3月27日 池中織奈

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王女は大物だな、と再確認できた。 [気になる点] 「ガラス職人」と比べて、図書館の司書の評価が180度変わること。本人を含めて周りもわからないことだが。 [一言] 「ガラス職人」を最後まで…
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