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第4話 俺の家で生活しよう!

 ダリアの父親が捕まったニュースは瞬く間に広がり、家に着く頃には近所の人々が知っているようだった。

 それでも、彼女が帰る場所は、あの家しかない。


「まあ、三ヶ月くらいは悪い噂になるかもな……。

 しばらくしたらみんなも忘れ始めるはずだ。

 それまで頑張ろう!」


「うん、ありがとう!

 宋史君がいてくれれば、私頑張れるよ!」


 本当言うと関わりたくないのが本音だが、ここでコイツを突き放すわけにはいかない。


 腐った世の中を絶望している俺が、コイツの辛さを一番理解しているような気がしていた。


 せめて、コイツの笑い顔が、本物の笑顔になる瞬間くらいは見て見たいと思っている。


 偽りじゃない、コイツの笑顔は、おそらく天使のように可愛いはずだと感じていた。

 俺の理論を確かめる為にも、今コイツを突き放すような事はしない。


「うん、それで良いよ……。

 ずっと一緒なんて、無理だろうし……」


「ふう、俺の心も読むなよ。

 どうせ、お前を傷付けるだけだぜ……」


「宋史君は、優しいよ。

 傷付ける時でも、やっぱり私の事を思ってくれていると感じれる。


 他の人とは、傷付ける仕方が違うみたい。

 宋史君本人は気付いていないみたいだけど……」


 まあ、心も体も傷付いたコイツを大切にしようという気はある。

 まるで、女の子だった時の俺を見ているようなそんな気分だった。

 状況は違えど、心が同じように傷付いているように感じる。


「まあ、お前は被害者だ。

 お母さんもその点くらいは理解してくれるだろう。

 今日くらいは、お母さんに甘えてみろよ。


 お父さんに傷付けられた心の傷は、やっぱりお母さんみたいな人じゃないとわからないと思うんだ。

 女の子同士だから分かることもあると思う」


「うん、今日はいろいろありがとう……」


 俺とダリアが彼女の家に行くと、家は完全に閉まっていた。

 鍵も開いておらず、家財道具の一式がもぬけの殻になっていた。

 どうやら引越し業者が来て、彼女に家の必要な物を持って行った後らしい。


 家自体は、不動産業者によって、売地になっていた。

 彼女の母親と連絡を取ろうにも、職場も辞めていて連絡が取れない。

 実家はすでに無く、行方不明になっていた。


(迂闊だった……。

 母親は、娘が苦しんでいる状態を知らなかったんじゃない。

 知っていて、世間体の為に隠していたんだ。


 それが公になり、夫が刑務所に入っているなら、ダリアは邪魔な存在になっている可能性もある。

 ダリアが、夫を盗った情婦だと思っている可能性も十分にあり得る。


 そうなったら、女の嫉妬心からも、妻としても助ける気は一切ないだろう。

 まあ、事情が事情だ。

 気持ちが落ち着かず、しばらくしたら彼女を迎えに来る可能性もゼロではない。


 だが、ダリアはたかが12歳の中学生だ。

 それほど長い時間は、家族が養ってくれなければ生活する事はできない。

 数日だけなら、俺の家で生活する事は可能だが……)


 ダリアは、俺の顔を不安げに見ていた。

 いくら一緒にいる約束をしたと言っても、家も無く、生活する事もできない女の子だ。


 面倒だと感じて逃げ出すのではないかと不安のようだ。

 俺を舐めてもらっては困る。

 両親はいなくとも、育児施設で養子を探した俺だ。


 最悪、彼女の実の両親が現れず、生活できない状況だったとしても、養子を欲している家族の候補くらいは知っている。

 笑顔の可愛い彼女なら、事情を話せば養子にしてくれる可能性は高いのだ。


「心配するな!

 まずは、俺の家に来いよ。

 気分が落ち着いてから、2人でゆっくりと考えよう。


 俺を養ってくれている家族は良い人達だ。

 それは保証する。

 だから、お前は安心して良いだぜ!」


 俺は、実の両親に捨てられて、絶望を幾度も味わった。

 いつしか希望など考えず、ただ生きているだけの生活をしていた。


 ある心理学者の研究では、鬱状態の方が真実を見抜く目を持っているらしく、人間の本性や性格を知る事ができていた。


 その為、養子になると決めた時は、本当に人の良さそうなお年寄りに狙いを絞っていたのだ。


 彼らを利用するような感じで引け目を感じていたが、見返りとしてなるべく良い子でいようとしていた。

 多少の我儘は、彼らも望む所だろう。


 実の子供を持つ事のできなかった彼らだからこそ、俺達のような子供を優しく扱ってくれると信じていた。


 それでも、やはり数ヶ月一緒に住む事が限度だろう。

 それ以上は、彼女自身を他の家族の養子にする他ない。


「はは、私、良い所無いね……。

 宋史君もごめんね。

 まさか、1日泊まらせただけで、こんな迷惑な事を……」


 さすがに、彼女自身も耐えられなかったようだ。

 俺の前で泣き崩れていた。

 彼女自身が悪い事なんて1つもない。


「気にするな。

 お前は本当に良く耐えていた。

 悪い事は、何もしていないんだ。


 胸を張って歩けよ。

 ほら、とりあえず俺の家まで行くぞ」


「うん、ありがとう……」


 笑顔の素敵だった彼女の顔は、涙で濡れていた。

 この子の笑顔が戻る日は来るのかと不安になる。

 俺にできる事は、ある程度まではしてやろうと感じていた。

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