第26話 ダリアへの勝ち方
女性ディーラーは、俺に賞賛の言葉を述べる。
「セ マニフィック(素晴らしい)!
まさか実力でディーラーの1人を倒すとはね。
かなり目が良いから注目はしていたけど、心理戦もなかなか嫌らしい奴だったようだね。
『骸骨』も冷静な判断ができずに、あっさりとカードを配る役をやらせちゃうとはね……。
みんなの前でトリックがバレて、相当動揺していたようだ。
しばらくは使い物にならないだろうね。
昨日の出来事で私を倒したも同然だし、次に来たら『イングランドの魔女』との決戦は避けられないだろうよ!」
「実力的には、あの『骸骨』は、あなたより格下でしょう?
メガネのレンズを使ったイカサマなんて、あなたからして見れば、子供の補助器のような物だ。
メガネを外せば、ほぼ素人同然の実力になってしまうとはね……。
イカサマも警戒していたが、カードを操る技術は俺より下だったよ。
だが、今の俺ではダリアに勝てないだろう。
だから、君が話し掛けて来るのを待っていた。
彼女を倒して、カジノから連れ去りたいんだ。
どうやったら、彼女を一騎打ちで倒せると思う?」
「くっくっく、『イングランドの魔女』を只の女にする気かい?」
「君のライバルが減るんだ。
君にとっては悪い話では無いだろう。
それに、彼女は心を見通せるんだ。
普通のギャンブラーでは、まず勝てない!
俺は、彼女が避ける事のできない一騎打ちまではいけると思う。
だが、そこまでなんだ……。
彼女を一騎打ちで確実に倒す方法が見つからない。
今日のポーカーでも分かったように、俺は相手の能力を封じるのが精一杯なんだ。
心を読める上に、イカサマや他の技術のある彼女を倒すには、もっと他の物が必要なんだ。
俺の分析能力を最大限に発揮して、彼女が戦略を分かっていても勝てないような何かが……」
「分析能力とほぼ確実に勝つ方法か……。
そんな物はない……、と言いたいところだが、近い物ならある。
ブラックジャックというトランプを使ったゲームさ!
ギャンブルの中でも比較的勝ちやすいし、攻略法もある。
分析能力を駆使すれば、勝てる可能性はあるだろう。
当然、『イングランドの魔女』もかなり強い。
それでも、確実に勝つならそれしか無いだろうね!」
「ありがとうよ!」
俺は、ダリアの心を読む能力には慣れていた。
別の事を考えていれば、読まれる事はできない。
とりあえず今日の夕飯の事を考えていた。
「お待たせ!
トイレが少し混んでて遅れたよ。
ごめんね!」
ダリアが、女性ディーラーの前を通り過ぎて、俺の所に行こうとする。
すると、通り過ぎる所で女性ディーラーが、彼女に話しかけていた。
「あんたが只の女になる事を願っているよ、ふふ……」
ダリアは彼女を見つめて、睨む付ける。
どうやら俺とダリアが勝負するのを楽しんでいるらしい。
俺が勝てないと悟っているのか、それとも彼女が抜けるのを喜んでいるのか知らないが、彼女にそう告げて去っていった。
どうやら勝負の内容までは伝わっていないようで、次に俺がカジノを訪れた時が勝負である事を理解したようだ。
俺を見つめて、ダリアはこのように言う。
「ふーん、アキラもなかなかやるね!
こんなに早くに私と戦うようになるとは……。
私のドーピングがあったとはいえ、今日も勝つとは思わなかったよ。
明日から数日間は、私とフランス観光だけど、本当に私と結婚する気ならば、最終日にゲームをして勝負して勝つしかないね!
まあ、勝てたらの話だけど……」
「ふーん、明日でも良いけど?
最終日にゲームに勝って、君を奪って行くのが好みなのか?
かなりのロマンチストだな!
飛行機のチケットを購入しておいた方がいいかな?」
「要らないよ!
どうせ、私が勝つからね!」
「ふん、飛行機のチケットを買って、最終日に君を攫っていく。
その時まで覚悟を決めておいてくれよ!
じゃあ、最後のフランス生活を2人で満喫しようじゃないか!」
「ふーん、私も負けられなくなっちゃったよ!」
ダリアは、しばらく勝負師の目をしていた。
俺の宣戦布告を受けてだろうか?
バスに乗っている間は、ずっと険しい顔をしている。
「折角のデートなんだ。
ダリア、楽しもうよ!」
「ふう、そうだね……」
ダリアはそう言った後は、カジノの事を忘れて数日間は俺とのデートを楽しんだ。
パリに観光旅行に行ったり、セーヌ川を散歩したり、エッフェル塔などを見学していた。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、ついに俺の旅行も最終日になっていた。
彼女の家に泊まり、彼女に勝つ計画を練る。
彼女が起きている時は、心が読まれてしまうが、彼女が寝静まった後にいろいろ資料を調べていた。
一応、彼女の部屋と俺の部屋は遠くに離れており、心を読む事はできない。
声が届く範囲にいなければ、心も読めないようだ。
その為に、計画は順調に進んでいたが、彼女の家に泊まる最終日は違うようだ。
「ねえ、最終日なのよ?
どうせ、私には勝てないわ!
なら、一緒に寝ても良いのよ?」
彼女が俺にそう誘惑して来た。
その顔は真剣そのものであり、冗談とは思えない。
それでも俺には勝算があり、勝負を捨てる気は無い。
「俺は必ず君に勝つ!
性欲も俺の強さの秘訣なんだ。
今、君と関係を持つ気は無いぜ!
勝って、君を日本へ連れて行き、杉田と羽田に紹介する。
その後、君と気が済むまで抱かせてもらうんだ。
この計画に変更はない!」
「だから、それは無理なんだって……」
ダリアはそう濁すが、俺の意見を尊重して俺の部屋から出て行った。
「はあ、バカな人ね……。
でも、また次にフランスへ来たらチャンスがあるか……。
明日は、徹底的に潰してあげる……」
そう言って悲しい表情をしていた。
俺は、彼女に勝って、カジノという牢獄から連れ出そうとしていた。
そう上手く行くのだろうか?
明日の戦いで全てが決まる!




