第27話 VS『イングランドの魔女(ソルシエール)』
朝になり、俺とダリアは、一緒のバスに乗ってカジノへ向かう。
向かい合わせに座る彼女は、すでに勝負師の顔をしていた。
今日は、どうやっても俺に負けないという覚悟を決めた顔だ。
更に、今まではバニーガールの格好だったのに対し、今日はディーラー専用のスーツを着用していた。
本気の勝負服といったところなのだろう。
俺とダリアはカジノに着き、各自自分が得意なゲームをしていた。
俺は、ブラックジャックのテーブルを陣取り、ダリアはカジノ全体を回っていた。
ブラックジャックの修行として、俺はそこのディーラーを倒して行く。
「よし、ブラックジャックは、ディーラーが17以上引かなければならないというルールがあるから、ディーラーがかなり不利になるんだ。
このままのペースで行けば、負ける事は無いぜ!」
俺は、ダリアが来るまで無敵の強さを誇っていた。
ついにカジノのオーナーが動く。
ダリアを使い、確実に俺を潰す事にして来た。
「さすがだね、昼前に私を引きずり出すとは……。
一騎打ちだ!
賭けチップが無くなった方が勝ちというシンプルなルールだ!」
「君の賭けチップが無くなったら、君自身を賭けてもらうぜ!」
「賭けチップが無くなってから言いな!
あなたは飛行機に乗る時間がある。
タイムオーバーまでに私の賭けチップが残っているだけでも私の勝ちだ!」
「ディーラーは、17以上になるまでカードを引かなければならないというルールがある。
勝負自体は、俺の方が圧倒的に有利だ!」
俺とダリアの一騎打ちが始まった。
俺とダリアは最初は接戦をしていたが、ディーラーによる不利な条件から彼女がバースト(21を超える事)し始めていた。
「くう、ベーシックストラテジー(相手が何を引き、自分の手札が何かで勝率を上げる技)の方法を駆使して来たか……。
今では、カウンティング(今までに出したカードから次のカードを予測する技)を防ぐ方法がたくさんある為に、ベーシックストラテジーが常勝の主流になりつつある。
だが、所詮は付け焼き刃だ!
私は、全ての必勝法を記憶しているけどね!」
彼女は、俺が引いたカードを予想して、俺を惑わすような発言をする。
集中力や記憶力がない者なら、誘導に惑わされて手順を間違えてしまうだろう。
しかし、俺はそう簡単に引っかかる事は無い。
「おやー、そのカードで良かったかな?
こっちは、かなり良いカードを引いたよ?
これ、私が勝っちゃうな!」
「俺に揺さぶりは効かない。
君に勝つ為に、ずっと覚えて来た事だ。
敗北を覚悟してもらうよ!」
「くう、全く動揺していないか……。
逆に、私をドキドキさせるような発言で惑わそうというわけか。
このハンサムボーイが!」
「そう言う発言をしていると言う事は、君はドキドキしていると言う事だね。
このまま、俺が勝つよ!」
「まだだ!
私には、まだ切り札があるんだよ!
相手の戦略を見透かす技がね!」
「俺も、ずっとその対策は取っていたんだよ。
君に会うずっと前からね!」
(くうう、心の中が分からない。
ずっと私とラブラブしているだけだ……。
くっそ、結婚して子供が生まれる事まで考えていやがる。
いや、これは、彼の恋人だった女の子か……。
ならば、そこが彼の弱点であり、唯一の欠点だ!
そこをピンポイントで突いてやれば、隙を作り出すことができる。
動揺さえしてくれれば、崩すのは簡単だ。
力が拮抗しているからこそ、動揺した時のダメージは大きい。
ゲームの流れを左右するほどにな……)
ダリアは、俺をじっと見つめてこう言い出した。
「あなたはさあ、私に惚れているようだけど、それは勘違いだよ。
あなたは、私になんて惚れていない。
あなたが惚れているのは、私の心臓を持った女の子でしょう?
私を通して、その子を愛しているだけなのよ。
あなたが愛して、幸せにしたいと思っているのはその子だけだ。
私は、この心臓のオマケというところでしょう?」
俺は、彼女の言葉を聞き、目を閉じて考えていた。
そして、今の彼女と昔のダリアを思い返していた。
「俺は、確かに、日本人ハーフのダリア・雛子という女の子を愛していた。
君に出会うきっかけとなった女の子だ。
だが、付き合った時間は君とほとんど変わらない。
俺は、この一週間の間に、君と生活して幸せだった。
その子の心臓も含めて、君が好きだよ!
君は、俺といて幸福じゃなかったのかな?」
「ふははは、何も知らないくせに……。
良いだろう、ゲーム続行だ!
私の全てを賭して、あなたを打ち負かす!」
「言っておくが、俺には観察眼がある。
仮に、君がイカサマをしようとも事前に見抜いてしまうぜ!
イカサマ行為は、自滅行為だぜ!」
「ならば、タイムリミットまで足掻いてあげるよ!
飛行機の時間まで粘れば、私の勝ちだ!」
「それはどうかな?
飛行機の時間など、少しお金を払えば変更できる。
文字通り朝まで付き合ってあげようか?」
「くっそ、飛行機の時間までブラフだったのかよ!
ヤバイ、長期戦になったら、ディーラーの差で負けてしまう……」
俺とダリアは、長期戦を戦っていた。
3時間が経過して、彼女の賭けチップが底を尽きた。
俺は、最後の大勝負に出る。
「君の賭けチップは尽きた!
俺は、今までのチップ全てを注ぎ込み、最後の勝負をする!
君が賭けるのは、君の将来だ!
君が負けたら、俺と一緒に日本に来て、結婚して欲しい!」
「はっ、ここまで私を追い込むとはね……。
観客も飽きて帰ってしまったよ……。
なら、最後の切り札を出そうか?
ダリア・雛子という子が死んだ真実を……。
それを知ったとしても、私を今までと同じように愛せるかしら?
これが、私の真の切り札だ、聞きたいかい?」
「話してくれ……」
ダリア・雛子は、マフィアのボスの孫娘を助ける為に心臓や肝臓などを摘出されて殺された。
その後、その臓器は、全て今のダリア・アレクサンドルに移植されて、マフィアのボスは日本に拘束されているというのが俺の知り得た情報だった。
更に、俺の知らない事実があるのだろうか?
ダリア・アレクサンドルが恐るべき事実を話し始めた。
俺を動揺させようとして、ダリア・アレクサンドルは話し始めた。
「まず、私はマフィアのボスの孫娘なんかじゃない。
マフィアのボスがある計画を立てる為に作り出された人造人間といったところさ。
今捕まっている私の父祖は、ボスの影武者として捕まっている。
私の父祖は私の病気を治す為に尽力していた。
マフィアのボスは、それに目を付けた。
最初は、高額の医療費を請求して、私に移植手術をさせるのが目的だった。
祖父も喜んで影武者を演じていたよ。
日本に来て、臓器の取引をするのが目的だった。
だが、ある人物が持ち込んだ情報で、ボスの狙いが変わったのだ。
ダリアとかいう少女の母親が、娘を臓器提供者として売り渡して来たが、その娘が心を読めるという事でボスが関心を示したんだ。
そして、その娘に狙いを絞って拉致し、臓器を取り出す事にした。
警察にバレなければ、そのまま遺体を遺棄して海外に戻り、警察にバレたならボスの身代わりとして拘束される。
そういう手はずで日本に派遣されたんだ。
警察にバレて逮捕されたが、祖父は計画通りに実行して、影武者として拘束されている。
おそらく出る事は不可能だろう。
私は、マフィアのボスに育てられて、カジノのディーラーとして雇われた。
心臓に心を読む能力が宿っているのか、脳にその能力があるのか分からないが、とりあえず可能性がある部分は全て移植された。
結果、私は心を読む『イングランドの魔女』として復活し、マフィアのボスに稼ぎを渡している。
全ては、ボスの監視下にある。
仮に、お前が勝って私を手に入れても、ボスが派遣した暗殺部隊に殺されるだけだ。
私がもしかしたらダリア本人かもしれないが、アキラと結ばれる事はできない。
このまま帰って、杉田と結婚してあげてください。
私は、1人でも頑張ってやっていけるからね。
アキラが私の為に暗殺されるのは忍びないの。
分かったら、ここでゲームを止めて帰ってくれ!」
「ふん、俺にボロ負けしたような女の子を、マフィアのボスが欲しがるかな?
俺は確実に勝つぜ!
もしも、マフィアのボスが気に入らないのなら、俺を雇いに日本に現れるが良い!
俺は、逃げも隠れもしない!
さあ、最後の勝負をしようじゃないか!
君は、俺には価値があるが、カジノ側にはもう価値なんてないはずだ!」
「ふん、カジノのルールを逆手に取るなんて恐れ入ったよ……」
俺は、21ピッタリのカードを引き、ダリアに圧勝した。
確かに、カウンティンクが効かないようにする方法は取られている。
しかし、絶対にできないというわけではない。
俺は、ダリアのカードを交換するタイミングなどを見計らい、残りのカードを予想していた。
それにより、21が揃うという奇跡が起きたのだ。
「俺の勝ちだ!
チップは全てカジノにくれてやる!
俺と一緒に日本に行こう!」
「はい!」
俺とダリアは、大量に集めたチップをばら撒き、客とカジノの従業員が混乱しているうちに走って逃げた。
追って来る者はおらず、みんな賭けチップを集める事で必死だった。
飛行機の時間が間に合うギリギリに出たので、俺の荷物と彼女だけを連れて日本へ帰って行く。
空港で、彼女が騒ぎ始めた。
「あの、私、パスポートを持って来ていないよ……。
飛行機に乗れない……」
俺は、彼女のパスポートを見せてこう言う。
「言っただろう?
俺が必ず勝つって!」
「バカ、大好き!」
ダリアは、俺をしばらく抱きしめていた。
こうして彼女を連れて日本に行き、結婚する。
マフィアの暗殺者は来る事はなかった。
女性ディーラーが、俺がダリアを圧勝したことを話し、ダリアは事実上解雇されていた。
どうやらマフィアのボスの興味が無くなったようだ。
「日本で数年前に、私の影武者が捕まった。
そして、『イングランドの魔女』も敗北した。
所詮は、実験程度の移植手術だっだ。
今、日本に手を出す事はできない。
警察があそこまでスピーディーに海上を警戒しているとは思わなかった。
下手に手を出せば、私にところにまで危険が及ぶだろう。
カジノ自体に損害はなかったのだ。
日本への臓器密売は一時期中止とする」
「賢明な判断ですよ。
私がいれば、彼女など必要ないですからね!」
「ふう、期待しているぞ!」
「はい!(ふん、私も機会を見て逃げるよ、バーカ!)」
絶対悪とは、武力や権力で他者を脅す者の事だ。
彼らは、人を自分の道具やコマとして評価する。
それが無くなった時、彼らを守る者は何もないのだ。
みんなは、人と人とのつながりを大切にして行こう。
特に、家族や友人などは、困った時に助けてくれる切り札なのだ。
思いやりのある言葉や、優しい親切の行動は、あなたを困難から助けてくれるのだ!
どうも、猫パンチです。
ここまで読んでくれた皆様に感謝します。
次は、地球とは違う星に移住したSF小説を書きます。
人は、誰でも空を飛びたいと憧れますが、この空が敵になったら恐ろしい恐怖となるでしょう。
そんな空が敵となった星での冒険の話です!




