第16話 プロポーズをする。
俺と雛子は、手を繋いで街を歩いていた。
離れないようにしっかりと握り合い、お互いの体温まで感じている。
そして、予約していた高級イタリアンレストランに入って行く。
「ここが予約していた店だよ。
高いけど、コース料理を頼んだから、値段は気にしなくて良いよ!
個室にしたから、2人きりだ!」
「あの、私、向かい合うよりも隣に座りたい。
アキラともっと密着していたいよ!」
「ああ、好きな場所に座ろうぜ」
俺と彼女は、隣合わせに座り、お互いに手を握り合っていた。
片時も離れたくない、その想いを体で示し合う。
彼女の体温まで感じられる位置に座って、食事を楽しむ。
「シェフのおまかせ料理だから、名前も良く知らない物ばかりだけど、ソフトドリンクも飲む放題だから……。
アルコールの入ってないカクテルもあるよ!」
俺は、彼女にオススメのカクテルを飲ませる。
気分だけは、大人になったようだった。
雛子も、お酒を飲んでいないとはいえ、興奮気味になっている。
「うわぁ、色も綺麗だし、味もとっても美味しいよ!
こんなの初めて飲んだ!」
「気に入ってくれて、俺も下見した甲斐があるよ。
実は、杉田と羽田に教えてもらったんだ。
アイツらは、そういう知識も豊富だったから……」
「ふーん、私の大切な友人と仲良くしてくれてありがとう。
アキラ、大好きだよ♡」
「ダリア・雛子さん、俺も好きです。
実は、俺から君にプレゼントがあるんだ!
中学生で、まだまだ2人の将来は決まらないけど……。
でも、俺は、君と一緒に生きていきたい!
結婚を前提に、付き合ってください!」
俺は、養父と養母の助けを経て、自分で貯めたお金も使ってプレゼントを買った。
結婚指輪としては、価値はあまり無いような代物かもしれない。
でも、俺が精一杯選んで買った指輪だった。
「ごめん、指輪自体の値段は、3万円もいかないんだ。
俺が仕事をして、お金を稼げるようになったら、もっと良い指輪をプレゼントする。
だから、それまでは、この指輪で我慢してください!」
雛子は、箱から指輪を拾い上げ、ゆっくりと左手の薬指にはめた。
俺の方を向けて手の甲を見せ、指輪を慈しむように頬ずりする。
涙を流しながら嬉しそうにこう言った。
「こんな素敵な物をありがとうございます!
私なんかの為に、食事もサプライズも用意してくださり感激です!
今まで貰ったプレゼントの中で、一番の物です!」
「あの、それじゃあ……」
「はい、私なんかで良ければ、ずっと一緒にいて欲しいです!
私としては、アキラと片時も離れたくありません!」
「これからは、ずっと一緒だからな!
お父さんが出所して来ても、俺とお前が離れる事はないぜ!
実際、俺がここまで好きになったのは、ダリア・雛子だけなんだ。
他の奴なんて考えられない!」
「私も、アキラ以外を夫として愛したくはないよ!
ずっと、ずっと一緒だよ!
2人で生活したり、結婚したり、子供を作ったりしたいです!」
「ああ、俺もだ!」
こうして、俺と雛子は恋人同士になった。
養父と養母に支えられ、ずっと一緒に生活できる事になっている。
これから、ずっと一緒に生活して、学校や家庭を楽しめるはずだ。
「まあ、親頼みになっているが、高校を卒業したら就職も考える。
あまり彼らに負担をかけるのも良くないと思うんだ。
雛子は、親と相談して、今後の進路を決めよう。
20歳になって、俺が君を養えると思ったら、結婚して欲しい!」
「はい、これからもよろしくお願いします!」
俺と雛子は、食事をしながら今後の予定を話し合った。
まだ6年ほど先だが、計画は早めに具体的は方が良い。
子供は2人くらいが望ましいという事まで話し合った。
「まあ、そうは言っても、今は無理だな……。
養父に2人とも養って貰っている段階だ。
子供は、20歳くらいに産むのが理想的だろう。
それまで、なんとか我慢するよ。
雛子も、家にいる時はパジャマ姿でいてくれよ。
なるべくドッキリハプニングはしないようにしてくれ!」
「うん、キスくらいは、しても良いよね?」
「まあ、親が見ていない時に、偶になら良いかな……」
「じゃあ、記念日にデートして、キスしたいです……」
「覚えていられるか分からないけど、その都度記念日を作っていこう!
まずは、今日が初キッス記念日という事で……。
先週が、初デート記念日か……」
「記念日が多いね。
夏祭りが初デート記念日で良いかな?
覚え易いし……」
「ああ、2週連続はキツイけど、経済的に余裕があったらしたいね。
来年も、また2人でキッスやデートをしよう!」
「うん!」
彼女の顔には、天使の笑顔しか見せない。
辛い経験や過去があるけど、全てを克服したようだ。
俺は、彼女の表情を見ながら幸福に包まれていた。
食事も終わり、その日は家に帰る。
帰り道の途中でも彼女は、貰った指輪を見て照れていた。
この世に、こんな可愛い生き物がいるのかと思うほど、愛くるしくて思わず抱きしめてしまう。
(コイツを絶対に離すもんか!
俺が必ずコイツを幸せにする!
コイツの笑顔を絶やさないようにしないとな……)
「うん、とても嬉しいです」
雛子には、俺の考えが筒抜けだった。
(筒抜けだって良い、もう気になんかしない!)
俺は、しばらく道の真ん中で彼女を抱きしめていた。
彼女に心が読まれるのを知ると、意外と大胆になれるものだ。
昔はムカついたカップル達の行動を、今は俺達がしていた。
みんな、幸福なカップルを見てもイライラしないでね。
いずれは、君達もやる行動かもしれない。
生暖かい目で見てくれ!
俺と雛子は家に辿り着き、恋人同士な状態で生活する。
それは、まるで新婚の夫婦のようであった。
おやすみの挨拶さえ、今までと違ってドキドキしていた。




