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第9話 幸せの崩壊

 俺とダリアが授業に戻ると、教室は騒がしさを取り戻していた。

 どうやら直接のイジメはせず、徐々に相手の精神を甚振るタイプに徹するようだ。

 このタイプのイジメは、女子系統に多い。


 一見何も変わらないが、無視したり、誰もダリアに近付いて来ないようにさせる。

 イジメをしているボスが分かり辛いというのが特徴だ。


 暴力的な攻撃はせず、中傷や批判で精神を削って行き、仲間という回復経路を断つのだ。


 その点、ダリアには2人の友人と俺がいるので、なんとか乗り越えられるだろう。

 俺はそう思っていたが、それほど単純なイジメでも無いようだ。


「トイレに行って来ます!」


「ああ、行って来い!」


 委員長の杉田さんは、ダリアをトイレに行かせた。

 ダリアは不安を感じているようだが、彼女は構わず行かせる。

 その代わり、俺にこう語り出した。


「宋史、10分してもダリアが戻らなければ、トイレの方まで行って来い!

 一応、相棒の羽田は付けてやる!」


「なぜ、10分後に?

 なら、一緒に行けば良かったんじゃないのか?」


「ぶっちゃけ、私達がダリアをいつも守るのは物理的に無理だ。

 いくら私達が注意していても、見えなくなった時に集中攻撃を受ける。

 一番肝心なのは、ダリア本人の危機回避能力だ。


 初期の段階で止められる能力を身に付けられるのが重要だが、多少時間がかかっても良い。

 重要なのは、本人がイジメを克服しようという心意気だ。

 それが無いと、いくら私でも助けられないね。


 その訓練だよ。

 ただ、失敗した場合は、一気に暴力的なイジメになるから注意が必要だけど……。

 いくらなんでも、暴力的なら有無を言わさず止められるからね」


「それで、ダリアが回避する可能性があるのが10分って事か」


「そっ、それに、見ている証人も必要だよ。

 男子が女子を無理矢理止めたら、暴力犯はあんたになるし、女子トイレに入るから覗き犯にされる可能性も高い。


 そのリスクを最小限に回避するための策が、羽田を連れて行く事だ。

 異常が無さそうな時は、彼女に確認させる事ができるし、ダリアを慰める点でもスムーズに行く。


 イジメの回避は、ほとんど事前の準備によって解決できる。

 イジメがエスカレートする前に、イジメられる奴に回避能力を備えさせたり、イジメがエスカレートする前に逃げ出す事だ。


 まあ、今回は、ダリアに何の訓練もしていない。

 イジメられていたら、言葉の暴力と陰湿な行為で泣いているかもな……。

 一応、後で状況報告してくれ」


「はあ、分かったよ」


 俺と羽田は、女子トイレの方へ向かおうとする。

 廊下を出ようと、戸に手を掛けたところで、委員長の杉田にこう言われた。


「煩わしいと思うかもしれないが、イジメの現場を3回止めれば、ほとんどが解決する。

 1回目は、無計画な嫌がらせなんだ。

 コイツをからかったら面白いかどうかを判断する。


 無抵抗で、何もしなければ、次の計画的な犯行に移る。

 次も止められなければ、良心の呵責が無くなり、一気に爆発するんだ。

 そうなったら、中々止められないけど、初期段階なら空気を濁すだけで止められる。

 頼んだぞ!」


「ああ、任せろ!」


 俺と羽田は、女子トイレを回る。

 まずは、一番近いトイレに向かっていた。

 その間に、委員長の事が気になって、羽田に話しかける。


「委員長は、何であんなにイジメに対して良く対処できるんだ?

 教師以上の洞察力だぞ」


「そりゃあ、イジメる側にも、イジメられた側にもなった事があるからだよ。

 最初のイジメは、小学校2年生の時に、班で一緒になった女の子をグループでイジメていたらしい。


 無視や悪口から始まって、徐々に身体的にも攻撃するようになっていったそうだよ。

 イジメている奴には、徐々にエスカレートしているなんて気付かないそうだ。

 異常を感じたのは、男子達が彼女を男子トイレに連れて行こうとした時だった。


 その子が、必死で抵抗しているのを見て、なぜそこまで必死で抵抗するのか分からなかったそうだ。

 男子トイレといっても、女子トイレとさほど変わらない。


 そこまで必死になる必要は感じなかった。

 それでも、その女の子は、柱や壁を掴んで入らないように踏ん張っていた。

 杉田もやり過ぎと思って止めたが、他の男子に相手にされなかった。


 その後、彼女の口から死にたいという言葉が出たらしい。

 男子トイレ内で何があったか知らないが、もしかしたら性的なイヤガラセを受けていたのかもしれない。


 微妙な時期だからね、絶対無いとは言い切れないそうだ。

 その後もイジメは続いて行き、彼女も杉田もイジメの対象になっていた。


 杉田は、怪我をするほどの暴行は受けていなかったけど、その子は一生傷が消えないほどの怪我をしていたらしい。


 まあ、顔じゃないから分からないけどね。

 手首だったかな、そこがかなりヤバいレベルまで傷付けられたそうだ。


 その後は、何事も無いように過ごして、問題の彼女も無事に卒業できるまでに回復していた。

 友達もできたし、多分彼氏もできている事だろうね。


 でも、中学の時に、またイジメる側になってしまい、反省しているようだよ。

 ちょっとしたイヤガラセが、徐々にエスカレートしてしまうみたいだ。


 まあ、その時は、相手が拒絶していたからそんなに酷い結果にはならなかったけど……。


 だから、杉田は、もうイジメを起こさせないように努力しているらしい。

 イジメの原因は色々あるけど、本人ではどうしようもない事もあるんだって。

 今回の性的な虐待や、身体的な特徴、病気なんかね……。


 本人が直せるところなら、他人が優しく注意したり、協力したりする事で何とかなるけど、どうしようもない事で起こってる場合には、強めの反応で問題を回避するしか方法がない。


 相手を怖いと思わせるくらいじゃないと、取り返しのつかない状況まで行ってしまう可能性もあるらしい。

 自殺とか、殺人とかね……」


「事前に対処できるなら、俺達で対処しよう!

 じゃないと、学校生活が悲しい物になってしまうぜ……」


「うん……」


 俺と羽田は、女子トイレを確認する。

 大勢の生徒に見つからず、教師から隠れてイジメられる場所は、学校のトイレが最適らしい。


 仲間が独占していれば、他の生徒が入ってくる可能性は無くなるし、水やバケツなどの道具も揃っている。


 さらに、数人で取り囲めるという好条件も揃っていた。

 軽いSっ気のある人なら、イジメをしてしまうのも頷ける。


 本人は、友達を構っているだけだと思っているようだ。

 そのような、絵に描いたようなイジメの現場がトイレで行われていた。

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