夏への誘い
「陽花ちゃん、火竜を狩ったんだって?」
「はい。なんか成り行きで……」
「火竜とか研究課程の子でも苦戦する相手なのによく倒せたね」
「その辺は皆のサポートが良かったからですよ」
謙遜じゃなくそう思う。
あの時四人で力を合わせなければ勝てなかった。
「まぁ止めを刺したのは陽花ちゃんだし、それは誇っていい事だと思うよ」
言いながら柚木先輩はタブレットにペンを走らせる。
そうするとPCの画面にはみるみる男の子の絵がかたどられていく。
絵心の無い私は見てて、『わー凄いなぁ……』という感想しか湧いてこない。
ていうか、どうやったらこんなに上手にかけるんだろう。
私が描いた絵なんて全然たいしたことないもんなぁ……。
こういうのって才能なんだろうな、ってつくづく思う。
「絵、描いてるの見るの初めて?」
「はい。なんか、すごいですね……」
「そういわれると照れちゃうけど、ボク位かける人、他にもいっぱいいるからね。すごい人だと墨で一筆書きみたいにして描いちゃう人もいるし」
「そうなんですねぇ……」
墨で一筆書きみたいに描くってことは、もう頭の中に絵が出来上がっててそれを形にしてるってことだよね。
世の中って広いなぁ。
それにくらべて私の絵の何と拙い事よ……。
「それはそうと夏の即売会そろそろだけど、どうする?」
「あ、はいそれはもう参加させていただけるなら是非」
「うん分かった。今回は那直は絶対に行かないって言うからまた五人おねがいしてもいいかな?」
「わかりました。今回はカノやヒルコちゃんが来れると思うんで大丈夫だと思います」
「そっか。じゃ、よろしく頼むよ」
「了解しました」
―――
「今回は絶対に参加させてもらうわよ」
開口一番カノがやる気満々といった顔でそう言う。
「うちも参加できるなら参加したいなーって」
ヒルコちゃんもカノの頭を撫でながらそう告げる。
「私も私もー。今度は桜花と一緒にコスプレしたいな」
「コスの衣装は私が作ってあげるよ、アカリ」
そう言って桜花はアカリに抱き着く。
こっちはこっちでほんと仲いいなぁ……。
もうほんと恋人同士になっちゃえよって思う。
まぁそういう私も桜花より一年長くいて未だに煮え切らない態度とってるんだけどさ。
「月依とサクヤちゃんはどうする?」
「私達はまた実家かなー。お父さんとお母さん、サクヤちゃん気に入っちゃって」
「本当に、嬉しい事です……」
そっか。ならその方が良いかな。
「テラスちゃんはどうする?」
「そうだのう。また行けるなら行ってみたいのう」
「じゃ、ちゃんと前回みたいに偉い人に許可とってきてね」
「うむ。わかった」
「じゃあ、今回はテラスちゃんにアカリに桜花にカノにヒルコちゃんでいっかな」
「キクリは聞かんで良いのか?」
「キクリ先生は夏は忙しいんだって」
「そうか。ならしょうがないのう」
「ん?ねぇそれって陽花入れると六人じゃないの?」
そう尋ねてくる桜花。
「うん。だから、私は朝一で外に並ぶよ」
「相変わらず物好きだねぇ……。あんたも」
「あの並んでるときの高揚感が良いんだよ。桜花にはわかんないかもしれないけどさ」
「まぁそだね。そのへんが陽花らしいちゃらしいけど」
そんなわけで。
夏の即売会に参加するメンバーが決定した。
因みに私の家にこんな大人数泊まれるわけもないので、アカリは桜花の家に。
カノとヒルコちゃんとテラスちゃんは私の家に泊まることになった。
―――
で、夏休みになって早速日本に戻ってきたんだけど。
なんなんですかね、この甘々な空間は。
カノは相変わらず私の部屋だというのにヒルコちゃんに膝枕されながらなんか私の同人誌読んでるし。
アカリと桜花も朝っぱらから私の部屋にやってきて二人して私の同人誌イチャイチャいながら読んでいる。
テラスちゃんは半ばそんな光景に呆れながらテレビを食いつくように見ているのだった。
「アカリ、桜花。イチャイチャするんなら他所でやってよ」
「い、イチャイチャなんてしてないよ!私は陽花がどんな同人誌読んでるのかなーって気になってみてるだけだし!」
「私は桜花が見てるの、眺めてるのが楽しいだけだよ!」
だからそれがイチャイチャしてるんだってば。
そもそもその桜花が読んでる本、十八禁本じゃない。
あ、でもこの前アカリは十八になったから良いのか。
「なんというか。とても居づらい空間じゃな」
「そうだね……」
二人でテレビアニメを見ながらそう呟く私とテラスちゃん。
私達の後ろでは相変わらずバカップル二人組がいちゃこらやっている。
はぁ……もう私もテラスちゃんに手出しちゃおうかなー。
手ーだしちゃうぞー……。
「陽花よ。お前私に抱きついたらどうなるか、わかったうえで抱きつけよ?」
「あ……はい、わかっております……」
雰囲気に飲まれそうになっていた私は思いっきりどでかい釘を刺されてしまった。
さすがテラスちゃんというべきか。
「まぁ、少しくらいなら構わぬがな」
そう言って私の足の上に腰かけてくるテラスちゃん。
「これで抱きしめたら……わかっておるだろうな?」
くっくっくと含み笑いをしながら私を見上げて声をかけてくる。
あ、はい。
ここで抱きしめたら反省室行確定ってことですよねー……。
あああああ……でもなにこの天国。
テラスちゃんの温もりがテラスちゃんの背中から伝わってくるーーーーー。
その日、私はこのことで頭一杯になりどんなアニメを見ていたのかすらさっぱり頭に入ってこなかったのだった。




