二人目の暴発者
一学期の授業が始まったその日。
「はぁ?テラスはんのカムイが暴発した?」
桜花が生徒会室にもたらした話は、私達にとって驚愕の話だった。
「うん。蛍火の光がバチンって」
「まじでか……」
この世界の人間じゃない私ならともかく。
皇帝陛下であるテラスちゃんがそんなことになるなんて。
「桜花は成功したんだ?」
「うん。私はちゃんと成功したよ」
「で、テラスちゃんは今どこにいるの?」
「テラスちゃんは、今、キクリ先生に呼ばれて補習してるとこ」
担任の先生じゃないキクリ先生が呼ばれるってことは私の事があったからだろうなぁ。
てことは、そのうち私と月依も呼ばれそうな気がする。
とか考えていると。
「陽花ちゃん、月依ちゃん。ちょっと良いかしら?」
キクリ先生からお呼びがかかる私達二人。
訓練室に行くと沈んだ顔のテラスちゃんの姿があった。
「とりあえず、テラスちゃんと陽花ちゃん。二人とも蛍火を使ってみて?」
「はい」
「うむ……」
私達はキクリ先生の言葉に応え、小さな光を思い浮かべて、カードに力を流し込んでいきカードは淡く白色に輝き、蛍火の光が現れる。
そして直後に私達二人の蛍火はバチンっという音を立ててはじけ飛んだ。
「全く同じ現象ね……」
「ですねぇ……」
「じゃあ、もう一個試したいのは……」
そう言って月依をみるキクリ先生。
「はい。私のカードですね」
「ん?どういうことだ、キクリ?」
「まぁいいですから。とりあえずものは試しというやつです」
言いながらキクリ先生はテラスちゃんに月依のカードを手渡す。
「月依ちゃんのカードでもう一度、蛍火を使ってみてちょうだい、テラスちゃん」
テラスちゃんは怪訝な顔をしながらも、カードに力を流し込んでいくと、カードは強く白色に輝き蛍火の光が現れた。
やはり普通の数倍の明るさで。
「ど、どういうことだ、これは?」
自分が出した蛍火の光を信じられないという瞳で見つめるテラスちゃん。
「やっぱりそういう事なのね……」
「ですねぇ……」
「ほんと、どういうことなんでしょうね、これ」
私達三人もテラスちゃんの出した蛍火を眺めながらぼんやりと呟く。
「私にはどういうことか、さっぱりわからぬぞ。ちゃんと説明せいキクリ」
「つまりですね、こういうことです」
キクリ先生は私に月依のカードを手渡してくれる。
ので、私も月依のカードに力を流し込んでいくと、カードは強く白色に輝き蛍火の光が現れた。
テラスちゃんと同じく普通の数倍の明るさで。
「な……。陽花!おまえカムイを暴発しないで使えたのか?」
「月依のカード限定で、だけどね」
「ふむむ……。つまり私も陽花と同じだと。そう言いたいのか、キクリよ」
「そういうことになりますね。原理はさっぱり意味不明なんですが」
言いながらため息をつくキクリ先生。
「もうこれ、さすがに私の手には負えないわねぇ……」
「まぁ……そうですよね」
「まさか二年連続でこんな事例に遭遇することになるとは思いもよらなかったわ」
とりあえずテラスちゃんの話は後日、上層部に話をするという事でお開きとなった。
ただ、私達二人が月依のカードを使えるというのは伏せるという事で。
その話はどうしても上にあげれない事情があるらしい。
どういう結論になる事やら、今からちょっと内心ビクビクものだ。
―――
「で、結局、テラスはんも月依のカードつかえたんかいな」
「そそ。私とおんなじ。ホント、カムイのサーバどっかぶっ壊れてんじゃないのかなぁ」
毎度ながら日本風定食をパクつく私達。
今日もあんまり人に聞かれたくない話をしているので隣り合って座っている。
「せやなぁ……結構長い事つこうとるみたいやし、どっかバグってんのかもなー」
とはいえカムイのライセンスサーバーはこの世界では絶対的な存在なハズな訳で。
私とテラスちゃんの事例以外は完全に正常稼働してるハズなんだよね。
あ、そういえばテラスちゃんと言えば聞こう聞こうと思ってすっかり忘れてたことが有ったんだ。
「ねぇヒルコちゃん」
「なんやの改まって」
「ずっと聞きたかったんだけど。なんで、テラスちゃんが皇帝陛下やってるの」
「……そないなことも知らんかったんかいな」
「いやだって、私、授業免除されてるし……。テラスちゃんに聞くのもアレかなぁって」
「それにしたって知らなすぎやで、まったく……」
呆れたといった感じでため息をつきながら答えてくれるヒルコちゃん。
「テラスはんの御両親はカムイの暴発事故でもう亡くなっとんねん」
「……そうなんだ」
「で、皇族直系はテラスはんしかおらへん。傍系に成人しとる男子もおるにはおったんやけど、ここは直系のテラスはんが優先されたってこっちゃね」
「そっかー……」
テラスちゃん、家族いないんだ。
それなのにあんなに強気に生きてるんだから健気だなぁ……。
今度会ったら抱きしめてあげよう。
そうしよう。
超嫌がられるかもしれないけど。
「でな。ここからがキナ臭い話なんやけど、御両親は実は暗殺されたんやないかって噂もあんねん」
「え゛……まじで」
「まじまじ。移動中のカムイの暴発事故にしちゃ、ちょっと状況が不自然やったらしいで」
「そうなんだ……」
そうか。
だからここのところその一族内の不穏な事情を那直兄さんは調査してるのか。
危なくないのかなぁ……。
ちょっと心配だなぁ……。
でもなんで日本の高千穂がそんなこと調べてるんだろう。
それはそれで謎だなぁ……。
「陽花はん、なんかうちらに隠しとることあるやろ」
う……。
おもいっきし表情を読まれた。
「こ、これはヒルコちゃんといえど話せない事情があってですね!」
「まぁそれならそれでかまへんけどなー」
「ごめんね、これは社外秘事項なんだ。こればっかりは絶対に話せなくて」
「ならしゃあないなー。話せる時が来たら教えてなー」
そう言ってヒルコちゃんはニカっといつもの笑いを浮かべるのだった。




