帰ってきた学園生活
学園寮に引っ越してからあっという間に四日が過ぎた。
その間、私は何をしていたかというと。
月依とサクヤちゃんに学園寮の規則を教えてもらったり。
学園生活を送る上でのとりあえずの基礎知識を教えてもらったり。
学園の中の案内も事前にしてもらったり。
タカマガハラの街を少し案内してもらったり。
後は、学園生活の準備のために制服やら教科書を取りに高千穂のタカマガハラ課に出社したり。
それに、こっちの料理についてもある程度、月依に教えてもらったりした。
思い出すだけでも目が回るような四日間だった。
そして四月六日の朝。
ついに学園に登校する朝がやってきた。
ちょっと洒落た制服に袖を通し、同じ制服に身を包んだ月依と私を見比べる。
うん。全然似合ってないなぁ……私。
というか、ただですら似合ってないのに、
この頭のヘッドセットと眼鏡のせいで野暮ったさが際立ってる。
それに比べて我が妹の着こなしっぷりはなんなんだろう。
すごく、すごく、すごーく、可愛いです。
そして学園寮の入口で待っていた制服姿に身を包んだサクヤちゃんもとっても可愛らしかった。
ていうか、サクヤちゃん普通にお胸あるんだなぁ。和服だと分からなかった。
はぁ……。
そんな内心重たい気分の中、月依やサクヤちゃんと一緒に登校する。
事前に案内してもらっていたので玄関で二人と別れて職員室に向かう。
そして職員室で黄色い長い髪を後ろで纏めた若い女の先生を紹介される。
お胸も大きくてとっても大人っぽい雰囲気の女性だ。
彼女の名前はキクリ=ハクサン。
私のクラスの担任の先生とのことだ。
歳はいくつ位なんだろう。まだ二十代前半ぽい雰囲気だけど。
「高千穂から来ました。霧島陽花です。よろしくお願いします」
私も先生に自己紹介をする。
「こちらこそよろしくね、陽花ちゃん。私の事はキクリ先生って呼んでくれていいから」
ハクサン先生っていうのはちょっと堅苦しくてねとクスリと笑う。
「月依ちゃんのお姉さんなんですってね。期待してるわよー、陽花お姉ちゃん」
そうキクリ先生はイタズラっぽく笑う。
あ、これ私の事、知ってて言ってる笑顔だ。
「あはは……お手柔らかにお願いします。私ホントあんまりできよくないんで……」
私は正直に自分の成績がよくないことを申告する。
「ふふ。わかってますよ。それじゃあ、クラスに向かいましょうか」
「わかりました」
キクリ先生に連れられてクラスへと向かう最中、色々今の日本の事について聞かれた。
特に今流行っているの漫画とかアニメとか。
それにはちょっと驚いた。
まさか、こんな異世界でオタク文化について聞かれるとは思わなかったし。
なんでもキクリ先生は一時期日本に来ていたことがあるらしい。
その時、見た漫画やアニメにカルチャーショックを受けたらしく、
折を見ては日本から人気の漫画やアニメの円盤を購入しているのだそうだ。
「最近、とっても人気のある映画があって、私、人生で初めて三回も映画館に見に行っちゃたんですよ。入場者特典とかも全然なかったんですけどね」
「あ、それ知ってる知ってる。去年すごく流行ったっていう映画でしょ?私も見に行きたかったんだけど、どうしても許可が下りなくてねぇ。見に行きたかったんだけどなー。まだその映画の円盤発売されてないのよねー」
「そうなんですよー。早く発売してほしいですよね」
なんかとっても親近感がわく先生だなぁ。
こんなに同じ趣味で語り合える人って日本でもあんまりいなかったし。
キクリ先生も私と同じ思いだったのか、
「なんだか陽花ちゃんとはとても仲良くできそうね」
と言ってふふっと微笑んでいた。
「でも私の今の個人的なマイブームはですねー、植物を擬人化したゲームで……」
そんなオタ話をしているうちにクラスに辿り着いたらしく、ふっと真面目な顔になるキクリ先生。
「と……積もる話はあるけど、今日のところはここまで。ここがあなたが今日から勉強する教室よ、陽花ちゃん」
「弐年漆組ですか」
「そう。ようこそ、私のクラスへ。これからも仲良くしましょうね」
「はい」
そしてキクリ先生は教室のドアを教室へと入っていく。
私もそれに続いて教室に入る。
階段状になった教室を見渡すと色とりどりの髪の色をした生徒達の姿。
その光景に、あー、ここはやっぱり日本じゃないんだなぁと思い知らされる。
よく見ると一番後ろの方の席で月依とサクヤちゃんが並んで小さく手を振っている。
「みなさん、おはようございます。今日は新しい転入生がいます」
それじゃ、どうぞとキクリ先生に促される。
「は、はじめまして、霧島陽花って言います。
日本の有限会社高千穂からカムイのライセンスを取るために入学させてもらいました。
こちらの世界のことは右も左もよく分からないですが、仲良くしていただけると嬉しいです。
私の事は気軽に陽花って呼んでください」
パチパチパチパチ。
無難な自己紹介でもそれなりに上手くいったことにホッと小さな胸をなでおろす。
そんな無難な自己紹介に続けて、
「知ってる人もいるかもしれないけど、陽花ちゃんは月依ちゃんのお姉さんです。仲良くしてあげてくださいね」
キクリ先生がそんな言葉を付け加える。
その言葉を受けてか教室が一瞬ザワつき好奇の視線に晒される。
あうう……なんか超気まずいなぁ。
私は妹みたいにできた人間じゃないですから。
中の下のただの凡人ですから。
そんな目で私を見ないでくださいいいいい……。
「それじゃ陽花ちゃんは、そうですね。ヒルコちゃんの隣の席で良いかしら。月依ちゃんの席も隣だしそこがいいでしょ」
「はいな、わかりました」
そう言ってピンク髪のショートボブの少女が立ち上がる。
背は私より少し小さい位なのにお胸はちょっと大きい。
う、羨ましくなんてないんだからね!
「お姉ちゃん、こっちやで」
そう言って私を手招きしてくれる関西弁?か京都弁?の少女。
タカマガハラ語でも関西弁に変換されるってなんだか変な感じだなぁ。
そう思いながら、私は彼女の手招きにつられて階段を上りヒルコちゃんの隣の席に座る。
「ウチの名前はヒルコ=イクタ。これからよろしゅうな、お姉ちゃん」
「私の事は陽花でいいよ、ヒルコちゃん」
「アハハ、せやな。同級生やしな。ほな陽花はんって呼ばせてもらうわ。これからよろしゅうな」
「うん。こちらこそよろしくね」
こうして私の学園生活は始まりを告げるのだった。
数字を漢数字に変更しました。
それだけですorz
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9月20日追記
サクヤは意外と着やせしているということが判明。
キクリ先生の登場時の描写をちょっと変更しました。
お胸が大きい大人の雰囲気の女性です。
ヒルコは背は陽花より少し小さいくらいですが、
ちょっと胸は大きめの女の子です。
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