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神々の世界で学園生活~ライセンスゼロの私が世界最強!?~  作者: 牛
1章 異世界生活は、突然に。
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ふぁーすとこんたくと


部屋に着き、持ってきた荷物を一通り整理し終わり、二段ベッドの一階で月依(つくよ)にこの一年間の事を色々問いただそうとした時。

コンコンと控えめな音でドアがノックされると共に、



月依(つくよ)ちゃん、いらっしゃいますか?」



と、これまた控えめな声でドアの外から声をかけられる。



「はいはーい。今開けるね」



声の主は月依(つくよ)の知り合いだったのか、月依(つくよ)はそう言いながら軽い足取りでドアの方へと向かう。

施錠を外しドアを開けた先には、緑色の髪を横で結った和服の少女が落ち着いた佇まいで立っていた。

背は私達より十センチ位小さいかな。和服がとてもよく似合う清楚な雰囲気の女の子だった。



「新しいルームメイトの方がいらっしゃったということですので、ご挨拶に伺いました」



月依(つくよ)の後について部屋に入ってきた彼女はそう言ってペコリと会釈をする。

あ、こういう作法は日本と同じなんだなぁ。



「この子はクラスメイトのサクヤちゃん。転入した時から仲良くしてもらってるんだよ」

「はじめまして、(わたくし)、サクヤ=アサマと申します」



うわ……なんかすごい。良家のお嬢様って感じだ。

異世界の人って皆こんな感じなのかな。

そして、ちゃんと異世界語がほぼ同時進行で翻訳されてる。

つくづくすごい機械だなぁ、このヘッドセット。



「は、はじめまして、私は陽花(ひはな)です。月依(つくよ)の姉をやらせてもらってます」



とりあえず、ちゃんと翻訳されてるのか分からないけれど日本語で挨拶をしてみる私。



「ぇ…??お二人は本当の姉妹じゃないんですか?」



私の言葉が通じてるのか微妙な反応が返ってきた。



「アハハ、やだなぁお姉ちゃん、日本語おかしいから」



う……確かに言い方がおかしかったかも。

でも異世界語に翻訳されてるのに日本語がおかしいっていうのも変な話だなぁ。



「ってそういえば月依(つくよ)はヘッドセットつけてないけど何で言葉通じてるの!?」

月依(つくよ)ちゃんってすごいんですよ、お姉さん。タカマガハラの事なんてほとんど知らなかったはずなのに、この半年で言葉も覚えて成績は今じゃトップクラスなんですよ」



え゛。



「へ、へ~……そうなんだ」



そう乾いた声で言いながら、妹の方をみると月依(つくよ)は照れ臭そうにえへへと笑っている。

そういやこの子、ヘッドセットだけじゃなくて眼鏡も付けてないじゃない。

日本でも才色兼備の優等生だったていうのに、こっちの世界でも優等生って。

私の妹はいったいどんなスペックをしているんだろうか。



月依(つくよ)、あんたすごいよね……」

「いやー……これぐらいきっとお姉ちゃんにもすぐできるようになるよ」

「いやいや……私は普通の並以下の人間だから。到底無理だから」



英語すら片言でしか話せないお姉ちゃんですよ。

半年足らずで異世界語マスターとか絶対できませんから。



「とりあえずサクヤちゃんも適当にその辺に座ってよ」



そう言って月依(つくよ)は机の椅子に腰掛ける。



「そうですね。それじゃ失礼させていただきますね」



サクヤちゃんもそれにならって優雅なしぐさで床に正座する。



「こっちの世界でも正座ってあるんだねぇ」



私の言葉にキョトンとした顔をするサクヤちゃん。



「お姉ちゃん、タカマガハラの作法って基本的に日本と変わんないんだよ」

「そうなんだ」

「いちいちこういう事で驚いてたらきりがないよ、お姉ちゃん」

「ハハハ……それもそうだね」



本当におっしゃる通りでございます。

これからこの異世界でくらしていくんだもんね。

きっと驚く事の連続なんだろうな。



「お姉さんは、まだこちらに来られて間もないんですからしょうがないですよ」



そんな私をフォローしてくれるサクヤちゃん。

あー…良い子だなぁ、サクヤちゃん。



「ま、それもそっか。私もこっちに来た時は結構新鮮だったしねー」

「こちらに来たばかりの頃の月依(つくよ)ちゃんも、今のお姉さんみたいに何にでも反応して面白かったですよ」



当時の事を思い出したのかクスリと微笑むサクヤちゃん。



「ちょ、それは言わないでよ、もう」



月依(つくよ)言ってほしくないことを言われたとばかりにぷくりと頬を膨らませる。



「なんだ、月依(つくよ)も私と一緒だったんじゃない」

「恥ずかしいから知られたくなかったのにー……」



そんな私達のやり取りを見てクスクスと笑いだすサクヤちゃん。



「どうしたの?サクヤちゃん」



なんか変なことでも言ったかな私。

それともなんかやっちゃった?



「いえ、本当に仲の良い姉妹なんですね、と」

「そうかな」



まぁ世間一般の姉妹並みには仲は良いとは思う。

家族で暮らしてた時も一緒によく遊んだし。

お風呂もよく二人で入ったりしたっけ。



「そうですよ。(わたくし)には兄と弟がいるんですが、こんなに仲良く話したりは致しませんから…」

「まぁ異性の兄妹だとそうかもしれないね」



あれ……。

でも、那直兄さんは私達とよく遊んでくれたなぁ……。

まぁそれは人それぞれだし、それはそれなんだろうな。



「それじゃあ、サクヤちゃん、これからはお姉ちゃんのこと、本当のお姉ちゃんだと思って良いから」

「え゛!?」



な……いきなり何を言いだしてんの、この妹は。



「まぁ。お姉さんがよろしければ、それでお願いしてもよろしいですか?」



そう言ってキラキラした瞳で私を見つめてくるサクヤちゃん。

うう……そんな目で見られたら断れないよー。



「私なんかでよければ……」



そう言いかけたところで、



「冗談ですよ、お姉さん。お姉さんは月依(つくよ)ちゃんの大切なお姉さんなのですからね」



とクスリとサクヤちゃんがイタズラっぽく笑う。



「ちょ、サクヤちゃん」



サクヤちゃんの言葉に顔を真っ赤にして慌てる月依(つくよ)



「??」

「それはそうと、お姉さんのことは、陽花(ひはな)さんとお呼びしてもよろしいですか?」

「うん。私もその方が気楽でいいかな。これからよろしくね、サクヤちゃん」

「はい、こちらこそよろしくお願い致します、陽花(ひはな)さん」



そう言って微笑みかける彼女の笑顔はとんでもなく可愛らしかった。

……義妹にしそこねて損した気分だ、なんて本当の妹の前では口が裂けても言えない。


それから私達三人は、タカマガハラの文化や作法について簡単に話をした。

タカマガハラの文化は見た目こそ今の日本より発達してるように見えるけど、科学技術以外は基本的にあまり変わらないらしい。

作法なんかもそうだ。

基本的にはほぼ全てが日本式。

タカマガハラが担当している国が日本だから、

できるだけ日本と文化や作法がかけ離れてしまわないようにしているのだとか。


後、この異世界の事についても詳しく教えてもらった。

この世界にはタカマガハラのほかにもホウライとか、コンロンとか、アガルタとか、オリュンポスとか、他にも大小様々な国々があるらしい。

そしてそれらの国々は私たちの世界にそれぞれ少なからず干渉しているのだそうだ。

世の中って知らないうちに異世界に干渉されまくってたんだなぁ。

まぁ昔話や伝説なんて不思議な話ばかりだし、昔からそうだったんだろうなぁ。


そんな話をしているうちに夕食の時間になり、三人で食堂へとやってきた。

食堂は割とよくある学生食堂っていう感じで、食券を買ってそれを手渡す方式だった。

とりあえずどれにしようかなと券売機に目を通すけど、見たことない料理の名前が並んでいた。

この眼鏡、タカマガハラ語を翻訳できるっていっても、さすがに料理の名前までは完全に翻訳できないようだ。

なんとなく雰囲気は分かるけど材料が何なのかよく分からないので怖くて注文できない。

しょうがないので唯一理解できた日本風定食セットを頼むことにする。

これなら日本の食べ物が出てくるから間違いはないだろうし。



「お姉ちゃん、日本風定食セットなんだね」

「まともに読めるのこれしかないし、無難かなーって」

「それもそっか。今度ちゃんと教えるよ。じゃー私はこれにしよっかな」



そう言いながら月依(つくよ)は桜花揚げのセットなるものの券を購入する。



(わたくし)は、これにしますね」



そう言ってサクヤちゃんは浅間煮定食を購入した。

そして私たちは券を持って食事を受け取る場所に向かう。



「あら月依(つくよ)ちゃん、今日は珍しく三人なのね」



給仕のおばさんに券を渡して待っている間、おばさんにそう声をかけられる月依(つくよ)



「はい。今日から私のルームメイトになったお姉ちゃんです」

「あ、初めまして。月依(つくよ)の姉の陽花(ひはな)です。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくね。それにしても姉妹なのに随分雰囲気違うんだねぇ」

「あはは……。よくそう言われます……」

「はい、どうぞ」



そういっておばさんは料理をそれぞれに手渡してくれる。



「ありがとうございます」

「これからも御贔屓にー」



おばさんと別れた後、三人で座れる席を探す。

まだ夕食時には早いのか、食堂は人はまばらで楽に席を確保することができた。



「それじゃ、いただきます」

「いただきまーす」

「いただきます」



サクヤちゃんは目をつぶり律義に手を合わせてそう言う。

ホント、お嬢様だなぁー。

そう思いながらとりあえず目の前の日本風定食セットの鮭?らしきものに手をつける私。

うん。美味しい。



「ちゃんと鮭の味がする」



ぽつりとそう漏らす私。



「そりゃそうだよ。正真正銘、鮭だもん」



呆れ顔で月依(つくよ)がそう答える。



「こっちでも鮭ってとれるんだ?」

「ちがうよ、日本から持ってきてるの」

「あ、そうなんだ」

「日本風定食セットの材料は基本的に全部日本産だよ。だから慣れないうちはそれがいいかもねー」



「そっか。じゃ、そうしようかな」

「まぁこっちの世界の食事もそんな日本のものとは大差ないんだけどね」



唐揚げ?ぽいものを頬張りながら言う月依(つくよ)



「この桜花揚げなんて唐揚げっぽいのに脂っこくなくて桜の香りがして絶品なんだよ」

「へー」



そこまで言うなら、今度チャレンジしてみようかな。

私達がそんな話をしている間にサクヤちゃんは黙々と箸を進めている。



「サクヤちゃん、その浅間煮って美味しい?」



なんとはなしにサクヤちゃんに問いかける。



「……」



無言で箸を進めるサクヤちゃん。

あれ。私無視されてる?



「あー。サクヤちゃんは、食事中はお喋りしないように躾けられてるから話しかけても無駄だよ」

「そうなんだ」



ホント、徹底的にお嬢様してるなー。

実家は良いところのお嬢様なんだろうな……。



「私達も、無駄話してないで食べよっか」



そう言って私は白米に手をつける。



「そうだね」



月依(つくよ)も再び桜花揚げを本当に美味しそうに頬張るのだった。


食事を終えた私達は部屋の前でサクヤちゃんと別れ、部屋でくつろいでいた。



「そういえばそろそろお風呂の時間だけど、どうする?」

「お風呂って共用なの?」

「共用の露天風呂もあるし、この部屋にもシャワールームあるよ」



共用の露天風呂にそれぞれの部屋にシャワールーム……。

なんかすごいなぁ、この学園寮。

ほんと私みたいな一般人にはもったいない位の施設だ。



「んー……今日は色々あって疲れたし、シャワーでいいかな」

「えー……一緒に露天風呂いこうよー」



そう言って駄々をこねる妹。



「今度ね、今度」

「ちぇ。じゃあ一緒にシャワーにしよ」

「それも却下」



もう子供じゃないんだから。と私はそう付け加える。



「それもそうだね……」



そう言う月依(つくよ)の顔はどこか少し寂しげだった。


物語中に出てくるヘッドセットですが、最近日本でも似たようなのが開発中みたいですね。

なんでも話した言葉を自動で翻訳して機械音声に変換してくれるのだとか。

全然知りませんでした。

言葉をかざせば変換してくれるアプリなんてのもあるのは知ってたんですが……。

科学技術の進歩って早いですね……(´・ω・`)

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追記。

数字を漢数字に変更しました。

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9月20日追記

サクヤの登場時の描写追記

背は私達より少し小さい位かな。和服がとてもよく似合う清楚な雰囲気の女の子です。

(和服が似合う=胸はそんなにあるように見えません)

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11月3日追記

サクヤちゃんの背も十センチ位低めに変更しました。

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