あみゅうずめんと
私達三人の目の前には見上げる位、大きな建物がそびえたっていた。
ここは日本でいうアミューズメント施設だ。
タカマガハラの施設は何にしてもスケールが大きい。
タカマガハラのアミューズメント施設にもクレーンゲーム機やら、アーケードゲームが置いてあるフロアがあるのだとか。
日本にはないところでは釣りみたいなことができるフロアがあったり、ランニングコースでタイムを競うフロアがあったり、サバイバルゲームみたいなことができるフロアがあったり、はてはカムイ疑似体験フロアなるものも存在するのだそうな。
とまぁ、そんな色んなものが入ってるらしい。
「どこにしようか」
建物のエレベーターホールでどのフロアに行こうか話し合う私達。
「とりあえずクレーンゲームにでもいかへん?ウチ、欲しいもんがあるねん」
因みに今のヒルコちゃんの恰好は、Tシャツに膝が見えるパンツルックで
とても動きやすそうな姿だ。
「別にいいけどね」
月依はまたかというような顔をして言う。
「私もそれでいいよ」
私もヒルコちゃんの提案に同意する。
そしてクレーンゲームのフロアに向かう私達。
そこには様々なクレーンゲームが並んでいた。
「結構いろいろあるんだねぇ」
「うん。フロアにおいてあるの全部クレーンゲームだよ」
「へー……」
建物自体結構な広さがあるから結構な数のクレーンゲームがありそうだ。
「ほな、こっちこっち」
そう言って先を進むヒルコちゃん。
どうやらお目当てのものの場所は分かってるらしい。
「あら、先客がおる」
視線の先にはクレーンゲームに夢中になっているスーツ姿の女性の姿。
キクリ先生だった。
「ああもう。このアームゆるすぎるんじゃないの!」
そうブツブツぼやいている。
「何してはるんですか、キクリせーんせ」
こっそり気付かれないように背後に忍び寄り、ヒルコちゃんは声をかける。
「あら、こんにちは、三人とも。あははは……」
いかにも、まずいとこを見られたと言う表情だった。
「陽花ちゃんは高千穂の帰り?」
「はい、今朝報告しに行ってきたところです」
「制服だとそう見えないけどスーツ姿だとちゃんと社会人してるのね」
私の姿を見て、ふふっと先生は微笑む。
「それはそうと、先生も狙ってはったんですね、これ」
ヒルコちゃんがクレーンゲームの筐体の中身を吟味しながら言う。
「そうなのよ。でも全っ然っとれなくてねぇ」
恨めしそうにアームを見つめるキクリ先生。
「それなら私がとりましょうか?」
そう月依が名乗りをあげる。
「そうねぇ、それならお願いしようかしら」
先生はそう言ってクレーンゲームの支払機に支払カードをかざす。
「それじゃ、どの子が欲しいんですか?」
「この緑のまるっこい子が欲しいのよ」
先生が指さした先には、何個かのぬいぐるみに埋もれるように鎮座する緑のまるっこいぬいぐるみ。
「んー……それだと、ちょっと難しいですね。
何回かに分けて取らないといけないかも。良いですか?」
「構わないわよ。もうかれこれ二十四回チャレンジしてるけど取れないんだもの」
二十四回……。私だったら諦めてるなぁそれ。
「分かりました。まぁ後六回もあればいけるかな」
そう言いながらカチャカチャっとクレーンを動かす月依。
そして、まず先生が欲しがっている子に微妙に重なっている子を釣り上げて開口部へ。
おー……すごい。
こんな簡単にぬいぐるみ取るの初めて見た。
「私が欲しいの、この子じゃないんだけど」
少し悲しそうな声で非難するキクリ先生。
「分かってますって。とりあえず、この子はヒルコが持ってて」
「ほいほい」
そうして再びクレーンを動かす月依。
今度は先生の欲しがってる子の隣の子を吊り上げ再び開口部へ。
「はい、ヒルコ」
「ほいほい」
まるで小慣れた流れ作業の様だ。
そうして同じことを繰り返すこと三回。
先生の欲しがってた子はかなり取りやすい位置取りになった。
「それじゃ、取りますよ」
そう宣言しクレーンを緑のまるっこい子に近づけて見事に釣り上げる。
「はい、先生どうぞ」
そう言って開口部から緑のまるっこい子を取り出し、月依は先生に手渡した。
「月依ちゃん、ありがとおおおおおおお」
半分涙ぐみながら先生はその子を受け取る。
……先生、本当に欲しかったんだなぁ、その子。
「他のこの子らはどないします?せんせ」
手に持った五個のぬいぐるみを見せながら、そうヒルコちゃんは言う。
「せっかく月依ちゃんに取ってもらったんだから、あなた達にあげるわ。私はこの子だけで十分だし」
「さっすがせんせ、おおきに」
「それじゃ、私は帰るわね。本当にありがとうね、月依ちゃん」
「こちらこそ、ありがとうございます」
それじゃまた月曜日にね、と言って去って行くキクリ先生の姿は本当に嬉しそうだった。
「で、それ、どうすんの?ヒルコ」
「へへ……。実はこの子、ウチが欲しかったやつやねん」
「そんなことだろうと思った」
ため息を付きながら月依はそう言う。
「他の四個はいらへんから、月依にあげるで」
「んー…そうだね。私とお姉ちゃんと、あとはサクヤちゃんとテラスちゃんにあげればちょうどだし。もらっとこうかな」
「いやーしかしラッキーやったなぁ」
「そもそも初めから私にとらせるつもりでここに来たんでしょ、ヒルコ」
「ははは。バレとったか」
「そりゃあね。じゃあヒルコの用も済んだことだし、次は何しようか」
「せやなぁ。何か陽花はんの行きたいとこにでもいこか」
「うーん……それじゃカムイ疑似体験フロアとかいってみたいかな」
「陽花はんも真面目やなぁ」
そう言ってヒルコちゃんは苦笑するのだった。
カムイ疑似体験フロアに来ると親子連れらしき人達の姿がちらほらと。
「タカマガハラの人間は、小さい頃からここでカムイの疑似体験しとんねん」
「なるほど」
「そういう意味じゃ、お姉ちゃんにはちょうどいい場所かもね」
「せやなぁ。確かにちょうどええかも知れんね」
受付をすると、店員さんから三人それぞれに疑似カムイ用のカードを手渡される。
「一ルーム三名様ですね。お時間はどうしますか?」
「とりあえず、三時間でいいかな」
「せやな。そうしよか」
「うん、じゃあそれで」
「かしこまりました。それでは漆拾弐ルームをお使いください」
「ありがとうございます。それじゃ、行こっか」
ルームキーとリモコンみたいなものを月依は受け取って、
案内された部屋に向かって歩を進める。
「ほいほい」
「うん」
私達もそれに続く。
案内された部屋は、カラオケボックスにあるような機械とディスプレイが置いてある
ちょっと広めの部屋だった。
カムイの疑似体験の仕組みは、まずリモコンで使いたいカムイを入力した後、
ディスプレイに表示される案内に従って、疑似カムイ用のカードに力を籠めるだけ。
そうすると部屋とカードにあらかじめ仕掛けられている機能が稼働して
カムイを疑似体験できる、ということらしい。
カラオケボックスでカラオケするみたいな感じっぽいのかな。
「それじゃ陽花はん、いってみよか」
「うん。じゃあ月依、蛍火でお願い」
「はいはい」
「謙虚やなぁ、陽花はん。もっと派手なカムイにすりゃええのに」
ヒルコちゃんは苦笑する。
「まぁお姉ちゃんらしくて良いんじゃない」
月依もリモコンを操作しながら苦笑していた。
だってさー……一回ぐらい成功させたいじゃない。
一ヵ月やっても失敗ばっかりだったんだし。
そんな訳で私は蛍火をイメージしながら、疑似カムイ用のカードに力を籠める。
そうすると部屋とカードが淡くひかり、蛍火の光が現れる。
バチンと音を立てて弾けたりしない正真正銘の蛍火の光だ。
おー……ちゃんとできた。
ちょっと感動してしまった。
「どうだった、お姉ちゃん?」
「うん。ちょっと感動しちゃった」
「そら良かった。じゃ、次はウチが行くで」
「はいはい。何にするのヒルコは」
「ほな、水流で」
「了解。って結局、ヒルコも似たようなもんじゃない」
「ウチの家系、水系苦手やから、絶対仮申請とおらへんのやもん。せめて体験ぐらいしたいやん」
「まぁ、その気持ちは分からないでもないけどね」
こんな感じで私達三人は三時間、カムイの疑似体験で遊びたおした。
カムイをこんなに自由自在に使えるって素晴らしい。
疑似だけどね。




