真相
私達は皇照宮を駆けていた。
何処をどう駆けたか分からない。
どうやら皇照宮のあちこちに岩竜が現れたらしく大混乱に陥っていた。
それでも何とか応接室へと辿り着いたけれど、もぬけの殻だった。
そりゃそうだよね。
こんな事態なのにテラスちゃんが応接室へとやってこれるはずがない。
しょうがないので月依に探人のカムイでテラスちゃんを探してもらった。
「ここから先に行った大きな建物の奥にいるみたい」
「うん。じゃあ急ごう」
そう言って私達は駆けだす。
そして。
「見つけた!」
「テラスちゃん!!」
大きな建物の部屋の奥、SPの人、二人に囲まれ、警備の人に指示を出しているテラスちゃんを見つけた。
「な……陽花に月依か!何でこんなところに」
「それよりも危ないの、テラスちゃん。命狙われてるって」
「ああ……今絶賛、岩竜どもが暴れている最中だな……」
言いながらため息をつくテラスちゃん。
「しかしそれも時期に収まるであろう。キクリが学園に救援要請を出していてくれたおかげで早くカタが付きそうだ」
「そっか……よかった……」
その言葉にホッと胸を撫でおろす私達。
「恐れながら陛下……この者たちは?」
「ああ……私の友人だ。気にしなくてよい」
「左様でございますか」
あ。そうか、勢いでここまで来ちゃったけど、私達思いっきり不審人物じゃん。
「それにしてもこの皇照宮に岩竜を呼び出すとは。とんだ不届き者だな」
「それなんだけど、どうもこの皇照宮内に内通者がいるみたいだって」
「まぁ……そうであろうな。でなければこんな大規模に事を起こすことはできぬであろう」
「うん。だから那直兄さんと柚木先輩で途中まで一緒に来たんだけど、岩竜に遭遇しちゃって……」
「む……それで大丈夫なのか、あの二人は」
「たぶん大丈夫じゃないかな。お兄ちゃんたちなんか楽しそうに会話してたし」
「ははは。こんな事態だというのに楽しそうとは、異世界人も変わったやつが多いな」
ホント、そうかもしれない。
別れ際の二人の顔は本当に楽しそうだった。
きっとあの感じだと。
あの二人は言葉にしないけどお互い心から通じ合ってるんだろうな。
ちょっと羨ましいな……。
「それよりも私達も一緒に警備させてもらって良いかな。また何が起こるか分からないし」
「ああ。陽花と月依がいてくれると心強い」
「ですが、陛下……」
「私が良いと言っているんだから良いのだ。許容してくれ」
「はい……」
SPの人もいきなりやってきた女の子のほうが心強いって言われてプライドも傷つくよね。
ちょっと申し訳ない気分になってくる。
でもここはテラスちゃんを守るためだ、許容してもらわないと。
―――
一時間くらいだろうか。
皇照宮中を轟音が鳴り響いていた。
それもだいぶ沈静化してきた頃、巨漢の男の人がテラスちゃんの前へとやって来た。
確か……タケハヤ様だっけ。
「テラス陛下、御無事で何よりでございます」
「ああ、タケハヤ。お前も無事で何よりだ。で、どうしたのだ。まだ岩竜どもが暴れているからどこか安全な所に居た方がよいぞ」
「その事で参った次第にございます」
そう言ってタケハヤ様は懐に手をやり一つの小箱を取り出す。
あ……あれは。
「テラスちゃん、皆逃げて!!」
私の言葉にSPの人達は反応し、テラスちゃんを抱えてタケハヤ様から距離を取る。
「チッ……」
舌打ちしながらタケハヤ様はその小箱……召喚機を開封する。
と同時にドシンと大きな音がして特大の岩竜が目の前に姿を現した。
「……タケハヤ……。貴様……」
テラスちゃんの怒気をはらんだ声が場を支配する。
「あなたがいけないのですよ、テラス陛下。あなたが皇帝にさえならなければよかったのですよ」
特大の岩竜の頭を撫でながらタケハヤ様はそう口にする。
「だから、あなたには消えてもらいます。行けっ!!」
その言葉と共に特大の岩竜はテラスちゃんの方へと向かっていく。
「くっ」
SPの人は咄嗟に硬鉄壁を私達の周囲に展開し行く手を阻む。
ガンッガンッ。
硬鉄壁を岩竜が叩く音が木霊する。
まずい……このままだといずれ壁が破壊される。
「お姉ちゃん……このままだと」
「うん……分かってる」
月依の言葉に私は頷きそう答える。
「陽花、月依お前たち何をするつもりだ?」
そんな様子の私達を察し心配そうな表情でテラスちゃんは私達をみる。
「このままだと皆潰されちゃう。だから私達が外に出て岩竜を倒してくるよ」
「陽花……おまえ」
「大丈夫大丈夫。お姉ちゃんのカムイの威力は知ってるでしょ?だから今回もきっと平気」
そう言って月依は私の顔を見ながらニコリと微笑むのだった。
そう。
きっと大丈夫。
今回だってきっと上手くいく。
私達はいつだってそうだったのだから。




