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神々の世界で学園生活~ライセンスゼロの私が世界最強!?~  作者: 牛
1章 異世界生活は、突然に。
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プロローグのプロローグ

ひらりひらりと桜の花びらが舞う。

私の背には泣きじゃくる少女の声。

私はそんな少女の声を聞きながら覚悟を決めて歩き出す。

それはいったいいつの記憶だっただろう。

遠い昔の出来事だったような。

心に今でも突き刺さった棘の様にチクリと痛む思い出。

そんな気がする。


ぼんやりとさっき見た夢を反芻しながら私は二段ベッドの天井を眺める。



「…………」



ふと声のした方に視線を移す。

目の前にはパジャマ姿の少女の顔。

その顔がどんどん迫ってくる。

そして……。


―――



私は手に持ったカードを構え呪言を唱える。



「祖たる原初の木霊(もくれい)よ、馳せ来たれ。そして我が呼び声に応えよ風呼(ふうこ)っっ!!」



私の呪言を鍵にして私の持つカードは淡く緑色に輝く。

そしてカードを通して私の呪力が放出され、呪力は竜巻へと変換されていく。

よしよし、その調子で……って、あれ……竜巻?



「皆!机の下に隠れて!!」



担任の先生の声でクラスの皆は一斉に机の下に隠れる。

私が呼び出した呪力の竜巻は、ゴゴゴゴゴ、と物凄い轟音をたてながら教室中を荒らしまわった後に消滅した。



「相変わらず、陽花(ひはな)はんのカムイは物凄いなぁ……」



私の隣の席のピンク髪の少女が青い顔をして呟く。



「はぁ……。陽花(ひはな)ちゃん。風呼(ふうこ)の効果は何だったかしら?」



担任の先生にそう問われ、私は頬を人差し指で掻きながら答える。



「……ただの風を召喚するカムイです」


「はい、正解です。で。何で。それが。こんなことに。なっているのかしら?」



先生の静かな口調が逆に怖い。

うう……私だってやりたくてやってるわけじゃないのにー……。

涙目になりながら私は大きくため息をつく。


はぁ……そもそも私にカムイを操る才能なんかないんじゃないだろうか。

基礎的なカムイといわれる蛍火(ほたるび)すらまともに成功した試しがないのだから。

けれど、何故かカムイの適正審査だけは通ってしまう。

しかし使うカムイは悉く全てが暴発する。

まったくもって謎の珍現象。

今じゃ学園の七不思議の一つと言われるまでになっている。


事の始まりは今から遡る事、二週間前の話だ。



―――


私、霧島(きりしま)陽花(ひはな)は至極一般的な家庭に生まれ、至極一般的な生活を送ってきた。

容姿は世間一般でいう、いわゆる地味子ちゃん。

でも背丈は普通の女子よりちょこっと(?)高くて胸は並以下なので、恰好次第では男の子に勘違いされることもしばしば。

そして学校の成績は中の下。

あまり頭はよくありませんよ、ええ。

加えてオタク趣味なんてものまで持っている。

正直いってキモオタって後指さされてもしょうがないと思う。


そんな私だから大学に進学するつもりはさらさらなくて、女子高のみんなが必至の思いで受験勉強してるのを横目に、就職活動をしまくって何社も受けたのだけれど、落ちまくった。

それはもう数えきれないくらいに落ちまくった。

書類選考はうまくいくのだけど、面接になると途端にNG食らいまくった。

結構オタク入ってる性格だからか初見の人からは内向的な性格に見られがちな私は、面接官の方々からあまりよく見られなかったらしい。

リアルな男の人ってちょっと苦手だしね、私……。

面接官の男性が二次元に出てくるような男性だったらどうかと言われると、それはそれで困ってしまいそうだけれども。


そんな訳で私のパソコンのメールボックスの中身は数えきれない程のお祈りメールが山の様に積み重なっていた。

けれど奇特な会社もあったもので、こんな私を採用してくれた会社もあったのだ。

一社だけだけどね!!


―――


そして四月一日、初出社の日。

髪型はオッケー。

私にしては珍しくちゃんとした美容室に行ってきっちり肩まで綺麗に切りそろえてもらったし。

パンツスーツもバッチリ着こなしている、ハズ。

これならオタクぽくもないよね。

どこからどうみても社会人ぽいよね、うん。

ただ、やっぱり胸が薄すぎてぱっと見、髪の毛がちょっと長い男の子ぽく見えるのが問題かなぁ。

けれど、今日から私はれっきとした社会人、OL1年生だ。

と意気込んで出社したのも束の間、上司の人に黒塗りの車に乗せられてあれよあれよという間によく分からない場所に連れてこられていた。



「キミの職場、ここだから」



車から降ろされた私の隣で目の前の建物を指さしながら課長さんが言う。




「はぁ…………」



私は間の抜けた返事しかできなかった。

ここだからって言われても。

ここどこなんですか、って聞きたいんですけど。

私が住んでる街には少なくともこんな天まで見上げるほど高いオフィスビルなんて立ってなんかいない。

新宿のビル街にもこんなビルなんて建ってなかったと思う。

改めて辺りを見回してみるけど全然見たことのない街並みだった。

というかなんかメタリックなビルだらけで日本の街並みじゃないんですけど。


私、移動中に寝てた?いやいやいやいや……そんなことはないはずだ。

会社を出て、ちょっと険しい山道に入って、なんかよく分からない検問所を通って、その先にあったトンネルを抜けたらこの街だった。

手首につけたこ洒落た腕時計を確認してみる。

うん。車に乗ってまだ三十分も経ってない。

ここどこですか?本当に。



「ああ、ここ異世界だから」



キョトンとしている私を知ってか知らずか課長さんは突拍子もないことも言ってくる。



「い、異世界……ですか」



異世界ってラノベとかアニメでよくあるあれですか。

アハハハ……、そんな馬鹿な。

だって私がよく知っている異世界といえば西洋風のどこか牧歌的なイメージの世界なんだけど。

今いるこの場所はどちらかというとSFファンタジーにでてきそうな未来都市というか。

そんな場所なんですけれども。

私がアニメとかでよく見知っている異世界とは全然違う。



「冗談だと思っているだろうけど本当だよ。ここは異世界。この国はタカマガハラと呼ばれている」

「……タカマガハラ、ですか」



タカマガハラってあれでしょ。

漢字で書くと高天原。

日本の神話とかでよく出てくる神様の住む世界がそう呼ばれていて、アニメとかじゃ日本古来の超和風ぽい街並みしてる場所ですよね。

それなのに、こんなメタリックな未来都市でタカマガハラ。

うーん……なんだか全然名前とイメージが違うんですけれど……。



「立ち話も何だし、会社のオフィスに行ってから話をしようか」

「はぁ…………」



目の前の高い建物に入り、ロビーで警備員さんから簡単なボディチェックを受けてエレベーターに乗り込む。

そして課長さんは七十二階のボタンを押す。

な、ななじゅうにかい……?

ふえー……ここ何階まであるんだろう。

エレベーターホールにはいくつもエレベーターあったしなぁ……。

にしてもここが異世界だって言われてもなんか全然実感わかない。

この建物にしたってそうだ。

外観はメタリックで異彩を放っていたけれど、

内装はなんかどこまでも日本的っていうか、なんていうか。

日本のオフィスビルによくある光景だと思う。

面接を受けて受けて受けまくってお祈りされまくった私が言うんだから間違いないよ、うん。

七十二階のフロアに到着して受付のお姉さんと部長さんは話をした後、私たちは応接室に通される。



「そんなわけで今日からここがキミの職場だよ」



そこには何故か見知った顔のスーツ姿の似合う長身の青年が立っていた。



「そして彼がキミの直接の上司だ」



私が呆然としているのをよそに課長さんは長身の青年の横に立ち、彼を私の上司だと紹介するのだった。




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