1話
俺の名前は九条直虎
今年から高校生になった15歳。
世間では英雄の孫(笑)と呼ばれている。
クソジジイ――もとい俺の祖父は異世界から帰ってきた英雄だったらしい。
しかし、今では誰もそんなふうには思っていない。
昼休み。
「クズの孫が逆らうんじゃねーよ!」
罵声とともに腹部に膝蹴りを受けて地面に倒れた。
「2度と学校に来るなって、昨日言ったよな?直虎?」
「恭也、どうしてお前の言う事を聞かないといけないんだよ」
「それはお前が、クズの孫だからだよ!」
恭也はそう言ってまた俺の腹部を蹴った。
鬼塚恭也
俺の中学時代からの同級生。
何かにつけて暴力を振るってくる。
チャイムが鳴り、先生がクラスに入って来た。
「早く席につけ。授業を始めるぞ。」
俺が苦しんでいる姿を見ても、先生、クラスメイト誰も恭也を止めない。
これが俺の日常。
「明日から本格的にスキルの授業が始まるので、今日は異世界化について改めて授業をするぞ。」
――学校の授業で幾度となく聞いた"異世界化"。
そして俺の祖父が英雄、クズと呼ばれる事になった出来事。
まるでゲームやマンガみたいな話だが、今から50年前、多くの人が異世界に召喚された。
数日後には全員戻ってきたが、異世界で過ごした時間はそれぞれだった。
ある人は向こうで数日だったり、またある人は数年過ごしたらしい。
ほとんどの人が時間は違えど、1つだけ共通する事があった。
それは向こうの世界で死んだという事だ。
じゃあ何故生きて戻って来れたのかというと、向こうの神様から、召喚された人達の誰かが魔王を倒す事が出来たなら、死んだ人も生きて元の世界に戻すと言われたかららしい。
そして、魔王を倒したのが他でもない俺の祖父というわけだ。
ここまでなら異世界化とは呼ばれないし、クズとも言われない英雄の物語だが、肝心なのはこの後だった。
魔王を倒した祖父は戻る前、神様から1つだけ願い事を叶えてやると言われた。
その願い事というのが、"元の世界でもスキルを使える様にして欲しい"だ。
祖父からすれば、自分だけスキルを使える様にして欲しいという意味だったのかもしれないが、現実は違った。
現実の世界に住む全ての人が、異世界の様にスキルを使える様になってしまったのだ。
これによって今までの常識は崩れ去り、世界は混乱した。
スキルが今までに無いほどの格差を作り、戦争の火種を生んだ。
そして原因を作った祖父はクズと呼ばれる事になった。




