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出発

 日が昇って辺りがだんだんと明るくなってくると、滑走路に向かって森中から人々が集まってきた。


 俺は飛行船から降りて、出迎える。


 見送りに来たのはドワーフ達だけじゃなかった。


 ユングを筆頭にトレント達。クインシーを筆頭にピクシー達。それに岩の精霊のゴレイユまでいる。


 エルフはリンとマシロ以外は見当たらない。どうやら、エルフ以外の森中の住人が総出で見送りに来てくれたようだ。


 ガイアスと出発するドワーフの十六人が前に出ると、一際大きな声援が周りから起こった。


 ガイアスは俺の背中をバンッと叩いて皆の前に叩き出す。どうやら出発前の一言を言えと言うことらしい。恥ずかしいからしたくないけど、この状況では逃げることは出来ない。


 顔を両手で叩き、気合を入れて、精一杯の言葉を述べる。


「人間達が森へ侵攻しないように、こちらから反撃に出ます。そのため、飛行船を造りました。まずは、この飛行船造りに協力してくれた森の人達に感謝を、ありがとうございます。そして、ここにいる自分とガイアス達、計十八人で向かいます。そして皆無事で帰ってくることを皆さんにお約束します。武運を祈るため、出発前にお酒を振舞わせてもらいます。ではマリン、ノア。お酒の入った樽を出してくれ」


 ドワーフ達から「うぉおおお!!」と歓喜の声が上がる。どれだけお酒が好きなのだろうか。


 マリンとノアの尾の先から樽がゴロンゴロンと出てくる。正直、見栄えは良くない。口から出しても変わらないからあえて触れないでおく。


 ミカが持ってきた杯にお酒を注ぎ、皆に渡していく。足りない分はトレント達が即席で木の杯を作ってくれた。


「皆に行き渡ったかな?それでは武運を祈って、乾杯!」


「乾杯!!」


 皆がお酒を一気に飲み干していく。俺も形だけ飲む。体からお酒がすり抜けるけど…。


「む?いつもと違う酒だな。酸味と甘みがあってこれはこれで上手いな!」


 ガイアスが感想を述べてくれる。どうやら美味しいお酒に出来上がってたようだ。何よりである。


「元々はアルコールが強いだけのお酒を美味しくなるように作ってもらったんだよ。美味しく出来て何よりだ」


「なんだと?あの渋くてまずいお酒がこんなに美味しくなるのか?それを作ったやつを紹介してくれ?帰って来てからでもいいから!!」


 あ、口が滑った。ピナコのことをどう誤魔化そうか。そこはマシロとエンデに任せるしかないか。上手く誤魔化してくれると思う。


「あぁ、機会があったらね。それよりガイアスは村長なんだろう?率先して参加して大丈夫なのか?後任とかいるのか?」


 話を逸らすために、話題を変えてみる。


「あぁ、あそこに金髪と赤毛でワシに似たやつがいるだろ?あれはワシの息子で金髪がライアス、赤毛がサイラスという。いつもあの二人が村長の補佐をしてくれているので、ワシに何かあっても問題はない。安心してくれ」


 どうやら、息子二人が村長の補佐をしているので、ガイアスがいなくても問題はないらしい。


 よく見ると、職人に交じって作業を行っていた二人なので、顔だけなら見たことがある。ドワーフ達は顔も背格好も似ているから気づかなかった。考えれば分かることだったな。


 酒が飲み終わってもまだお酒の入っている樽は余っていた。流石に出発する人達を酔い潰せないので、残りはミカに預けることにした。


 出発組はガックリと肩を落としているが、これは武運を祈るための酒であって、祝いの酒じゃないからね?勘違いしないでほしい。


「じゃあ、出発しようか。出発組は乗り込んで準備を」


 俺とガイアス達は甲板に向かい、全員で見送りに来た人達を見回しながら出発の準備を始める。


 重りを避けながらガイアスは操縦席に、四人が左右にあるペダルを漕ぐ椅子に座ると準備OKだ。


「マリン、ノア。甲板から重りを降ろしてくれ」


「分かった~、重り降ろす~」


 マリンとノアが重りにくっつき、甲板から降りていく。


 すると、徐々に飛行船は空へと上がっていく。


 四人のドワーフ達がペダルを漕ぐとガコンガコンと歯車が回る音がし、プロペラが回り始める。飛行船の速度と高度が上がっていく。


 俺と休憩組の十二人は甲板から見送りに来た人達に向かって手を振る。


「行ってきます!必ず皆で戻ってくるから!」


「おう、皆で待ってるよ!」


 ミカがリンの両肩をガッシリと掴んで離さないようにしている。リンは飛行船に乗り込んできていない。それが分かるだけで随分と気持ちがホッとした。


 森の住人達の声援を受けながら、俺達は飛行船を飛ばしていく。目指すは軍事拠点のある街へ!!

今回は文章短め、やっと出発です。

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