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皆で一度帰ろうか

 朝になっても雨は降り続いていた。雨のせいもあるだろうが、村に人気が全くなくなった。


 昨日の体調不良が尾を引いているのだろう。トイレが手放せない生活になっている気がする。


 酒場に行ってみると、リンとマシロがいるだけで、珍しくミカもいない。


「ミカおばさん、お腹の調子悪いってまだ寝込んでるよ。消化に良さそうなもの持って行ってあげたから、後は自分でなんとかするって言ってたよ」


 どうやら村の大人の殆どが体調を崩して、子供がいる世帯は子供が面倒を見るという、珍しい状況になっているらしい。


 マシロはともかく、リンは暇を持て余して水属性魔法で球体を作り、お手玉をしている。遊び相手の子供達もいないし、今日は村で出来ることはなさそうだ。


 一度皆でエンデのところに帰った方がいいかもしれない。


 出発前に一度挨拶したいし、武運を祈るためのお酒もピナコに作ってもらっている。


 そうと決めれば、リンとマシロに相談だ!


「リン、マシロ。出発前にエンデ、ラピス、レイやピナコに挨拶したいし、武運を祝うためのお酒も回収したいから一度エンデのところへ帰らないか?今日は雨だし、村の大人達も体調を崩して何も出来なそうだからね」


 リンとマシロは二つ返事で「うん、いいよ」と答えてくれた。


「でもソラ。雨の中濡れて帰るのは嫌だよ。どうやって帰るつもり?」


 俺は側にいるマリンとノアに視線を移しながら答える。


「そこはマリンとノアにお願いする。大きくなってもらえれば中に入って雨宿りしながら帰れると思うぞ」


「何それ~?面白そう~!分かったわ。マリン、ノア、宜しくね~!」


「分かった~、皆で帰る~」


 マリンとノアは一度村の外へ出ていく。村の中の土で大きくなると道が凸凹になるせいだ。


 マリンとノアが大きなミミズの形になって戻ってきた。口を開け、中には土で作った座席を作り、そして目の部分は水で覆って、外が見えるようになっている。ちょっとした乗り物のようだ。


 マシロは一度酒場の奥へと向かい、すぐ戻ってきた。どうやらミカに一度帰る報告をしてきたみたいだ。


 マシロが戻ってくると、リンが「私がいちば~ん!」と言いながら、マリンとノアの口に入り、座席に座っていく。マシロもリンに続いて座席に着く。


 俺は雨に濡れないので、マリンとノアの頭の上に乗り、スタンバイOKだ。


「それじゃ~帰るよ~」


 マリンとノアがそう意気込むと、蛇のようにスルスルと森の中を駆け抜けて行く。マリンとノアの中から歓喜の声があがっている。


「凄い速いし、楽ちんね~。これ、村に行くときもやってよ~!」


「別にいいよ~」とマリンとノアは返事をしている。


 俺もちょっとしたジェットコースター感覚を味わっているので、リンやマシロもそれに近い感覚を味わっているに違いない。まあ、楽しむためじゃなくて、移動するための手段なんだけどね…。


 あっという間に、エンデのところへ辿り着いた。早過ぎてリンが文句を言っているのが中から聞こえてくる。


「村へ行くときも味わえるんだからそれまで我慢しなよ。それより、着いたんだから中に入ろう。少しサプライズもあるぞ!」


「なになに?サプライズ知りたい~!」


 リンは待ちきれないのか、マリンとノアの口を背伸びしたような恰好で強引に開いて、家の扉をバァーンと開いて入っていく。せっかちさんめ。


「わぁ~、みーにゃがもう一匹いる~!かわいい~♪」


 家の中からリンの声が駄々洩れだ。


 マシロは家に入る間もなく、家の中がどういう状況なのか分かって、少し困惑した顔で溜息を吐いている。ネタバレされたのだから仕方がない。


 マシロと一緒に家に入ると、みーにゃ達二匹を抱きしめてるリンと、やれやれと首を振って呆れているラピスとレイがいた。


「帰ってくるなら帰ってくるって言いなさよね!せっかくのんびり生活してたのに~」


 ぶつくさとラピスが文句を言っている。そういえばマリンとノアで帰ってきたせいか、トレント経由での報告を怠っていた。


「まあ、報告しなかったのは悪かったけど、結果は変わらないから良くないか?」


 リンに視線を向けて、俺は弁解する。


「そうね。リンが騒がしいのは変わらないものね」


 ラピスは溜息を吐きながら納得した姿勢を見せる。


「ねぇねぇ~、この子の名前なんていうの?もう決めてある?決めてないなら私が決めてもいいよね?」


「リンが付けたいって言うと思ったから、名前はまだ付けてないわ。リンが名前決めていいわよ」


 リンはう~んと少し目を瞑りながら考えた後「決めたわ!この子、すっごくゴロゴロ言うから、コロちゃんよ!」とコロを抱きながら命名した。


 みーにゃとコロの区別は付いているのだろうか?俺には見た目が同じに見えて分からないのだが…。それにコロちゃんって濁点はどこに消えた!


 リンの名付けは安直過ぎる気がするが、何を言っても意見が通りそうにないので俺は思った言葉を飲み込むことにした。


 リンがみーにゃとコロといちゃついていると、床の扉が開いてピナコが出てきた。あれだけリンが騒いでいるのだから俺達が帰ってきたのに気づいたみたいだ。


「おかえり~、リンにマシロ、それにソラ。美味しいか分からないけど、お酒一応出来たよ?どうするの?」


 俺は頑張ってくれたピナコの頭を撫でながら「ありがとう。雨が上がったら出発する際に持って行ってもらうよ」と感謝の言葉を口にする。


 ピナコは照れているのか茸の傘のような帽子で目元まで顔を隠してしまった。


 か~わ~い~い~、と心の奥底で強く思っていたのだが、余程恥ずかしかったのか、すぐ地下室へと戻ってしまった。残念である。


 ピナコもそうだが、ここは可愛さが溢れている。中身が残念な美少女も混ざっているがそれには目を瞑っておこう。瞑っておきたい。


「それで、今日は何しに帰ってきたの?飛行船?っていうの作ってたんじゃなかったの?」


「あぁ、飛行船は完成して試運転も終わった。あとは備品を搬入するだけなんだ。それに今は村の大人達の殆どが体調不良で寝込んでるからやることがなくてね。出発する前の挨拶とお酒を取りに戻ってきたんだ」


 ラピスは目を丸くして「ドワーフの大人達の殆どが寝込むって何をしてきたのよ!」と俺達に詰め寄ってきた。


 簡潔に飛行船の試運転で雪山へ行ったこと。雪の冷気を利用して冷たいお酒を提供したこと。慣れない冷たい飲み物でお腹を壊したことを説明した。


「まぁ、リンのせいじゃなくて自業自得なら良いわ。あたしまで文句を言われたくないからね!」


 気持ちは良く分かる。まだリンとは短い付き合いだけど、それでも何回も巻き込まれてるからね。まあ、俺が原因なこともあったけど、それは不可抗力だと自分を納得させる。


「じゃあ、今日の予定はないのね?ならゆっくりと静かにしててよね、雨も降っているし、外にはあまり出たくないから!」


 ラピスは既に鳥達の餌もあげ終え、ゆっくりしていたところをリンの帰宅で邪魔されて少し気が立っているみたいだ。俺達も久々にゆっくりしたい。


 昼食、そして夕食まで、リンはマリンを使って触手を操作し、みーにゃとコロと戯れていた。


 マシロは昼食と夕食の準備以外はノアをクッションにしてラピスやレイと一緒にのんびりしていた。俺はただそれを眺めているだけの空気な存在になったが、見てて飽きなかった。


 やはり、可愛いは正義!心が洗われていくような感じがして堪らなかった。


 夜になったら就寝だ。リンはみーにゃとコロを左右に抱いて、マシロはラピスとレイを左右に抱いて眠ってしまった。両手に花で最高じゃないか!実際ラピスとレイは花の妖精だから、言葉は間違っていないと思う。


 朝まで可愛い子達を眺めながら家の中をうろついていたら、マリンとノアから時折変なものを見るような視線を向けられたが気にしない。


 朝になると雨は上がっていた。そしてマシロが朝食のため、一番に起きてきた。ラピスとレイはそれに続いて起きてくる。


 朝食が出来上がると、リンとみーにゃ、コロが起きてきて、皆でテーブルを囲み、食事を取り始めた。


 少しずつ、出発の時間が迫っているのに目を背けたい気持ちになるが、時間は待ってくれない。


 朝食が終わると、リンとマシロが地下室にあるお酒の入った樽を外に運び出し、エンデの樹属性魔法でバケツリレー形式で樽を運んでもらう。


 全ての樽が運び終わると、村へ戻り、飛行船の準備が整い次第出発だ。


「ソラ。リンとマシロを頼む。特にリンは付いていきそうな気がするので、気を付けるようにな!」


 エンデから注意を受けるが、リンを連れていく気は更々ないのだ。俺は頷いて肯定する。


「じゃあ、皆、行ってらっしゃい!絶対皆で帰ってくるのよ?分かったわね!」


「行ってらっしゃい。皆の帰り待ってるね~」


 エンデ、ラピス、レイ、ピナコ、そしてみーにゃとコロに見送られながら、マリンとノアに乗って、俺とリン、マシロはドワーフの村へと向かった。

もうそろそろで出発出来る。書いていると寄り道が自然と増えていく気がする。

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