閑話 北の氷原にて
エルフの住む森の北の山脈越えた、更に北にある氷原にて
私の名前はグレア・アイスフィールド、北方の氷原地帯に住む魔族を纏めておる。
皆は私のことを女王様と呼び、親しく接してくれている。
人外大戦が始まる少し前に、愚かな母上の圧政と弾圧によって、北に住む魔族の勢力が著しく減少し、人外大戦には参戦しなかった。
まあ、人間たちが北へ進行してこなかっただけで、参加しなかったというのが正しいか。その間に私が母上を打倒し、復興に心血を注いで作ったのがここ『アイスヘブン』という国だ。
人間に攻められても簡単に攻略されない様に、氷の地下に国を作った。氷の地下とはいえ、光が良く差すので下層に行かなければ、そこまで寒くない設計になっている。
そして、復興に数百年をかけた後は、退屈な日々が続いていたところ、ある出来事が起きた。
ズドォオオオオオオといいう轟音と共に天井の氷に巨大なひびが入り、強烈な揺れが発生した。生まれてこのかた、地面が揺れるなど体験したことがなかった私は内心ビクビクとしていたが、どこからか臣下に見られているかもしれないのでやせ我慢をした。
ゆっくりと辺りを見回すが近くに臣下はいないようだ。私はゆっくりと深呼吸をして、気持ちを落ち着かせていく。
「女王さまぁああああああ~、大変です! 何者かの攻撃を受けたみたいです~」
ドスドスと白い毛玉の様な男が顔を真っ赤にしながら走ってくる。わらわの昔なじみの臣下で『ゴレス』と言う。昔はふわっふわの毛で触り心地が良かった毛も、今ではごわごわになって固くなっている。まあ、今の私の立場で気安く臣下に触れはしないのだがな。
「ゴレスよ。そんなに大きい声を出さなくても聞こえておる。先ほどの攻撃はどこから来たのか分かるのか? それとも分かりきったことを言いに来たのか?」
ゴレスは息を整えて、話を続けた。
「どうやら南の方から攻撃をしてきたようです。射線上には山の一部が吹き飛んでいた箇所がありました」
山を吹き飛ばしながら、こちらを攻撃する程の威力だと⁉ そんなもの私クラスが全力を出さないといけない威力だ。それが出来る存在は限定される。若しくは人間が新たに開発した武器か? 風の上位精霊からは人間が不審な動きをしているので注意するようにと忠告を受けている。早急に調べる必要があるな。
「女王様…」
ゴレスの背中からひょっこりと、小さい毛玉のような女の子が顔を覗かせる。
「ミレス! なぜここにいる? 女王様の御膳であるぞ!」
ミレスはとことこと私に近付いてくる。ゴレスが止めようとするが私は手ぶりでそれを制止する。ミレスが私の足元に来て、上目づかいで震えながら見上げてくる。昔のゴレスによく似ている。私はミレスを抱きかかえる。ゴレスと違って、ふわふわした毛だ。私はミレスをもふもふしながらお互いの緊張をほぐし合う。
「良い。それよりも今回の件、人間の仕業の可能性もあるな…。『グラン』と『リオン』に原因究明を急がせろと伝えておくれ」
グランとリオンは私の子供で長男と次男である。優秀で皆から信頼されているので、こういう重大な時には良く動いてもらっている。
ゴレスはミレスが何かしないかヒヤヒヤしているのか汗をかいている。私が子供相手に粗相なことをされても何もしないことくらい分かっているだろうに…。
「それでゴレス。他に何か知らせることあるか?」
ゴレスは目をそらしながら、口籠って言おうか言うまいか悩んでいる様子だったが、観念して続きを話し始めた。
「エレナ様が、満面の笑みを浮かべながら、被害を受けた場所へ走っていくのを見ました…」
私は額に手を当てて、盛大に深い溜息を吐く。『エレナ』とは私の馬鹿娘の名だ。好奇心が旺盛で、何かと首を突っ込んでは引っ搔き回していく問題児だ。エレナが出てくるとグランとリオンだけでは手が足りなくなる気がする。
「分かった。私も出る。私が民の前に顔を出せば不安も減るであろう」
「女王様、自らですか!! では先ぶれを出しましょう。ミレス。もう落ち着いただろう。女王様から離れなさい。では失礼致します」
ゴレスとミレスが先ぶれのために去っていく。ミレスは「女王様、有難う」と手を振ってくれた。可愛い子よ。あの子の様に不安になっておる民も多いのであろうな。
私も出る支度をするか、今頃苛立ちが出てきて無意識に尻尾でバシンバシンと地面を叩いてしまった。
今回の騒動を起こしたやつにはいずれけじめをつけさせないといけないな。私は民の前に出る衣装に着替えながら深くそう思った。
色々と新キャラが出てきました。このキャラたちが出てくるまで書き続けれたらいいな~。




