魔法の練習 後編
さっきまでは弾系だったからな。今度は斬撃系がいいかな?
風で斬撃と言えば鎌鼬辺りか。確か空気中に出来た真空に触れると切れる、だったか?
理屈は合ってるはずだ。多分。
俺は魔力をブーメランのような形に変化させ、内部の空気を抜いて真空にしていく。
よし、出来たかな?
まずはこれで試してみよう。
俺は空地にまだ点在している岩に向かってブーメランを投げてみる。
……さっきの魔力の球より酷い。
投げたら曲がって戻ってきたのだ。
あぶなっ。
危うく俺の体が切れるところだった。
「なんか戻ってきたんだけど!刺さった場所で切り傷みたいなの出来てるし、どんな魔法を作ったのよ!」
ラピスが本気で怒っている。まあ、怒られても仕方ない。
「空気中に真空を作って触れると、風で切れたみたいになるんだけど、それをさっきのブーメランに封じ込めて投げたんだ」
「もう、ノーコンなら投げずに、さっきみたいに弾を出すイメージで飛ばしてみたら?いちいち投げる動作なんて効率悪いわよ」
ノーコン扱いされた。効率が悪いとも言われた。
……地味に効く。
俺はラピスのアドバイスを受けて、魔力を弓矢の鏃のような形に変形させる。そして内部を真空にして、弾の要領で撃ち出してみた。
岩に当たる。
スガァアン。
岩に複数の切り傷のような跡が出来ていた。
おお。
これは弾を込めずに使える。使い勝手がいいかもしれない。
「ほら、上手くいったでしょ?うふふん。あたしに感謝するといいわ」
ラピスが踏ん反り返っている。
「ラピス先生のアドバイスのおかげです。有難う御座います」
素直に褒めておく。機嫌が良くなるのが目に見えて分かる。
さっきの汚名が少しは返上出来ただろうか。リンはともかく、マシロには知られたくない。
さて。次はどんな魔法を作ってみようか。
丸ノコのような形で飛ばしたら凄い斬撃になる気がする。でも飛ばすイメージがわかない。
……いや。
盾をボウガンみたいに射出すればいけるか?
よし、試そう。
右腕をボウガンのように変形させる。魔力を丸ノコ形状にしてセット。
射出。
真っ直ぐ飛ぶ。
岩が横に真っ二つになった。
おお、成功――
「それ、風魔法じゃなくない?魔力を変化させて作ったものよね?」
……あ。
そういえば風込めてない。
まあいいか。使えるなら問題ない。前向きに考えよう。
「う~ん、あとは何があるかな~?試してみたいのはあるけど、威力が凄いことになりそうなんだよね」
「どんなに凄いものなの?イメージでいいから見せなさい」
俺は考えている構想をそのままラピスに読ませる。
次の瞬間。
「あんた馬鹿ぁあ!?そんな危険なもの実現したらどうするつもりよ!危な過ぎて許可出来ないわ!」
腰を抜かしている。
俺が考えていたのは遠心力を利用した加速装置だ。前の世界で実証実験の話を聞いたことがある。弾速はマッハを超えていたはずだ。
理屈はシンプルだ。回して、放つだけ。
簡単だろ?
……たぶん。
「ラピス。人間たちがどんな方法で攻めてくるか分からないんだ。あるには越したことはないと思うんだけど、それでもダメかな?」
ラピスは眉間をぐりぐり押しながら唸っている。
もう一押し。
「ラピス先生。一度でいいから試させてください。ラピス先生が頼りです~」
「はぁ~……一度だけよ?」
勝った。
必要な部品を説明する。ギア二つ、柱、ロープ、そして丸太製の弾体。
ラピスは森へ向かった。
その間に俺は地面へ設計図を描く。
回転効率を上げるための受け皿加工。空気抵抗軽減。真空軸。
……理屈は完璧だ。
ラピスが丸太を抱えて戻ってきた。
「ゼェー、ゼェー、出来たわよ…」
「ラピス先生有難う、大好き~」
「あなたに大好きって言われると、なんか気持ち悪いわ」
傷つく。
体を変形させて部品を組み込む。
結果、腹回りが蝸牛みたいになった。まあいい。今は気にしない。
魔力で部品を強化。柱周辺を真空化。ギアに風を当てる。
ヒュゴゴゴゴゴゴ。
回る。加速する。
ロープが張り詰めていく。
楽しい。
もっといける。
もっと回せる。
俺はさらに風を強めた。
――バァアアアアアアンッ!!
ロープが切れた。
ロケットが消えた。
森が騒めく。
鳥と魔物の悲鳴。
……あ。
遠くの山の山頂が一部吹き飛んでいた。
やべぇ~。
全身が寒くなる。この体になって初めてかもしれない。
「ババ、バ、馬鹿なんじゃないの!?だから言ったのに!あたし知らな~い!」
ラピスは即撤収。
俺も長居はしたくない。
家へ帰る。
今回の魔法は――封印決定。
誰にも言わない方がいい。
特にマシロには絶対。
……でも理屈は完成してるんだよな。
いや、やらないけど。
たぶん。
魔法の練習で飛んでもない威力の物が完成しました。頑張れば宇宙までロケットを飛ばせるかも知れません。




