表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/49

魔法の練習 前編

「ソラ。まずは右手に魔力を集めてみて」


 俺はラピスの言う通りに右手に魔力を集め始めた。黄緑色の魔力がドンドンと集まっていく。


「次は掌に丸々ように形を作ってみて」


 俺は集めた魔力をボール状になるようイメージしてみる。集めた魔力が徐々に掌でボール状に形を取り始めた。


「お、出来た。これが魔法?」


「違うわよ。その状態だとただの魔力の塊よ。これは扱える属性の数に拘わらず、誰でも出来るわ。問題はこの魔力に属性をイメージすることで魔力を変化させることなの」


 どうやら、この魔力に属性をイメージすることで色々な魔法が使えるみたいだ。ラピスがお手本を見せてくれる。集めた魔力に植物の種を入れていく。すると、種が発芽し、ドンドンと芽が伸びていく。最終的には苗の様な形にまで成長した。


「あたしが使える樹魔法はちょっと特殊なの。主に植物の成長を促したり、植物の操作や加工が出来るんだけど、植物がないとどうしようないの。まあ植物が無くてもあたしの羽から出てるのは蝶の鱗粉とは違って花粉だから、これを使って眠らせたり、痺れさせたりする魔法は使えるんだけどね」


 なるほど、魔力に属性をイメージすることで魔法を使うにしても、元になるものがないとどうしようもないってことか。俺の場合は風だから空気があればどこでも使えるんだそうだ。そのせいか、殆どの種族が一番最初に使える様になる属性らしい。まあ、たしかに。使えない場所は空気の無い大気圏外くらいだろうからな~。

 次に使える様になるのが土属性らしい。確かに殆どの種族は陸地に暮らしてるし、当たり前だろうな。そして三番目に多いのが水属性みたいだ。水気のないところだと、水を作り出すのが難しいらしく、この位置なんだそうだ。下位属性の最後は火属性だ。火を多用する人間やドワーフは比較的使えるようになるみたいだが、森に生息する種族が多く、あまり火を使わないせいで一番使われない属性なんだそうだ。まあ、火の用心は大変だからね。納得だ。


「じゃあ、ソラ。その集めた魔力に空気を入れるイメージでやってみなさい。たぶん空気が入ることで大きくなっていくと思うわ」


 俺はラピスの言う通りにボール状の魔力に風船に空気を入れるイメージで試していく。すると、ボール状の魔力に空気が入り、ドンドンと大きくなっていく。最初はゴムボールくらいの大きさだったが、今はバスケットボールくらいの大きさにまでなっている。


「おおー、すごいすごい。ドンドンおっきくなってる! このあとはどうすればいいんだ?」


「それをあそこにある岩にでも投げてみましょうか」


 俺はバスケットボール状になった魔力をラピスが指差した先にある岩に向かってポーンと放り投げた。あ、外れた。恥ずかしい。魔力の球は明後日の方向へ飛んで行った。そういえば、人間の時は運動音痴だった。そう思いながら魔力の球を眺めていると、地面に落ちた瞬間、バァアアアンと、花火でも上がったような音と衝撃が飛んできた。


「一応成功したみたいね。方向は全然違ったけど…」


 ラピスは憐れむような目で俺を見つめてくる。いや、俺も最初は出来ると思ったんだよ? でもこの体で物投げるの初めてだったし、仕方ないじゃないか。


「これは簡単な風魔法で、確か『エアーボム』って言ったかしら? 圧縮された空気が破裂してその衝撃で攻撃する魔法よ」


 ふむふむ、でもこれ、石入れて圧縮した方が手榴弾みたいになって威力上がると思うんだが…。俺は先ほどの要領でボール状の魔力を作り、その中に石を入れれないか試してみる。お、石はいるじゃん。そして俺は空気をジャンジャンと圧縮してバスケットボールくらいの大きさにする。


「ソラ。何してるの? あなた石なんて入れても、石属性使えないじゃない。 それでどうするつもり?」


「ちょっと、試したいことがあるんだ。見ててよ」


 俺は岩に命中しやすいように両手で持ち、下手投げでポーンと放り投げた。今度は上手く岩に向かって魔力の球が向かっていく。魔力の球が岩に当たった瞬間、バガァアアアアアアっと大きな音と衝撃が飛んできた。先ほどとは比べ物にならない音と衝撃だ。煙が晴れると、そこには岩が木っ端微塵に吹き飛んでいた。


「ちょっと、ソラ。今の何よ⁉ あんな危ないものだったら、先にいいなさいよ。当たったらどうするつもりよ!」


 ラピスは威力に驚いたのか、怯えたようにブルブルと震えながら文句を言っている。


「ごめん。想像以上の威力だったからさ、俺にも分からなかったんだ」


 俺は元居た世界の知識を使って魔法を試したことをラピスに話した。愕然として口が開いたままになっている。


「魔法の基礎はお、教えたんだから、あたしは物陰に隠れてみているわね。何か分からないことがあったら呼びなさい」


 余程怖かったのか、そそくさと物陰に隠れてしまった。たぶん、俺がこれから色々元居た世界の知識を利用して魔法の練習をすると凄いことになりそうだと思っているんだろう。さっきの手榴弾もどきであの威力だ。もっと凄い魔法が使えるかも知れない。俺はおっかなびっくりではあるが、魔法の練習を続けることに決めた。


 う~ん、次は何をしてみようか、やっぱりエアガンかな? 空気を圧縮して石を飛ばせば、エアガンが作れると思う。俺は魔力を銃の形になるようにイメージすると、ハンドガンの形を取ることが出来た。銃身の奥に石をセットし、マガジンのある場所に空気をガンガンと圧縮していく。先ほどとは違い、銃の形を維持するようにすると大量の魔力が必要なようだ。さっきまで見たいに空気を圧縮するたびに大きくなったらライフルみたいな大きさになっちゃうから仕方ないか。このくらいかな?

 ある程度、空気の圧縮が完了したので、俺は空地にある別の岩に向けて銃を向けた。引き金は…、必要ないな。俺は空気の圧縮を解放してみた。パシュッと音がして弾が勢いよく飛び出したはいいが、魔球の様にくにゃくにゃとした弾道で的から大きく外れてしまった。……石の形が悪かったのか、空気抵抗によって、変な弾道になってしまった。まあ、半分成功したし、今度は形を成形したもので飛ばしてみればいいだけの話だ。俺はラピスに頼むことにした。


「ラピスー。聞こえるー? お願いしたいことがあるんだけど」


「何、ソラ? なんかさっき変な動きしてた石と関係があるの?」


ラピスは少しは落ち着いたのか、物陰から出てきてくれた。それでも少し距離を取られているのは気のせいじゃないみたいだ。悲しい。


「さっきのは石の形が悪かったせいで、真っすぐ飛ばなかったみたいなんだ。だから、木で綺麗な弾を作って欲しいんだ。お願いできるかな?」


「しょうがないわね。ちょっと待ってなさい。すぐに作ってあげるわ」


 ラピスは森の方へ移動し、樹の枝を切り出した。あの枝を使って弾を作ってくれるみたいだ。


「ソラ。どんな形にすればいいの? 丸い形でも大丈夫そう?」


 う~ん、エアガンに使うBB弾は丸いからそれもありだな。でも拳銃の様な弾でも試してみたい。俺はラピスに丸い弾と弾丸の形状に近い円錐形の弾の二種類を作ってもらうことにした。


「ラピス、丸いのと円錐形の二種類作って欲しいんだけど、お願いできるかな? 円錐形って分かる?」


 ラピスは腕を組みながら頭を傾けて「円錐形ってなに? 分からないわ」と言ってきた。俺は地面に円錐形の形を書いてお願いすると「やってみるわ」と二つ返事で引き受けてくれた。ラピスは樹の枝を魔法で加工し、丸い弾と円錐形の弾を五個ずつ用意してくれた。


「ありがとう、ラピス。この弾を使って試してみるね」


 俺は先ほどの要領で魔力を集め、銃の形に成形し、空気を圧縮していく。まずは丸い弾を装填して撃ってみる。少しぶれながらだが岩にヒットした。ぶれたは恐らく弾が無回転だったからだろう。エアガンを撃つと弾がホップしていた。つまりエアガンの弾の回転はバックスピンなのだ。

 俺はもう一回チャレンジし、今度は銃身の先の上部に突起を作った。これで弾が出るときにバックスピンになるはずだ。岩に向けて撃ってみる。すると予想通り、弾がポップしながら岩に当たった。成功だ。ポップする高さを計算すれば、もっと正確に狙えるの違いない。


「ソラ。これはあまり危なくなさそうね」


 成功に酔いしれていると、ラピスが俺の後ろからひょっこりと顔を出してきた。俺は「最初みたいに危ないやつの時は事前に言うから」と言うと、俺の頭の上に座り込んで休み始めた。おおう、妖精といえど、女の子のお尻の感触が……、しなかった…。ラピスの体重が軽いせいか、何か乗ってるという感覚しか感じない。残念である。

 俺はガックシと肩を落とすと、「なに急に落ち込んでるの?」とラピスに言われたあと、ラピスが急に飛び上がり怒り始めた。


「ソラ! なに変なこと考えてるの。この変態、痴漢、あんぽんたん!」


 どうやら、ラピスは俺の思考を読んだらしい。俺から少し離れたあと、汚物を見るような目で俺を見るようになった。誤解じゃないから、弁解の余地もない。当分はこの距離感になりそうだ。

 気を取り直して…、いや、取り直せないけど…、円錐形の弾を試してみることにした。案の定、円錐形の弾も少しぶれながら的に向かって飛んで行った。無回転だからしかたない。丸い弾みたいにバックスピンもかけられないしね。

 今度はジャイロ回転だな。銃身を螺旋状に変形させ、もう一度チャレンジしてみる。すると、真っすぐに弾は飛んでいきバスッと岩に減り込んだ。おおぅ、威力もあがっているみたいだし、成功だ! うっし、この魔法は『エアバレット』と名付けよう。

 テンションが上がってきたところに、ラピスが背後から「思い通りに出来たみたいね、何か言うことは?」と言ってきた。俺の答えはこれだ! 頭を地面につけて土下座をしながら「ラピス様、有難う御座います。あと俺も男なんで綺麗な女の子が近くにいれば興奮することもあります。この通りです~」と全力の謝罪をした。チラリとラピスの方を見ると、ラピスは満更でもなさそうな顔で「綺麗な女の子」と呟いていた。


「ふん、分かればいいのよ、分かれば。少しは見直してあげるわ」


 どうやら、少しは機嫌を直してくれたらしい。俺は土下座から立ち上がり、再度、魔法の練習を続けることにした。エアガンが出来たから、今度は真空砲を出来るか試してみるか? でも魔力で形を作るのは難しいだろうし、腕を変形させれば出来るかな?

 俺は腕を筒状の大砲の様に変形させる。そして大砲の中の空気を追い出し、真空状態を作り出す。弾は入ってないけど、試し撃ちならこれで十分だろう。次に筒の先端に薄い膜を作り、そして背中の方に穴を開けて空気を入れてみる。…結果は失敗だった。空気だけでは筒の先端にある膜を破けなかったのである。失敗も成功のうちとはこのことみたいだ。成功への道が段々と見えてくる。

 俺は先ほどの要領で筒状の大砲を作り、今度は拳ほどの大きさの石をセットしてみる。すると石が体からすり抜けない。なぜだろう?と思っていると、ラピスが「魔力を覆っているからすり抜けないのよ」と教えてくれた。なるほど、そういうことか。

 気を取り直して、背中の方に穴を開けて空気を入れる。すると、パァアンッという音と同時に石が高速で飛び出していった。的として狙っていた岩に当たると、石と岩は砕け散ってしまった。かなりの威力である。弾速もエアバレットより速いし、弾の質量も多いのだ。

 ただ、問題はエアバレットより準備に時間がかかるってことだ。まあ、大砲みたいなもんだし、しょうがないか。俺はこの魔法を『エアバズーカ』と命名した。


「ねぇねぇ、ソラ。あなた、威力がドンドン強くなってない? まだまだ練習するつもりなの?」


 ラピスが心配するのも無理はない。俺もドンドン威力が上がってて危ないかな? って思っていた所だ。でも魔法の練習は楽しいのだ。もう少し色々試したい。


「ラピス。もう少しだけ付き合ってくれないか? 魔法が使えて楽しくなってきたんだ。次は少し落ち着いたの考えてみるからさ。ねぇ、いいでしょ?」


「しょうがないわね。こんな魔法、リンに見せたら、教えてもらうまで駄々こねそうだし、使えるようになったら危険な匂いしかしないわ」


 ラピスがもう少し付き合ってくれるみたいだ。やった! 俺は溢れてくるアイディアでどんな魔法が出来るか思考に没頭するのだった。

魔法の練習です。中二病が見え隠れしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ