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魔力の訓練

 リンとマシロ、ラピスが朝食を取ったあと、俺はリンとマシロが魔法の練習で使っている空地で魔力の使い道を教えてもらうことになった。先生はラピスだ。俺の魔法の上達が悪かったら、最悪、感覚を共有することで使い方を覚えさせるらしい。

最初からそうすればいいのにと思ったが、使える属性が違うので変な癖を覚えてしまうと、その癖を直すのが大変らしい。残念である。


「ここらへんは樹々が生えていないんだな、どうなっているんだ?」


「ここはリンとマシロが魔法を使うために、トレント族に協力してもらって空けてもらったの。樹々の移動はトレント族の十八番だからね!! それにリンとマシロの魔法で、そこら中ボコボコだから植物も生えにくいしね……」


 ここでどんな魔法の練習をしているのやら、ちゃっかりとリンも見に来ている。首には相変わらずみーにゃがマフラーの様に巻き付いている。羨ましい。


「まずは、魔力の感知からね。これが出来ないと何も始まらないわ。まあ、精霊は360度見えているはずだから、すぐに出来るはずよ」


 ん? 精霊は出来るはず? 俺は出来てないんだがどうなっているんだ?


「俺…。360度見えてないんだけど? 精霊なら出来て当然なの?」


 ラピスが不思議がって、俺の体に触れてきた。恐らく思考を読んで原因を探っているのだろう。ラピスが手を離した瞬間、信じられないと言わんばかりの驚いた顔でこちらを見つめていた。


「あなた、人間だったの⁉ しかも、異世界の記憶があるなんて、千年前に戦争を起こした人間と同じじゃない!!」


「え!! ソラって人間だったの⁉ どんなところだったのか教えて教えて!!」


「リン、それどころじゃないわ。異世界の記憶がある人間が精霊になっているのよ!! これは上位の精霊や妖精に知らせないといけない案件よ!!」


「ラピス、風の上位精霊フェリーゼにはもう知られているんだが、他の精霊や妖精にも知らせないとダメなのか?」


 ラピスはう~ん、と考え込んでしまった。どうやらぷちパニック状態になっているようだ。人差し指の第二関節で眉間をぐりぐりしている。


「もう上位精霊に知られているなら大丈夫かもね。なぜソラは放置されているのかしら?」


「フェリーゼには、敵対したりしなければ、危害は加えないって言われたかな。フェリーゼは俺の思考を読んでいたから何か判断できるものでも見たんじゃないかな?」


 ラピスが、「もう一回思考を読んでもいい?」と聞いてきたので、「いいよ」と答えた。ラピスは再度俺の体に触れて、思考を読みだした。


「どうやら、ソラには危険な思想みたいなのがほとんどないみたいね。困っている人間を助けたりしているし、上位精霊はそれで判断したのかも知れないわね」


 ラピスは俺から離れて、まだ信じられないと額に手を当てながら、頭を左右に振った。リンは興味津々という感じで、俺の周りをスキップしている。


「ソラが360度見れないのは、人間の感覚が元になっているせいね。視覚は人間の時と同じくらい?」


どうやら、俺の視覚が人間と同じだったのは、人間の時の体の感覚が元になっているかららしい。それで合点がいった。

人工呼吸が出来たのも人間の感覚が元になっていたからだろう。恐らく他にも無自覚なものがあるに違いない。


「はぁ、始める前からドッと疲れたわ…。これに関しては上位精霊に任せましょ。あたしじゃ手に余るわ…」


「ねぇ、ソラ。人間の時の話とか、こことは別の世界の話とか、聞かして聞かして!!」


 リンは目をキラキラと煌めかせ、上目遣いで見つめてきた。俺は今は魔力の訓練が先で、終わったら話してあげると約束した。

 リンはジャンプしながら、「絶対よ、絶対!!」と大はしゃぎしている。リンとラピスのテンションの差がすごい…。ラピスは更に深い深~い溜息を吐いていた…。


「まぁいいわ、続きを始めましょうか。まず、あたしが手に魔力を集めて、あなたに触ってみるわね。何か感じたら言ってみて」


 ラピスが右手に魔力を集め始めた。目で魔力が見えるくらい魔力を集めているようだ。右手が黄色い魔力で満ちていくのが見て取れる。

 ラピスはその右手で俺の右腕を触ってきた。すると、触られたところに鳥肌が立つような感覚が走った。


「うぉっ! なんかムズムズする~。肌寒い感じかな? あとはなんか反発しているような感覚があるような気がする」


「その反発しているような感覚を覚えておきなさい。どんどん魔力を強くするから、反発する感覚も強くなるはずよ」


 そういうと、ラピスの右手の魔力がどんどん増えていくにつれ、反発する感覚がどんどん強くなっていく。磁石と磁石を反発させているみたいだ。

 ラピスは俺の右腕から手を離し、反発していた感覚を右手に集めてみてと言ってきた。俺は右手に先ほどの感覚を思い出してみる。すると、右手に黄緑色の魔力が集まっているのを感じる。


「もう出来るなんて早いわね。人間の時の感覚が役に立っているのかも」


俺は右手の親指、人差し指、中指、薬指、小指と順番に魔力を集めた後、左手でも同様のことが出来ないか試した。だけど左手は上手くいかなかった…。

俺は人間の時は右利きだったので、右手は得意だが、左手は不得意なんだろうと悟った。


「どうやらそうみたいだ。人間の時は右利きだったから、右手は上手くできるけど、左手は上手くできない…」


「そこまで出来れば十分よ。次のステップに行きましょうか」


 次は魔力感知の訓練みたいだ。あれ? リンが大人しいなと辺りを見渡してみると、リンが地面にみーちゃを枕にして寝ている…。自由か! どうやら朝早く起きたせいと、暇なせいで寝てしまったらしい。


「リンは置いといて、さっさとやるわよ。さっきの感覚を目に集めてみて」


 俺は先ほどの感覚を目に集めていく。すると世界の色が更に鮮やかになった。どうやら魔力の帯びているものの色が更に細分化して見えているらしい。

 大気中の魔素だろうか? 粉末状のものがキラキラと虹色に光り輝いている。そして樹は黄色、地面は黄土色、岩は焦げ茶色など、それぞれの属性に応じた色が見える。地面をよく見ると足跡の様なモヤモヤッとした魔力の後が見える。

 恐らくあの足跡はリンの足跡だろう。これが見えていれば、道に迷うこともないはずだ。


「ソラ、見えた? 見えたなら次に行きましょうか。体全体に薄い膜で覆うように魔力を集めてみて」


 俺は体全体に薄い膜を作るイメージを思い浮かべながら、魔力を集めていく。どうやら上手くいっているみたいだ。体全体が黄緑色の魔力に覆われていく。


「次は、その薄い膜を少しずつ広げていけるか試してみて、これが魔力感知の基本よ。それにこれが出来れば魔力の操作も出来るようになるからね」


 俺はどんどんと魔力の膜を広げていく。大気中に漂う魔素の流れ、地面、樹々、ラピス、リンにみーにゃ。魔力の膜が触れた部は手で弄っているような感覚を覚えた。これなら、どこに何がいるのか手に取るように分かる。すると、リンとみーにゃが起きた。どうやら魔力の膜に触れた対象も触られるような感覚があるらしい。リンは欠伸をしながらゆっくりと起き始めたが、みーにゃは警戒しているのか、毛を逆立てながらこちらを威嚇している。俺、みーにゃに嫌われてないよね? もふりたいから嫌われたくないんだけど…。


「ふぁ~、ソラ、出来たみたいね。でもみーにゃが警戒しているわ。何か変なこと考えてない? 魔力感知は思っていることも伝わることがあるから気を付けてね」


「みーにゃが可愛くて、もふりたいと思ってました…」


「あー、それはみーにゃが警戒するわね。まだ、慣れてない相手に体を触られているようなものだからね」


 みーにゃはリンの服の中に潜ってしまった。リンはそんなみーにゃをよしよしとあやしている。俺は魔力の膜を広げるのをやめて、体全体に薄く覆うようにして、ラピスに次の指示を仰いだ。


「魔力の訓練はこれで終わりよ。あとはあなたが自主的に練習すればいいわ。ただし、家の中では広げたりしないでね。エンデに怒られるわよ。」


 どうやらこれで、魔力の訓練は終わりみたいだ。俺は慣れるために体全体に薄く覆うことを継続することにした。

 ぐぅううううう、誰かのお腹が鳴る音が聞こえる。まあ、鳴るのはリンしかいないか、俺はリンの方へ視線を向ける。


「お腹が空いたわ、昼食にしましょ。さあ、うちに帰るわよ!」

 リンは恥ずかしがる素振りも見せず、家に向かって走っていく。こっちの返事を聞く気は更々ないみたいだ。

 残された俺とラピスは、リンの後を追うように家に帰った。

ここでリンやラピスに別世界の元人間だとバレました。思考を読まれているのであまり警戒はされてないけど、リンは興味深々です。

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