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その男はハゲだった  作者: 清河 桂太
魔術学院編
89/89

たった一つの気づき





 魔術学院三日目の朝を迎えても、綾の気分は晴れやかになったりはしなかった。

 相変わらず催眠毒塗れの朝食にうんざりさせられ、相席を求めるイケメン軍団にげんなりさせられ……その後、午前の一コマを丸々使って、異世界スキルの調査とやらをするのだが。

 儀式の間とやらに通されるなり、ケチが付いた。巨大な魔方陣が床一面に書き加えられたドーム状の一室だったのだが、同行したアルトエレガンから『これとこれとこれ、いらんよね?』と、突っ込みが入ったのだ。

 魔方陣の一部が、転移スキル解析とは無関係な代物だったらしい。アルトエレガンは詳しい事は言わなかったが、大方、催眠誘導系の魔方陣だったのだろう。

 魔術のプロフェッショナルがいるのに、なぜ通用すると思ったのやら。あるいは、フラグレア王国の魔術の総本山故に、アルトエレガンの目を誤魔化せる自信でもあったのか……

 結局、魔術学院側の人間は信用できないと、アルトエレガンの仕切りで解析をやってもらう事になった。魔術学院側の人間はぶつくさ言っていたが、黙殺した。心底どうでもよかったので。

 いくら人の良い綾でも、そう思うくらいにはうんざりさせられているのだ。特に食事の催眠毒。野菜は嫌いではないので苦ではないが、ワイバーン肉とかサーペント肉とか食べたいのにいい加減にしてほしい。

 複雑に入り組んだ魔方陣の上に横たわり、動くことを禁じられること約一時間。それだけで転移スキルの解析とやらは終わってしまうそうだ。

 服を着替える必要もなく、制服のまま、魔方陣中央に添えつけられたベッドにあおむけに横たわる綾。その周囲では、本来魔方陣を管理し、データを収集していたであろう魔術師達が、役割もなく右往左往している。

 ギャラン、アイ、闘の三人は、壁際の片隅でじっと周囲を伺っていた。特にアイは、アルトエレガンがいらないと指摘した魔方陣を注視して、警戒しているようだった。


「そのまま……まあ、寝返りぐらいは大丈夫だけど、出来ればじっとしててね。

 こればっかりは、本格的な施設がないとどうにもならんからねえ……」

「アルトエレガンさんでも、どうにもならないんですか?」


 中空にいくつもの魔方陣を浮かび上がらせながら、アルトエレガンは綾の疑問に苦笑を閃かせた。

 くるくると宙を舞うアルトエレガンの魔方陣の扱いは、この世界の魔術師から見ても芸術的なものらしかった。先ほどまでぶつくさ言っていた学院側の魔術師達が、現金にも目を輝かせて見入っている程だから、よっぽどなのだろう。


「おやおや、綾ちゃんは俺を随分持ち上げてくれるけど……そこまで万能でもないんだなこれが。異世界スキルに関しては、俺が習得してる世界ごとの魔術とは全く畑の違う分野でね。

 本当に知識ばっかで解析の方はさっぱりだ。

 この部屋の魔方陣も、何百年っていうアハトベルン世界の魔術師達の努力の結晶なんだぜ。表層だけじゃない、地下に向かって数十個の魔方陣が仕込まれてる、立体的な魔方陣なのさ。

 綾ちゃんには、逆さまになった東京タワーって言えば伝わるかな」

「へえ……! この部屋、そんなにすごいんですか?」

「ああ。地下深くまで縦穴を掘って、幾重もの地下室に魔方陣を刻み、その頂点にこの部屋がある。こいつは、フラグレア魔術学院の目玉の一つだ。これにばっかりは、俺も感心させられたね。

 これを、俺が魔方陣と魔力で無理やりやろうとすると……魔方陣描くのに地面に大穴開ける、大規模な自然破壊になっちまうんだよなあ」

「空飛んでどうにかにゃらないの? あんんたにゃら、そのくらいどうにでもにゃりそうだけど」

「できなくはないけど、気圧とかの問題がダイレクトに影響する繊細な魔方陣だから、余計に手間がかかるんだわ」


 アイの素朴な疑問に対して、アルトエレガンは素直に己の技術の敗北を認めた


「広範囲にわたって気圧を微調整して地熱とかの計算もして……手間がめちゃくちゃかかるし、どっちみち自然破壊しまくりだから、こいつを借りた方が早い。

 現地の技術は現地の人間が一番極めてる。これ、オープンワールドの常識な」

「その割にあんた、死者蘇生とか、この世界の魔術でもシャレににゃらないレベルで使いこにゃしてるじゃにゃい」

「ありゃあ、あれだ。数多の世界の魔術をマスターした経験則と、魔力の力押しだよ」


 死者蘇生。この世界の魔術でも非常識だと言われている奇跡を、軽く肯定するアルトエレガンの姿に、周囲の魔術師達がざわついた。


「事が異世界スキルともなると、てんで役立たずだ。

 こいつに関しちゃあ、世界毎の専門家の力を借りるのが一番の近道さね。俺にできる事と言ったら……魔力の力押しで、魔法陣を傷めない範囲で、必要な時間を短縮することくらいかなあ」

「本来ならもっと時間がかかるんですか?」

「ああ。普通に使ったら、丸一日拘束される。食事は流動食、トイレも尿瓶でする事になってただろうね」


 道理で周囲が右往左往しているはずである。綾のデータ習得とは別に、丸一日かかるところを、一時間に短縮してしまった、アルトエレガンの卓越した魔術行使のデータも欲しているというわけだ。

 綾の事と言い、本当に魔術に関わる事にはどん欲なのが、魔術学院らしいと言えばらしいのだが……


「――これは、何事だね」


 厳かな声が室内に響き渡るのと同時に、行きかっていた魔術師達が、凍り付いた。寝ころんだまま首を動かして見渡すと、見える範囲にいる魔術師達の表情には明らかな動揺と緊張が浮き出ている。彼等の中の一人が、恐れと共に単語を口にした。


「シュターデン、学院長……!」


(!)


 その単語には、綾をも凍り付くだけの力がった。

 何とか身をひねって、ベッドの頭側の先にある部屋の入口に視線を向けると、そこには壮年の男性が一人、佇んでいた。年の頃は40前後か――とても、エルネストのような孫がいるとは思えない若さであった。

 シュターデン。そして学院長。この二つの単語を組み合わせて連想される人物と言えば、一人しかいない。

 ウルリッヒ・シュターデン。公爵家当主でありエルネストの祖父。エルネスト曰く『魔術以外に興味のない糞爺』――


「何故、魔方陣の起動に、部外者の手を借りているのだ?」

「あ、いや、それは……」


 怒気の赴くままに周囲の魔術師に詰問する学院長に、アルトエレガンが指を止めることなく答えた。


「俺が無理やりとってかわったんだよ。そう怒ってやるな」

「……困りますな、アルトエレガン様」


 それによって、怒りは矛先を失って霧散した。自分達の叱責がなくなったのにほっとして、魔術師達は本来の職務――魔方陣から抽出されるデータの整理に勤しみ始める。

 そんな部下達を歯牙にもかけず、学院長はアルトエレガンに苦情を申し入れる。


「このような、横紙破りをされては」

「ざっと見た感じ、三つくらい余計な魔方陣が継ぎ足されてたんでな。

 んで、お前らじゃあ信用できないし時間もかかるってんで、俺が代わりに術式の運用を買って出た訳だ。何か問題でも?」

「……問題ですな。あの魔法陣は、彼女にとって重要なものだった」

「催眠洗脳系の魔方陣が、か?」

「その通りです」


 アルトエレガンのストレートな物言いに、学院長は恥じることなく応えた。


「世界でも有数の才能が、乙種超人などという無粋なものに浪費されようとしている。

 それを止めるのは、魔術師としての責務です。何か問題でも?」


 ……綾は、この人物に対して、抱いていた印象を、修正せざるを得なかった。

 てっきり、ラグルド・レグンをもっと濃縮した様な魔術以外何も考えていない人間だと思っていたのだが……

 この人物は、ラグルドが持っていた最低限の良識……催眠魔術の存在を表向き取り繕おうとしたりする良識さえも、持ち合わせていない。魔術が全てに優先する人でなしだ。これは、糞爺呼ばわりされて忌避されるわけだと、綾は内心舌を巻く。


「意向はわかるが、本人の意図を無視しちゃいかんだろう」

「ふむ……アルトエレガン様は良識家でいらっしゃるようだ」

「そういうお前は、随分と人でなしだね。

 お孫さん、糞爺呼ばわりしてたぜ?」

「……あれはしょせん、魔術の深淵を前にして二の足を踏むような輩です。論ずるには値しない出来損ないだ」


 敵の能力で認識が入れ替わっているとはいえ、仮にも孫に対していう言葉ではない。


「……それに加えて」

「…………」

「何ゆえに、魔術のまの字もしらないような部外者が、このような場所へ?」


 学院長の視線が、魔法陣の外円部……壁際で腕組みをして佇む、闘の方へとむけられるのが、綾からもわかった。


「ありゃあ、俺の相棒で、綾ちゃんの護衛だよ。

 ここに来てからも、かなり役に立ってる」

「……らしい、ですな」


 日常生活の中に仕込まれた催眠毒をすべて感知し、避けている超人的な勘を、学院側でも察知しているのだろう。学院長はアルトエレガンの言葉に、嘆息と共に同意して、


「私に言わせれば、邪魔者以外の何物でもありませんが」


 心底どうでもいい……綾にとっては、聞き捨てならない事を付け加えた。


「…………」

「ミスター草間。君は、自分が彼女の、真理の道への道程を妨害していることに、気付いているのかね?

 自分の行動が彼女の才能を、乙種超人などという俗物に貶めようとしている事に、何故気づけないのか……大きなお世話、という奴だ」


 これ程、鏡を突き付けてやりたくなる言葉もそうあるまい。

 綾からすれば、自分の意志を完全無視して、魔術師という道を押し付ける学院長の方が、明確な邪魔者である。

 それも、自信の学園が、異世界スキルに好き放題去れているのにも気づかないという、致命的なミスをしているというのに……どうせ、指摘しても聞こえないのだろうが。

 余程何か言ってやろうか、という思いを我慢する綾をよそ目に、学院長の視線に対する闘は――


「……ターゴ・サックは偽王太子だ」

「――!」


 何の前触れもなく、唐突に、わかり切った事を口にし始めた。


「本物の名前はフリッツ・イザーク・フラグレア。今は、王都に待機して、この騒ぎを何とか収めようと右往左往している。

 お前さんの事なんざ、全く無視して、な」

「何とか言ったらどうだね? ミスター草間」


 闘が口にし始めた、一連の真相は、学院長の耳には全くの無音として処理されたらしい。

 闘は、それ以上何も言わなかった。言葉がない、というよりは……最初から、相手にすらしていない、という風情だった。

 そして。

 綾は、その闘の行動に、違和感を抱いた。

 何故、今、そのような事を、学院長に口にする必要があったのだ?

 『敵』の『能力』の強力さ、恐ろしさは、既に十分に把握できている。下手をすれば不敬ともとられかねないような真似をしてまで、焼き増しをする理由が、ない。

 学院長から見て、何も言わずに沈黙を続ける闘に、不快感を刺激されたらしく、学院長は鋭い舌打ちと共に綾に向き直った。


「初めまして、ミス寺門。私は、この学院の学院長をさせてもらっている、ウルリッヒ・シュターデンという者だ」


 見事な身代わりの速さで、張り付けたような笑顔を浮かべていた。

 ……これで、取り繕えていると思えるあたり、貴族としての傲慢さがにじみ出ていて、綾としてはあまりお近づきになりたくはないタイプの人間だった。


「は、はあ……寺門 綾と申します。こんな体勢で、すいません。」

「いえいえ、構いませんよ。魔方陣での解析に、身動きが禁物な事は、我々が一番よく知っていますから」


 それでも最低限の常識的な対応はしようと、仰向けのまま謝罪する綾に、学院長は笑顔のまま言葉をつづけた。


「いかがですかな? 我が王立魔術学院は?

 世の真理を探求するための、神聖な学び舎です」

「えっと……

 その神聖な学び舎、訳の分からない能力に蹂躙されてますけど……」


 一応、念のために聞いてみるが、


「ここならば、貴女の才能を悪用しようとする俗物たちから、完全に守る事が出来ます。どうか、お寛ぎを」


 やはり、梨の礫であった。やはり、都合の悪い事は、完全に聞こえなくなるらしい。


「この後……時間はございますかな? ミス・寺門。

 よろしければ、今夜はディナーなど……」

「えっと……」

「あいにくですが、先約があります」


 綾の言葉をさえぎって、壁際の闘が代わりに答えた。

 今度は、うって変わって敬語を繕っており――


「偽王太子のターゴ・サックと、カミーユ・アルター。この二人と一緒に、王都にいる、本物の王太子に報告をしに行く予定がありますので」

「……なんと、王太子と……」

「……!?」


 なんと。

 今度は、対話が成立した。

 同じ、偽王太子の話だというのに。恐らくは、偽物云々の所は、適当な、別の話題に置き換わっているのだろうが。


(……え……?)


 考えてみれば、当たり前の事だった。今まで綾が見てきた王太子の話題に対する反応――異世界スキルによる認識の誤魔化しは、二種類あった。

 全くの無反応か、話の前後に違和感のない別の話題に置き換わっているか、だ。

 だが、綾が疑問に思ったは、その点ではなかった。


(なんで、今更……?)


 能力についての説明は、被害者であるターゴや王太子から十分に受けた。起こる現象について、改めて確認する必要など、ない筈なのに。

 まるで、再確認するかのような……行動の意図が読めず、横たわったまま、首だけを曲げて、闘を見ると――目が合った。

 いつもの、バーコードハゲがそこにいた。

 嘲るでもなく、呆れるでもなく、ただまっすぐに、真剣に綾を見ていた。


「――オマケだ」


 そして、たった一言だけ呟いて瞑目して黙った。

 何が、オマケなのか。

 一瞬、意味が分からなかったが……以前に言われた事を思い出し、意味を理解した。


『綾の身柄は、俺が守り切る。それは保証する。

 だが、いま学園内で起こってる、妙なトラブル。

 これに関しては、口出ししかできん。その事を、よく覚えておけ』


『もう一度言うが、これに関して俺達は口出ししかできん。

 出来たとしても――これが、精いっぱいだ』


『後は、お前が自分で考えろ。材料はすでに揃ってる。

 後は料理人の手並みしだいだ』


 言葉と共にちりばめられた、数多のヒント。付箋、行動、その他諸々で示されたヒント群。その、おまけが、今の寸劇だという事か。


「ちょいちょいちょい! それ以上は待って真面目に!」

「何を意味の分からない……」


 ギャランがとっさに制止し、学院長は侮蔑交じりに呆れて見せた。

 相棒たるアルトエレガンは、無言で肩をすくめて……三者三様の反応を前にしても、闘は変わらず、双眸を閉じたままだ。

 ギャランとアルトエレガンの反応から察するに……今の一連の行動は、真相がわかっている側からすれば、かなりぎりぎりのヒントだったらしい。

 ならば、そこには何か深い意味があるはずと、綾は理解した。

 闘と同じように瞑目し、考える。


(今の二つの反応の差……会話の中に組み込まれているか否か? 対話が成立しているかどうかで、ごまかし方が変わってくる……そう言う事……?)


 一方的に宣言すれば無かった事にされ、会話の中に混ぜれば改ざんされる。二つの差を、綾はそう判断し……ふと、違和感を覚えた。


(あれ……?)


 おかしい。

 闘の示してくれた事実と、矛盾する行動をとる人間が、一人、綾の脳裏によぎった。


(あの人……! そう言えば、あの時……!)


「護衛の人間を選ぶのならば、まずはマナーと見栄え、言動を考えて選出すべきだと思うのだが……」

「あいにくと」


 ようやく、闘の言葉から得た『気付き』――それに感謝しながら、綾は自分の素直な気持ちを言葉にする。


「私にとって、草間 闘は、見た目も中身も言動も、全部そろった、最高の、頼れる護衛ですから!」






 声高に宣言され、あっけにとられる学院長をよそに、闘は壁に寄りかかり、片膝を立てて刀を抱き、瞑目を続ける。その隣に、ギャランが並んで座りこんで、ジト目で闘を見据えながら愚痴った。


「へいへいへい、闘ちゃんよぅ。

 ちょいとばっかし、肩持ちすぎじゃないの?」

「…………」

「あの子、元々は部外者で、この国のあれこれに関わらせる必要なんて、欠片もないじゃん。

 それを、お前さん……ぎりぎりグレーゾーンにまで踏み込んでさあ」

「…………」


 闘、なおも無言。


「……さすがに、これ以上何かされたら、派閥として抗議せざるを得ないんだけど……」

「あいつは」


 ようやく、口を開いた時、漏れた言葉は――


「あの学院長の言う通り、色々な選択肢があった。

 それを、乙種超人なんてやくざな仕事に限定しちまったのは、俺の責任でもある」

「……へ?」

「だから、出来る範囲で、やれることはやってやるのが、筋ってもんだ」

「…………」


 今度は、ギャランがあっけにとられ、無言になる番であった。まじまじと、闘の横顔を向ける。

 あいも変わらずのバーコードハゲであった。

 草間 闘……組合内部の派閥闘争の全てに我関せずを貫き、黙々と委ねられた仕事をこなす、超人組合の仕事人。その戦闘能力は他の追随を許さず、先日の事件では反亜人派閥の鬼瓦、三百年以上超人を続ける土方マルコシアスと殺し合いまで演じてみせたという。

 その強さと髪型へのこだわり故に、ついた二つ名が『最強のハゲ』。

 相方のアルトエレガンに突っ込みを入れる事はあっても、当人がふざけた言動をしたところを、ギャランは一度も見た事がない。

 その、仕事人が。

 たった一人の小娘に、ここまで入れ込んで、懺悔のような言葉まで口にする。

 過去の記憶が刺激され、ギャランの脳裏をよぎる。超人組合円卓会議の一幕……ガゼロット事件を解決した闘とアルトエレガンへの報酬を話し合う場で、闘とジャリーが交わした会話であった。


『女の子の爆弾を解除させるのに、ガゼロットの首都星を人質にとる……闘ちゃんらしい機転だと思うわよ』

『……なんか文句でもあるのか?』

『別に。妬けちゃうなぁ、って思っただけよ』


 妬ける。

 あの女性の事だから、勧誘を袖にされ続けたのを揶揄した言葉遊びなのだろうが……

 この入れ込みようからして、闘の側に関しては、丸きりの揶揄というわけではなさそうである。


「……へぇ……」

「なんだ?」

「いや、別に。

 そっかぁ、お前にも、とうとう春が来たかぁ」

「……何を勘違いしてるのか知らんが。

 俺はあいつを、そういう目では見てないぞ」




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