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その男はハゲだった  作者: 清河 桂太
エシャロットの森編
50/89

横やり


「なぜ、と言われましても。アルトエレガン殿」


 土方は自身に向けられる圧に怯みもせず、肩をすくめて見せた。


「私は、ただ、お二方のやりようを見学し、捕縛と生け捕りの差というものを学ぶべく、はせ参じた次第です」

「そういう事を聞いてるんじゃねえんだよ……!」


 にこにこと、愛想笑いをうかべてアルトエレガンと闘の隣に並ぶ。その姿を見て、自警団員たちは、そろってフリーズしていた。

 話に聞いていた絶殺主義者だから? それもある。その人物がいきなりここに現れた驚きで? それも無論ある。

 だが、彼らを凍り付かせた最たるものは、それらの前情報ではない。もっと、直接的な……


「ひ……ぁっ……!」

「イザベル!」


 腰を抜かし、倒れこむイザベルの体を、イザークがすんでのところで受け止めた。

 気圧されたのだ。目の前の男……土方が、自分達に向かって放つ、視線に。

 その視線に自警団員たちは例外なくおぼえがあった。

 あるいは、外からの観光客、あるいは、外部から招かれたお偉いさん……ディンブルゲンを訪れる人間達の中に、時折混じる種類の視線だった。

 嫌悪と、優越感。亜人である自分達に対する、差別的な感情。

 亜人へ向けられるモノに、強烈な殺気を混ぜたものが、目の前の男から放たれていた。


「おい、あんまり虐めんな。子供をよ」


 土方とイザベルの間に体を差し入れて、アルトエレガンが強い口調で土方を諫める。


「物好きなお方だ。アルトエレガン殿は」

「物好きも糞もあるかよ。好みでいやあてめえは悪趣味の極みだろうが……

 で、何をしにここまで来た?」

「ですから、お二人の――」

「そういう額縁に入れられたお題目じゃねえ。本音を言え、本音を」


 強い口調で詰問され、土方は再び肩をすくめて、


「それが、お恥ずかしい話なのですが……

 今回の人擬きが中心になったという転生テロの情報は、我々も事前に掴んでおりまして……てっきり、我等の派閥の役回りになるものだと、早合点してしまいましてね。

 先回りして、アハトベルンくんだりまで来たのですが」


 その人擬きに囲われた状態で、いけしゃあしゃあと言い放つ。自らもエルフであるにもかかわらず、亜人蔑視を隠そうともしない。


「ノワール様をはじめとした派閥の者達に、先んじられましてね。

 今回の一件への関与を円卓会議で禁止されてしまったのですよ。ならばせめて、見学だけでも、と思いはせ参じたのですが」


 土方が、指を鳴らした。

 次の瞬間――闘とアルトエレガンを、土方の後ろに控えていた和服の男達が取り囲んだ。


『――!』

「何やら、聞き捨てならない話が聞こえたので。

 あそこに見える狼を、貴方方が相手にすると聞こえましたが、誠ですかな?」

「……それがどうした」

「転生テロに関する、調査協力の範疇だろうが」


 闘とアルトエレガンそれぞれの反論を聞いた土方は、愛想笑いを保ったままこう返した。


「それはいけません。超人組合が関与するのは、異世界間でのトラブルのみ……

 異世界上でのトラブルへの干渉はご法度です。

 我等超人組合が、何度地球上の戦争に巻き込まれかけたか、お忘れか?」

「だから、こいつは、調査協力の範疇――」

「私の目には、そうは見えませんな」


 土方もまた、超人的な視力でもって草原に伏せる者達を眺めて、嗤った。


「私の目には、人擬きが人擬きの街に攻撃を仕掛けているようにしか」

「あ」


 居並ぶ亜人達の一人――大鬼のガロードが、声を上げた。居並ぶ亜人達の視線が、ガロード……ディンブルゲン自警団でも名の知られた超人マニアに集中する。視線で説明を促されガロードは言葉に詰まりながら、言葉を紡いだ。


「ちょ、超人組合には、同世界上の国家同士の紛争には関わらないっていう決まりがあって……この場合は、森の集落と、ディンブルゲンの諍いになる、から……」

「超人組合の一角を担う者として。そのような暴走は、止めなければなりますまいなあ」


 言いながら、土方は己の刀の鯉口を切った。

 その視線で、闘の一挙手一投足を見定めながら。

 ――アルトエレガンと闘が事態に介入するのなら、実力行使でもって止める。

 言外に、態度でそう宣言していた。

 アルトエレガンは舌打ちをして、


「現場の判断、って奴だ。嘴挟むなひよっこ」

「そう言われましても。私としては超人組合の規律を守っているだけなので」

「この一件には関わるなって、釘指されたんじゃねえのか?」

「私が釘を刺されたのは人擬きの一件……ええ、それには無関係を貫きましょう。しかし、超人組合の規律を乱すともなれば、見逃すわけにはいきません」


 エルフ殺戮の為に手段を選ばず、その規律を率先して乱しておきながら、いけしゃあしゃあと土方は言い放った。


「……ちょっと! アルト! どういう事!?」

「あー、すまんアイ。要するに、派閥のあれこれだ」


 事態に追いつけないアイに、アルトエレガンは頭をぼりぼりと書いた。

 動きに合わせて、フケの様な何かが、アルトエレガンの頭から零れ落ちる。


「ガロード坊やが言った通り、俺達超人組合は、基本地元の諍いには不介入が原則だ。でないと、際限なく余所の諍いに嘴突っ込む見境のない迷惑なだけの組織になっちまうからな。

 以前、その辺りをゆるゆるにしちまったせいで、組合が人間を奴隷みたいに扱う暗黒時代のきっかけになっちまったから、戒めの意味も込めて、そういう決まりが出来た。

 破れば除名、最悪処刑までありうる超人組合の規則。

 こいつは、その、規律を守れって言い張ってんのさ」

「守れ……って、それじゃあ!」

「ああ」


 がしがし、がしがしと音が聞こえそうなほど、激しく、頭を掻きむしるアルトエレガン。


「俺と闘は、エシャロットウルフとの戦いにゃあ、参加させん。

 この馬鹿は、そう言ってるんだよ」

『……!』


 はっきりと告げられ、自警団員たちの間に動揺が広がっていく。

 エシャロットウルフ……討伐には軍が動くこともある、エシャロットの森の頂点捕食者。魔法で炎氷雷を吐き散らすわ身体強化はするわで、並の人間では束になってもかなわない、そういう生き物だ。もっとも、超人達にとっては大した相手ではないのだが――

 超人達の助力という前提があってこそ勝利の目があろうというもの。それがなければ……単体でも問題なものを、軍勢として運用されてしまえば、たとえ精鋭と知られたディンブルゲン自警団と言えども、勝てる相手ではない。

 絶望が、音もなく自警団員の間に染み渡っていき、イザークはそれを敏感に感じ取って、歯噛みした。


(これが……狙いだったのか!? ウーンファース……!)


 土方の存在、意図を察知し、それを利用して超人達の動きを縛り、エシャロットウルフの戦略的価値を最大限に高めて運用する……もし、これがウーンファースの描いた絵面ならば、彼は超人組合の内部深くに、情報網を張り巡らせていることになる。


(いや、それ程の規模で超人組合の内部に情報網が敷かれたなら、もっと早期に動く事も出来たはず! やはり、これは偶然と考えるべきだ……)


 悪い方へ傾きかける思考を取り直し、イザークは必死で、現状を打破する対策を模索する。エシャロットウルフの群れを、現状の戦力で打破するには、やはり司令塔であるウーンファースを抑えるしかない。

 どの道、エシャロットウルフとの戦闘は避けられず、少なくない被害が出るだろう。

 ぼりぼり、ぼりぼり、と音を立てて激しく、頭を掻きむしりながら、アルトエレガンは説明を続ける。


「土方の後ろの方に、スーツ姿の奴が控えてんだろ? 多分、あいつが俺らの会話を記録してどこぞに送り届けてる。ここで下手な行動すりゃあ、後で上げ足とられかねんって事だ。

 ま、そんな派閥抗争云々の話は、無派閥で通してる俺と闘には関係のない話。

 こいつをぶっ潰して、事の始末をつけてもいいんだが……」


 思い切り物騒な事を何のためらいもなく口にして、周囲を、自分達を取り囲む、和服の男達を見回した。


「これだけの手勢をどうこうしてってのは……」

「勝てにゃいの?」

「勝てるが意味がない。

 戦闘の余波で、ディンブルゲンが更地になりかねん」


 アイは絶句した。アルトエレガンの言葉が、法螺やでまかせではない事を、よく知っていたからだ。冗談でもなんでもなく、彼らは光より早く動けるし、何より強い。


「こいつ等だけなら、俺が結界張って闘がなぎ倒すって手も使えたんだがな。土方の野郎と、あのスーツの奴はだめだ。

 特に土方は伊達に円卓じゃねえ。戦闘能力だけなら、闘に匹敵する。そんな奴と集団戦で戦いながら、周囲に気を配れってのは無理だ」

「あんたの結界で、にゃんとかならないの?」

「そこでに問題になってくるのが、結界のスケール……大きさだな。

 土方と闘が戦うとしてそれを周囲に波及させないようにするには、どうしても結界の規模がでかくなるから……ディンブルゲンの都市部を丸ごと飲み込むことになっちまう」

「北の方に結界の中心を置いて、結界の端っこをあそこらへんにするってのは、無理にゃの?」

「確かにできなくはないが、そこまでやらせてくれる相手じゃないぜ。周囲の雑魚共だって、倒すのは訳ないが、一応乙種超人なんだ。妨害を仕掛けられたら難しい。

 どうしたもんかねえ」


 ガリゴリガリゴリと異音が立ち……そこで初めて、アイは違和感に気づいた。

 いくらなんでも、景気よく音が鳴りすぎでは?

 見れば、アルトエレガンの肩やら足元やら背中の羽やらに、フケなのかなんなのかよくわからない物体が、大量にぽろぽろと落ちていて……その中には、砕けた角の破片やら、甲殻の破片等も散見されている。

 それを見たイザークが、アルトエレガンの意図に気づき、部下達に指令を下す。


「魔法部隊!! そこに転がっているものをかき集めろ!!」

『……!?』

「2000年生きた魔王の体の一部分だ! 例えフケだろうとなんだろうと、第一級の魔術の媒介になる!!

 それを媒介にして、可能な限りの支援魔術を全体にいきわたらせろ!! 急げ!!」

『は、はっ!!』


 弾かれたように魔法部隊の自警団員たちが動き出し、アルトエレガンの周りに集まる。


「一級の魔術素材なのはわかるんだけれど……なんか、ばっちぃ……」

「悪いね、色々と」


 部隊員の一人が漏らした愚痴に気分を害した風もなく、アルトエレガンは笑った。そんなやり取りを、咎める者がいた。

 その者から発せられる強烈な殺気に充てられて、魔法部隊隊員たちの手が一瞬、止まる。彼らを背後にかばったアルトエレガンと土方の目線が、ぶつかり合った。


「アルトエレガン殿」

「んー? 俺は、頭かいてただけだぜ?」


 殺気交じりの詰問の声に、厚顔無恥の見本とばかりにのんきに答えるアルトエレガン。あるいは、この殺気の濃さは、魔法部隊の構成員の大半がエルフだったから、と言うのもあるだろうか。

 常人なら眺めるだけで寿命が縮みそうな視線のぶつかり合いが、しばし続き――


「……まあ、いいでしょう」

「こりゃ、一本取られましたな」


 後ろにいたスーツ姿の男が、押し殺したように笑ったのを聞き、人が殺せそうな視線がそのまま、男に向けられた。

 常人なら寿命が縮むだろう目線を受けて、男はおどけてみせた。


「おお、怖い怖い。そう睨まないでくださいよ。土方さん」


 矛を収めたのは土方の方だった。視線を草原の方向へ向け――それでも、闘の動きに警戒しながら、


「人擬き相手に、酔狂な事です」

「……! 人擬き、人擬きと、それは、エルフの事ですか!」


 気を取り直したのか、単に殺気に慣れたのか……イザベルが、震える足に鞭打ちながら立ち上がり、土方に詰問した。土方は、イザベルに虫を見るような視線を返して、


「その通りだが、何か?」

「……! 何か、ではありませんわ! あなたもエルフでしょう!?」


 なのに、なぜそんな事が言えるのか――

 それは、土方が幾度も投げかけられた問だった。

 故に、問われることには慣れていて、答える事にも慣れていた。

 土方は、決まりきった文句を並べようと、口を開こうとし――


「敵――動き出します! エシャロットウルフが攻めてきましたぁっ!」


 自警団員のあげた声――半ば悲鳴――に、さえぎられた。






「門を閉じろ!! 魔術部隊! 支援魔術はいきわたったか!!?」

「大鬼隊前へ! なんとしてもここで止めろぉっ!」

「一匹たりとも街へ入れるなぁっ!」

「私も前に出る! アルト!」

「あん?」


 騒めきたつ団員達を前に、アイは、支援魔術をその身に浴びながら、アルトエレガンを振り返った。


「ありがとう。できる範囲で、出来る事をやってくれて」

「よせやい。俺は頭かいてただけだぜ」


 照れたように手を振るアルトエレガンを見て、笑って――アイは草原に向かって駆け出した。


「うおおおおおおお!?」

「体軽いなんてもんじゃねえ!! 魔王のフケすげえ!」

「これなら、エシャロットウルフ相手でもいけるか……!?」

「凄いのはわかるけどせめてもうちょっときれいなもんでパワーアップしたかった……!」

「せめて角とか……!」

「贅沢抜かすな!! 使ってるこっちが一番ばっちいわ!!!!」


 団員達の口から、自身の体にかけられた支援魔術に関連する、歓声と愚痴る声が混ざって上がる。アルトエレガンの体の一部を媒介に施された支援魔術は、平時のそれを大幅に上回る効能を発揮していた。

 挫け掛けた戦意を持ち直すに足る効果を確認すると、イザークが団員達に向かって吠えた。


「諸君! 私は、皆に謝罪しなければならない! 考えてみれば、超人達にすべてを投げっぱなしというのは、消極的に過ぎる方針だった!

 我等の街は、我等が守る!! それが、ディンブルゲン自警団の掲げた理想であったはずだ! ここで踏み止まらねば自警団の名が廃るというものだ!

 我等の誇りを守れ! 我等の誓いを守れ!!

 私からは、以上だ!! 総員、我に続け!!」

『応っ!!!!』


 イザークが駆け出し、その後を自警団の精鋭たちが追う。

 陣列を組み、草原を駆け抜けて。自警団員達と、エシャロットウルフの群れが、激突した。

 怒号、雄たけび、悲鳴――様々な声が団員達の間から上がり、同量の獣のうなりも合わさり大合唱となって、闘達の耳朶を叩いた。


「兄さま……!」


 とうとう、始まってしまったと、嘆くイザベルの横で、闘は綾の肩を抱いた。いきなり、何の前触れもない肉体的接触に、綾は天地がひっくり返ったような衝撃を受けた。


「と、闘さん……!?」

「綾。俺の傍を離れるなよ」


 耳まで顔を真っ赤にする綾をしり目に、闘はぶっきらぼうに、しかし真剣に言い放った。その様子を見たアルトエレガンが、からかうような口調で、


「おやおやぁ? 闘ちゃんってば、こんな非常事態に青春しちゃう? 青春しちゃう??」

「阿呆。そんなんじゃねえ」


 言い捨てる姿には、本人の言葉通り一切の下心らしきものが見えなかった。

 綾は戦いの中で足を引っ張らないために、闘の一挙手一投足を見逃さないように努めていた。だからこそ、闘の声音に籠った真剣さが伝わった。

 むしろ、この状況に下心を出していたのは、自分の方ではないか……? 綾は急に自分が恥ずかしくなった。顔の赤色は、恥の前にいともあっさりと引いた。


「どうして……どうして、こんな事に……」

「人擬きが、人並みの夢を見たからだろう」


 イザベルの独り言を聞きとがめ、土方が鼻で笑った。


「人擬きは人擬きらしく、森で原始的な暮らしでも営んで、野生に還っていればよかったのだ。分不相応な夢を見た結果が、これだ」

「……! この!」

「よせよせ。死にたいのか」


 レイピアに手をかけるイザベルを、アルトエレガンが止めた。


「超人にも、正当防衛は認められてるんだ。

 抜いた瞬間真っ二つだぞ……こいつの事は、相手にするだけ無駄だ」

「……派閥、って言ってましたよね」


 闘に抱かれながら、綾は頭の中に沸いて出た疑問を二人の超人に投げかけた。


「こんな、こんな事を認める人たちが、派閥と呼べるくらいにいるんですか?」

「別に、不思議な事じゃないぜ、お嬢さん」


 答えたのは二人ではなく、スーツ姿の男だった。彼は土方の殺気を受け流した時のように、へらへらと笑いながら、


「オープンワールドの歴史は、これから学ぶところなのかな?

 なら、そのうちに知るだろうさ。オープンワールドが開かれて2000年。人擬き共がどれだけの数、規模で転生テロを引き起こし、人類を害してきたか」

「え……!?」

「転生だけじゃない。エコテロリズムもさ。

 酷い時には、一つの国が丸ごと滅ぼされたこともあった。そんな事が繰り返されて2000年……人擬きの相手なんぞうんざりだ、っていう連中が現れるのも、無理はないだろ?」

「少数の過激派勢力が派閥の代表面すんな」


 アルトエレガンが吐き捨てて、スーツ姿を睨みつけた。闘もまた、土方を警戒しながら口を開く。


「……こいつの言う事は、明らかな言いすぎにせよ、そういう勢力が存在するのも事実だ。

 『異世界に出てこない異世界人だけがいい異世界人』ってのが標語の、反異世界人派閥だ」

「そんな連中の論拠になっちまってるのが、今起ころうとしてる、転生テロってわけだ」

「けど……こんな事をしたら、問題になるんじゃあ!?」


 こんな事……闘とアルトエレガンの動きをけん制した事を指摘するも、土方は冷笑さえ浮かべて見せた。


「40年前に大規模転生テロを引き起こした連中の内乱に嘴を突っ込むなど、超人組合の一員として認められん。それだけの話だよ、お嬢さん。

 共食いをして数が減るのならば、それはそれでいい事ではないか」

「……!?」


 あまりの言い草に、綾は繋ぐべき言葉を見失う。

 完全に、ディンブルゲンに住む亜人を、害虫の親せきとしかみなしていない言い草だった。

 その反応に、アルトエレガンは、わかっていた、とばかりに声に諦観を滲ませて言った。


「ほらな。こういう奴等なんだよ。こいつ等は……語り合うだけ時間の無駄だ。

 この馬鹿は極め付きの論外にしても、そういう勢力が出来る位に頻繁に転生テロやらエコテロリズムやらが繰り返されてるのは確かでね……オープンワールドの、社会問題って奴さ」

「そんな……!」


 そんな事、ここの人たちには関係ない事……イザベルはそう言いたかった。

 だが、言えなかった。40年前に実際にテロを実行し、今もまたテロが行われようとしているのは、事実だったからだ。


「我々にも言い分はあるのだよ、お嬢さん。エルフ共の鎮圧を行おうと準備していたところに、『先に人を送ったから貴様ら不要』などと言われ、せめて事の顛末を、と現場に出てみれば、堂々と規則やぶりが行われようとしていた……誰でも、止めるだろう?」

「物は言いようだなあ、おい。お前の言う鎮圧は、皆殺しだろうがよ」

『なっ……!?』


 皆殺し。アルトエレガンが放ったあまりの単語に絶句する綾とイザベルをよそに、土方は何でもない事のように、言った。


「ええ。そうですが……それが何か、問題でも?」





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