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教皇の異世界物語  作者: しらす御飯
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街③

短いです。

 -----アルベールがギルドを飛び出す少し前。


 ロイネリアの上空。


 -----この街の全体が良く見渡せるような、地上から目視が困難であるようなそんな場所に、一人の男は居た。


 眼下には冒険者や街の兵士の人間が「悪魔ノデモングリモワール」によって生み出した、自らの使い魔に対して苦戦を強いられ-----というより明らかに人間側が劣勢である状況が、尋常ならざらぬ視力を通して見て取れる。


「・・・予想以上だな、この魔導書は」


 流石は我が主。とその表情を感心と喜色に浮かべる男は、上空にいるくらいであるから、当然、宙に浮いている。


 -----宙に浮くということは別段、特別なことでも何でもない。飛行能力をもつ魔物モンスター然り、人間であれば「浮遊レビテーション」というランク3程度の無属性魔術スキルがあれば可能だ。


 それはともかくとして、主から賜った魔導書に感心すると共に、対して男が抱いた感情があった。


「・・・しかし、こんなものか」


 そう、彼は人間という生物の脆さにつまらなさを感じていたのだ。所詮はこんなものかと。


 -----いや、元々人間の愚かさや脆さは判っていたつもりで、実験動物のようなものである理解してはいたのだが、魔導書によって使役する悪魔としては最下級に近い小悪魔グレムリン影悪魔シャドーストーカーに為すすべもなくこの街の兵士が殺されているのを見て、張り合いが無い、これ以上の悪魔を試すまでもないと思ってしまったのである。


 いや、人間側で冒険者と呼ばれる存在達は、巧みな連携によってを自分側の悪魔の数を減らしてはいる。が、自らが呼び出した悪魔の数は百や二百ではきかない、その数の多さによって苦戦を強いられている状況だ。


 密かに待ちわびていた人間の魔物モンスター化は結局、何十とある内の個体から数体しか成功せず、成功したとしても使い物にならなかった。何せ、自分の言うことを聞かないのだから。-----結果として高い魔力の持ち主でなければ成功の可能性は低いということは判明したのだが。


 それだけのものを得たにしては散々な結果だ。何せ彼自身、多くの人間に仕込んだソレにちょっとした手間を掛けたのだから。


 ふぅ、と一息吐くと、気持ちを落ち着かせるために中空を眺める。


 主の命令は「街に混沌を起こせ、可能ならば墜とせ」というものだった。


 そういった意味では主の命令は既に達しているといっても良い。このまま報告すべく帰還しても良いが、力はさほど強くないとはいえ、これ程の数の悪魔を使役できるこの魔導書の力が更に見てみたくなったのだ。


 つまり、混沌としているこの状況を更に昇華すべく、最後の仕上げとしてこの「悪魔ノデモングリモワール」に記されている最悪の召喚術、最上位悪魔を呼び出したい気持ちが募った。


 男は震えた手で書のページをめくる。


「くくくく」


 笑いがこみ上げてきてしまう。


 これから自分が顕現しようとする最上位悪魔「古き魔の尖兵エルダーデーモン」と呼ばれる悪魔は、恐ろしき魔神である。


 魔王が君臨したと云われる時代、人々の混沌から

顕現し、あらゆる生物から恐れられ暴虐の限りを尽くした絶対強者。それが魔神である。


 自分も魔神なんて書物などで語られるだけの、伝説上の存在と思っていたのだ-----魔導書にソレを顕現する方法が記されているのを見るまでは。


 そして、その召喚の中核を織りなすものとして、生け贄が必要なことは理解していた。多くの生物が蠢く混沌としたこの状況でなければならないというのも一つの条件だ。賭命の水晶により魔神へと生け贄にする魂はギリギリ足りてはいる。とはいえ、顕現させるだけで今、街で暴れている悪魔共とは比べものになら無いほど多くの魂を必要とするが。


 そんなおぞましいモノをこの場で召喚しようというのだ。この魔導書を以て使役できるかどうかは歓喜と共に多少の不安は男にもあった。


 -----いや、もし使役できずとも、その場に長く顕現させることができればそれで十分だ。自分が危なくなれば即座にこの場を離れればいい。


 ふと思い出したように、召喚に関して詳しいルイニングにもそれを手伝わせるつもりであったのだが、未だに連絡の一つもない-----仮に、何か不測の事態があり、既に殺されているのだとしても自分一人でやるつもりであったため、そんなに変わらないのだが、そうだとしたら主に使える身として情けなく思う。


「・・・まぁ、良いか」


 そんな事は今はどうでもいいかと頭の隅に置き、ふぅーと長い溜息を吐き、男は水晶の魂を魔導書に喰わせ始める。


 瞬間、待ちわびたかのように光る霊魂の流れが本に向かって起こる。


 魔導書はソレを吸収するかのように黒く鈍く輝き、夥しい数の魂によってそれ相応の何かを顕現しようとする。


「顕現せよ!!古き魔の尖兵エルダーデーモン!!」


 彼は喜々として言い放つ。


 -----それは子供が親に新しい玩具を買って貰ったかのようなそんな様子に似ていた。


 数瞬の時をもって、黒く、闇色の靄に覆われて街の一点を塗りつぶすかのように、恐ろしく強大で巨大なモノが現れた。



諸事情により、次話投稿は遅れます。

気長にお待ち頂ければ幸いです。

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