6月 週末
6月はどんな日か知っているだろうか?学生の俺から言わせてもらうと、祝日が無い日だ。そして、プール開きもある。だから、たまの休日がありがたく感じる。
今、俺がなにをしているのかというと、休日だから、人の目も気にせず、走っているのだ。自転車が走るくらいの速度を維持し続けたまま、特に目的もなく、街から街へと走っていく。俺は少食だから、おにぎり二つで、夕方までもつのだ。
なぜ走っているのか、と言われると、走っていたい気分になるというのが一つだ。走っていないと落ち着かない。というのは習慣化した弊害でもある。あとは、走っている間は、色々なことを忘れていられるのだ。だから、目覚めてすぐにおにぎり二つを作ってから、着替えて出発した。
1時間程度で、忠志たちがいる場所に着いた。今日は凛太郎がいないようだったそう言えば土曜だったな、と会話をして、しばらく軽い雑談を繰り返してから、出発した。今日は行けるところまでいくつもりだ。帰りのことも考えなければならないので、リミットは12時まで。行きに7時間、帰りに7時間だ。
2時間走ったところに、父さんがよく釣りをしている漁村があった。潮の匂いを感じながら走る。朝のこの海の砂浜を走るのが、子供の頃からよくやっていた。小さい頃は自転車で走ったり、父さんが車で連れて行ってくれたりして、よくこの砂浜にしていたな、と感慨にふけっていると、船が何艘か泊まっていた。大きな船はもうすでになく、小型船も数艘を残して出発していた。漁師の朝は俺よりも早いらしく、1時くらいに出港することもあるらしい。それを見ると、素直にすごいなという感想が出てきてしまう。
さて、ここで少し休憩しよう。そう思い、俺はリュックからおにぎりを取り出す。このリュックは少し小さめで、走っている時に邪魔にならないから重宝している。
おにぎりの中身はシャケにした。今は魚を食べたい気分だった。水筒に入れた水を少し口に含んで、海を眺める。堤防の上に座っているため、風がよく体に響き、海の匂いも舞い上がっているように感じる。その海の潮を感じながら、薄味のおにぎりを食べた。
そして、漁師が海から帰ってくるその時まで、俺はこの街を走って巡ることにした。
走って時間を潰していると、船が帰ってきた。
「よお!龍ちゃん。元気にしてたかい?」
この人は佐原さん。漁師だ。日に焼けた顔と、歳を感じさせない体、厳格そうに見えて笑った時の快活さは見習わなければならない。そんな佐原さんは父さんの釣り友達で、この道数十年というプロだ。俺にも昔釣りの技術を教えてもらった。厳しかったが、それ以上に、この職業に対する熱心さが伝わるような人だった。
「ああ。今日は週末だから手伝いに来た。」
佐原さんは敬語とかが嫌いらしいので、タメ口で話す。そのほうが仲良くなれるだろ?といていた。
「いつも助かるぜ龍ちゃん。おい、お前ら助っ人がきたぞ!」
歓声が上がる。いつもかなり重労働なのだ。1人増えただけでもかなりしごとが楽になるのだろう。次々と魚の入った籠が俺の前に積み上がっていく。俺も何度もやって慣れているので、この籠はこっちの倉庫とか、この魚はダメだとか、これはトラックに乗せるとか、それを淡々とこなしていく。小型の籠は片手で持てるサイズなので、片手で5個ぐらい持ち運ぶ。
「そんなに力があるなんて、若いってすごいな!」
と言いつつ、佐原さんも何個か重ねて軽々と運んでいるのだが。この激務は、2時間程度で終わった。別れる前に魚を分けてもらえるという話になったので、今日はちょうど父さんも船に乗っていたので、父さんの車に乗せて、家まで行ってもらった。
そして、また海沿いを走る。1時間も走れば、目標にしていた岩に到着した。
そして踵を返す。そして、来た道と違う道に向かう。今日はとことん走ることしたからな。この先に休憩出来る公園があるんだ。
住宅街を抜けて、コンビニを通り過ぎ、ドラックストアなんかをいくつも通り過ぎる。途中時折猫を見つけて、しゃがんで観察したが、猫は毛を逆立てて俺を警戒していた。野良だから仕方ないのかもしれない。こういう時月だったならどういた結果になったんだろうかと頭によぎったが、月は猫とも仲良く出来るのだろうなと、結論が出てしまって、いまだに警戒され続ける俺との違いを感じながらスッと立ち上がった。そして、軽いクールダウンのために歩いたのちに、目指していた公園に着いた。公園の水を使って簡単に汗を流し、首にかけていた潮の匂いが染み付いてしまったタオルを水で濡らして絞った。それで顔を拭き、ベンチに腰掛ける。
そして、おにぎり2個目を食べる。2個目はツナマヨにした。どうしてだかわからないが、魚類とマヨネーズはかなり合うようで、ツナマヨだけでなく、サーモンとかマグロとかにもよく合うのだ。他にも野菜だが、レタスとかキャベツにマヨネーウト七味唐辛子をかけて醤油と同じ要領でつけて食べるととても美味しい。
そんなことを考えていると、おにぎりを食べ終わり、満腹感を感じる。なので、軽く柔軟体操をする。一通り終わったら、少しだけ速度を上げて走り出した。しばらく田舎道が続く。畑仕事をしている知り合いのじいちゃんばあちゃんに手を振って挨拶をして、走り出す。すごいといえば、ここのじいちゃんばあちゃんもなかなかにすごい。簡単に田植え機を使い回し、軽トラで走りまわっているのだ。何度か、ここの地区の集まりで遊ばせてもらったことがあるが、ここの地区には無敗のメンコ王と呼ばれているじいちゃんがいる。一度も勝つことはできなかった。他にも将棋、独楽などやってはみたが、誰かしら得意分野をもっている人たちが集まっているようで、その得意分野で勝負した時、一度も勝ったことはない。
少し走り自転車を押して歩いている男女を見かけ、珍しさを感じたり、山の凹凸の多い道に脚を取られながら、家に帰ってきた。
「ただいま」
「おにい。遅かったね。」
帰ってきて早々にリビングで経済系の本を読んでいる月が出迎えてくれた。そして、顔を顰めて臭いを嗅いでくる
「お兄汗くさい。」
「ああ、風呂入る。」
軽く会話を済ませて、シャワーを浴びる。
ちなみに、鈴木の家から漁村まで目安を出したところ、大体フルマラソン程度、らしいです。




