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若き元社長の、創造能力。  作者: 大岸 みのる
第二章:二部・若き元社長の、不在。
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若き元社長の、不在。1

 早速、動き出したスキル屋のメンバー。大地を捜索する為に、占い師のセシファーと優が同行する。

 まず向かったのは、睡眠屋フィールド・ナイン。だが、ノックをするも返事はないし、そもそもかつて掲げられていた看板がない。これでは、どう探せばいいのかもわからない。

 五人は溜息を深く吐いた。


「フフィさんってバカなんですの?」

「ち、違うもん! 確かにここにあった筈です!」

「まぁまぁ、ハーバンさん怒らないでください」

「仲が悪いのぅ……」


 フフィとハーバンが喧嘩し、それを仲裁に入るレイ。だが、二人の少女の喧嘩腰が解かれるわけもなく、むしろヒートアップしている。これを毎回止めていたとなると、大地は疲れて夜逃げした、という可能性すらあり得る。

 そんな三人を見つめながら、セシファーは怪訝に思った事があった。


 自称絶対に当たる占い師のセシファーだが、謎な部分があったのだ。

 それは大地の殺される場所である。

 その場所は、神殿のような高貴なる造りで、雲が下に見えた。つまりは天空に存在する場所なのだ。だが、そんな場所はない。この世界には土地を天空に上げる技術はない。しかし、確かに予知では大地が死ぬ場所は空の上にあるのだ。

 もしかしたら、大地を殺す相手の能力なのか。


「おい、ロリババァ、聞いてんのか?」

「すまぬ、ちょっと考え事をしておった」


 考えを中断させ、セシファーは優の言葉に答えた。

 変な事を考えていたわけでもないのに、優は凄く震えながらセシファーを睨んだ。


「お、おい……。まさか、俺の童貞を奪うとか考えてるんじゃねぇだろうなぁ……」

「失礼過ぎるじゃろぅがぁ! ワシが今までに、そんな事をしようとした試しがあるか!」

「いや、日常茶飯事じゃねぇか」

「な!? たかが添い寝やほっぺたにキスを嫌がるお主に、そこまで言われる筋合いはないわぁ!」

「立派な犯罪だボケェッ!」


 喧嘩をしていたフフィとハーバンは、別のところで始まった言い合いに視線を移す。仲裁していたレイは、再びそちらの喧嘩を鎮める為に駆けつける。


「街中で喧嘩しないでくださいよ!」

「あ? うるせさいぞ! 女装主義者!」

「おいロリババァ! テメェ何言ってやがるんだ! こんなのどう見ても女の子にしか見えねーじゃねーか! 頭を地面に擦り付けて土下座して地獄に行きやがれ! このクソロリババァ!」

「はぁ……」


 少なからず、レイは傷ついた。いや、わかっていた事だけど、女性だと勘違いされているらしい。このやり取りも何度目かわからないけど、いつまで経っても女だといわれるのは困るというか、ダメージが大きい。

 喧嘩が止んだと思い、セシファーを見やると、いきなり涙を滝のように流していた。


「そ、そこまで言うことないじゃろうがぁ……」


 いきなり泣き出したセシファー。今までの性格を考えると泣きそうにはない筈なのだが、どうしたものか。

 彼女を泣かした張本人を見ると、どうやらスッキリしている様子だ。


「ふぅ、やっと煩いロリババァが黙ってくれた。さ、レイさん。こんなロリババァ放っておいて、行きましょう」


 そう言って手を差し伸べるレイ。心優しいレイにとって、その手はセシファーにこそ向けるべきなんじゃないかと思えてくる。それに、男同士で手を握るのって、なんだか変である。

 半ば呆れるように溜息を吐いた。レイはジト目で優を見つめる。


「小さい女の子を泣かしたらダメだって教えてもらわなかった?」

「いや、見た目だけは小さいかもしれませんけど、中身はクソババァなんでその理論は当てはまりませんよ」

「………………」


 何を言ってるんだろう。この男は生きている次元が少し違うな、とレイは感じた。

 これ以上、別次元を生きる優に話しかけても無駄だと思い、セシファーに手を差し伸べる。


「セシファーさん、行きましょ――――」


 瞬間、泣いていたセシファーがレイの手を、まるでティッシュを丸めるように力強く握りしめた。

 泣いて腫れたせいもあってか、眼光を鋭くしながら囁いた。


「……後で必ず殺す」

「ひっ!?」


 百戦錬磨だった筈のレイですら、その不気味な笑顔を見て背筋を凍らせてしまった。このセシファーという人間は、警戒が必要だとレイは判断した。

 二つの喧嘩を仲裁し、既に店で働く以上の労力を使用したレイは、大きく溜息を吐いた。特にフフィとハーバンの喧嘩を止めるのは慣れているけど、優とセシファーの喧嘩はちょっと本気が入ってるせいもあってか、仲裁作業はいつも以上に疲れさせるものだ。


「……ここにいないとなると、攫われちゃったんですかね……」

「可能性はありますけど、それだと、どこに向かったのかを知りたいですよね。わざわざ大地さんを誘拐して何がしたいのか……」


 フフィとレイが真剣な顔をして相談していると、優はセシファーの両頬を引っ張る。


「な、何するんじゃ!?」

「お前、何か知ってるだろ」

「うぐっ」


 優の鋭い指摘に、両肩を跳ね上げさせるセシファー。どうやら図星だったようで、冷や汗が彼女の頬から垂れる。

 図星の様子をすぐに感じ取ったフフィ、ハーバン、レイはすぐに詰め寄った。


「何か知ってるんですか!? 大地さんはどこに!」

「大地様の居場所を教えてください! 私だけに!」

「僕も昨日の敵に一泡吹かせたいので、早く教えてください!」


 三者三様に食いつくスキル屋の店員達。

 その熱心な姿を見て、セシファーは観念したように一息吐く。


「……教えてやってもいいのじゃが、ここにいる者達のうち、奴に勝てるような“力”を持ってるのは一人しかおらん」


 これで諦めるだろう、そう思った矢先にレイは、まるで親の仇を見るかのように鋭い視線を寄越した。

 視線を受けたセシファーは一瞬、背筋を凍らせる。


「なら、その“力”とやらを持ってる僕一人で行きます。昨日の借りは早めに返しておかないといけませんから」


 ――――この男……昨日の今日で勝てると思っているのか!?


 セシファーの占いでは、昨夜スキル屋を襲った者に、レイは勝てないと出ていた。だが、本当はその占いなど外れていたのではないか、と思うほどの強烈な雰囲気を醸し出していた。

 これが、忘却のギルドを第二位まで昇華させた男の力なのか。そう感じた。

 だが、弱者を強者に殺させるような酷い感性を、セシファーは持ち合わせていない。

 レイから視線を逸らし、セシファーは優の肩に手を置いた。


「お主は誰にも勝てん。じゃが、優ならば勝てる」

「あ? 俺?」

「そうじゃ、優なら勝てる力を持っておるのじゃ」

「聞き捨てなりませんね」


 セシファーの確信。それは≪十能の皇帝≫の一人。二宮 優ならば勝てるという絶対的な自信だった。

 以前、セシファーは優を拾ってから、彼の面倒を数ヶ月に渡って見てきた。その際に、優ならば九星 大地と同等か、それ以上だと感じた。

 しかし、当然、レイは面白くない。あの大地と戦い、負けたものの、未だに旧サファリ・ラジーナの副団長としてのプライドが捨てきれていない。

 メイド服のレイは、アブソーションを取り出して、前に大地にもらったスキル。『納刀』を使ってストライク・ソードを顕現させた。


「なら、ここで僕が彼に勝てば、大地さんの居場所を教えてください」

「いいじゃろう。じゃが、ワシは絶対にお主には勝てないと思うがな」


 絶対的な自信。それが何よりも、優が強いという証明の他ならない。

 優は冷や汗をかきながら、頬をポリポリしている。そんな彼は考える。


 ――――冗談じゃない、とか思ってたけど、もしかしたら、これでおっぱい触っても全然問題ないよね! 俺、貧乳も好きだよ!


 煩悩だらけに染まっていた。

 その姿を見て、ここにいる全員が『なんだかなぁ……』という思いでいっぱいになった。

 しかし、レイはすぐに気を取り直して、相手を静かに睨みつける。こんな男がレイより強いだなんて信じられない。それが彼の中では許せないのだ。

 すぅーっと静かに深呼吸をして、レイは己の中にある魔力を溜めこむ。そして、それが完了すると、二重の瞼を持ち上げる。


「行きますよッ!」


 街中で突然、コンクリートの地面を蹴飛ばし、衝撃波を散らすレイ。移動速度は凄まじく、その衝撃は街で買い物をしている客達の髪を揺らした。

 ストライク・ソードは槍モードになり、その刃の行く先は標的である優に向いている。

 あっという間に、優の目前に到達したレイは、即座に槍を突き刺す。


「ハァッ!」


 短い気合を込め、刃を真っ直ぐ走らせた。それは閃光の如く、速い。

 高速――――いや光速ともとれるべき動きのレイに、一瞬セシファーは息を詰まらせた。もしかしたら、優の能力(・・)が発動する前に負けてしまうかもしれない。そう感じたからだ。

 レイの光速の槍は、優の首に容赦なく突き刺さったかのように思えた。


 しかし、キンっというまるで金属と金属をぶつけたような音が、街を行き交う人々の鼓膜を突いた。


 フフィとハーバンも、その現象には驚いているようで、目を見開きながらレイの槍が接触した箇所を眺めている。

 セシファーも同じだ。安堵の溜息を吐きながらも、優が負けるわけがない。どこかでそう信じていた。そして、それは当たっていたのだ。

 優の首に、槍は刺さっていない。


「――――なっ!?」


 レイの槍が狙っていたのは首だった。いくら遊びや試しとはいえ、レイは殺すつもりで跳びかかった。だが、今、レイの前には驚くべき現象が発生している。

 

 その縁は紅く、まるで幻獣種の攻撃すらも通さないような太い板。


 優は笑って、その板から顔をひょこっと出した。


「レイさん。俺を殺すつもりで来たでしょ?」

「え、ええ……。だけど、その盾は……」


 驚きのあまり、レイは息を飲む。

 その板は盾だ。

 この世界では、知らぬ者がいないほどの有名な最強防具。

 その名前は――――。


絶対(イージス)の盾。俺のいた世界じゃ、有名な最強の盾だ」

「……ま、まさか……。で、でも何で――――」

「それは今から説明してあげますよッ!」


 瞬間、レイは殺気を感じ、すぐに後方へと跳び退いた。

 コンクリートの地面で滑るのを抑えるように着地したレイは、殺気の正体を知る為に前方にいる優に視線を送る。

 そこには、驚くべき優の姿があった。


「な、何でソレを……」


 優は、武器をいつの間にか出していた。

 その武器は、剣か槍なのか判断に難しい武器。


 ――――そう、ストライク・ソードだった。



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