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若き元社長の、創造能力。  作者: 大岸 みのる
第一章:六部・若き元社長の、起業。
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エピローグ

 瓦礫が多く積まれた街。

 そこは一ヶ月前、津波に襲われ、台風に襲われ、大火事に襲われ、落雷に襲われるという大災害に遭った地である。

 これは千年に一度の災厄、という事で世界には伝えられた。

 この街は一ヶ月前経った今も、多くの家が崩れていた。

 しかし、そんな家を建て直す為に、スラムの住人が動いた。

 仕事がない、彼らは必死に働き、一般人の家を建てることによって、給料が発生し、王国からも激励賞として、スラムに住んでいた者達も家を自ら建て、仕事を貰っていた。

 おかげで、スラムがこの街から消えたのだ。

 王国も税金を引き下げる、という行動に出たのだ。その理由は、まぁスラムの人々が働いてるのを見て、感動したのか。それとも、近隣の国から何か言われたのに違いはなかった。

 そんな城下町の市場近くに、とある店がオープンしていた。

 名前は〈ナインスター〉。美男美女が店員で、尚且つスキルを売り買いする奇妙な店だ。

 現在、開店前だからか。店内には従業員が集まっていた。


「フフィ、ハーバン。レイを抑えろ」

「「はい」」


 命令したのは、社長の九星 大地。白いスーツに白い手袋をした人間だ。

 彼が命令したのは、猫耳を生やした亜人種のフフィ・クリティリィム。メイド服を着用した姿は、可憐であり、一ヶ月前とは別人かと思えるほどのプロポーションを誇り、多くの男性を虜にした、まるで花のような女性だ。

 もう一人は、赤い宝石のヘアピンをした、絶世の美女。カーバンクルの希少種。現在は人間に変身していて、メイド服を着こなしている。彼女の魅力は、まるで薬。一度目にすれば、誰もが求めるほど。例えるのなら、宝石だ。

 そして、抑えられたのは、レイ・キサラギ。一月前に消滅したギルド、サファリ・ラジーナの元副団長である。サファリ・ラジーナも謎の解体があって、働き口もない彼はこの店で従業員として雇ってもらっていた。

 彼は大地から逃げる。


「君は分かっていないな」

「分からなくていいです! そんな物着なくていいです!」

「そういうわけにも行きませんよ、社長の命令ですから」

「フフィさん、僕は男ですよ!?」

「社長命令は絶対、ですよね。大地様」

「ん、そういうことだハーバン」


 メイド服姿の美女二人に、取り押さえられるレイは頑なに拒否していた。

 大地の手にはメイド服。容姿端麗で女性的な顔立ちのレイには、メイド服を着てもらおうと思っているのだが、さっきから却下され続けている。


「なら大地さんもメイド服着てくださいよ!」

「ん、確かにそれは名案かもしれないな」


 レイの苦し紛れの提案に、大地は頷いた。

 大地がメイド服を着る姿を、フフィとハーバンは想像する。

 だが、二人の美女はすぐに顔を横に振る。


「「絶対ダメです」」


 二人はレイの提案に、却下をした。

 大地は頬を膨らませながら、文句を言う。


「俺だって似合うと思うのだが」

「そういう問題じゃないんです」


 フフィが猫耳を立てながら、大地を睨みつける。『七神魔法』を使ったフフィは大人になっている。そのせいか、前よりも迫力がある。胸の膨らみはあるし、背丈もハーバンと同じくらい。

 全く知らない女性へと変わっていて、最初その姿を見たときは驚いたものだ。


「ん、でも、レイもメイド服なわけだし……」

「その意見はボツ、です」


 ハーバンはウィンクしながら大地に言った。

 大地はいたたまれない気持ちになりながらも、レイに近づく。


「そういうわけだ。レイ。君も男ならやるしかない」

「男だからしたくないんです」

「そう言うな。これは社長命令だ。これを着なければ、君を社員として認められない。よって給料はなしになるぞ」

「そ、そんなぁ……」

「そういうわけだ。フフィ、ハーバン。頼む」

「「はい!」」


 こうしてレイはメイド服を着ることになるのだが、本人が女性服を着ることに目覚めるのはまた別の話だ。

 メイド服姿のレイにフフィとハーバン。

 そして、その三人を前に大地は言った。


「こうなってしまったのは、仕方のないことだ。俺達に一兆リーの支払いを要求してきた王国への仕返しだと思ってくれ」


 世界では天災だと言われているが、王国にはフフィがやったことだと、バレていたのだ。多分、逃げ延びたバジリーナの仕業だが、それは仕方のないこと。

 その負債を返す為に、店を建てたのだ。


「そろそろ時間だな。開店だ」

「「「はい!」」」


 三人の気合が入った声が響く。


 一ヶ月前。大地はカプセルを開けることに失敗したと思っていた。

 だが、カプセルは開いていた。

 アビリティでカプセルを壊すことに成功していたものの、ダメージを受け過ぎた大地は、確認するまでには至らなかった。

 そして、大地はフフィに救われ、この一ヶ月は回復に勤めていた。

 そこでの借金もあり、結局大地は働かなくてはいけなくなった。

 それでも、恩人が三人もいる。この三人に恩を返しながらも、この世界で生きていこう、そう大地は神に誓った。


「大地さん」

「どうした、フフィ」


 フフィは笑顔で言った。


「ありがとうございます」


 大地はフン、と照れ隠しに笑う。

 ハーバンとレイが、店の扉を開くと、そこは客の行列ができていた。

 そして、大地も含めた皆は言った。



「「「「スキル屋、〈ナインスター〉へようこそ!」」」」



 誰かが言った。

 その店は、この世界では夢のようなモノを売っていると。

 それはスキル。

 魔物がいるこの世界では、必需品であると共に、誰もが強いスキルを求め、ダンジョンに潜る。

 スキル屋は開店したばかりだ。




【若き元社長の創造能力】




◆◇◆第一章・完結◆◇◆

ここまでお付き合いいただけて、ありがとうございます。

これにて、第一章は終了です。他に二話ほど外伝があるので、よろしければ見ていただけると嬉しいです。

第二章は未定です。


よろしければ感想をいただけると、ありがたいです。

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