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EP01-05 セックスしないと起動しない巨大ロボット、大地に立つ!


 なにこれ。

 なぜ……ザクロ…そっくりいや見間違いそんなはず…ないけどこの顔はザクロでさっき教師と一緒に……違う違う違うッ!?

 思考が、意識が、眼の前で繰り広げられる光景を排除しようともがいている。

 でも──。

 僕の体に備わる感覚器官が、悶える女性を……。


「な……な…これ」ようやくそう声を出せた。驚くほど震えている。

「ユイちゃんとゴリ松トラよ」


 至極当たり前の説明をするかのような冷めた口調が耳障りだった。


「セックス……」

「いや〜やっぱりトラの計算通りトラね〜。二人は相性ぴったんこトラ! マトリクスの活力がグングン漲るトラ!」


 二人は双方の瞳を愛でるように見つめ合い、再び口を重ねる。すると、マトリクスのエネルギーメーターが光り輝き、溢れんばかりのパワーがマトリクスを満たしている。


 指先が醸す刹那の感情の絡れが、じわっと僕の下半身を溶かすような恐怖を浴びせた。


 一方的なはずなのに、でも不思議とザクロは喜んで……あ、あ、あ……違う、おかしい、しっかりしてくれ……。ザクロは、無理やり……涙ながらに……っ!


 普段のどこか冷めたザクロが発するとは、到底信じられない声色だった。

 違う、違うよ、違うって……。

 僕は自分自身に訴える。これはこのトラとかいうわけのわからん生物が仕掛けた錯覚で、こんなの全部フェイクだ、ザクロが…ザクロがぁああ……。

 あ、でもフェイクにしてはあまりにも腥い。

 リアルすぎる。

 AIが作ったイラストや動画を見た時のような、不気味な違和感がどこにもない。

 僕の脳が、これが現実だと突きつけてくる。

 ドクドク……と頭痛が脳の血管に染み出すように広がっていく。

 わかってしまう。

 幼い頃からずっと隣で眺めていた僕は、目の前でだらしなく涎を溢している少女が紛れもなくザクロだと理解し、そして……受け入れてしまう。


「ヒロ!」


 僕の視界を遮るように、トラが目の前に浮いている。「なにぼーっとしてるトラ! カイジュウにやられっぱなしトラ! 負けちゃうトラっ!!」

「でも……ザクロが……」

「も〜ゲームでは無敵だったトラ! やっぱり本番は精神状況の関係で実力が発揮しきれないトラかな〜。あ! そうだトラ! ヒロ、これを見るトラ!」


 トラは小さなスクリーンを表示させる。

 そこには、無数のSNSや掲示板、動画サイトのコメント欄が描写されていた。


『ロボット、街を守ってくれ!』

『負けるなっ!』

 ──あぁッ!!

『がんばれ!』

 ──んっんん~~ッ!

『なんとかなれー!』

 ──あんッ! あっあっ!!

『なんか知らないけどなんかわかったっ!』

 ──あぁぁぁ……あ~~~ッ!

『逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!』


 コメント欄を引き裂くように、ザクロの声が響き渡る。

 なにも、あたまのなかに、はいってこない。


「みんなヒロを応援してるトラ! 負けちゃダメトラよ! それに、ユイちゃんは見ての通り問題無いトラ! ほら、好感度測定器も目盛を振り切れるほどに──」


 トラを弾き飛ばそうと手を振った。

 しかし、トラは簡単に避ける。


 僕は、どうすればいいんだ?

 襲われているザクロを助ける? 

 あ、ほら……。

 壊れたオモチャみたいに震えてる。

 今まで見たことのない表情で教師を求めている。

 ……助ける、必要あるの?

 スクリーンから目を背け、操縦桿を握り締めるも、二人の情愛に満ち溢れた性行が離れない。

 ザクロと目が合う。

 長い睫毛に縁取られ、ひときわ大きくキラキラと輝くその瞳は、まるで一点の曇りもない宝石のようだ──。

 そんなわけない。

 ザクロは僕を見ているわけがない。彼女の笑みに彩られた視線は教師に注がれている。僕の先には、ただの虚無が広がっているだけだ。

 ……いつの間にか、二人は正常位で静かに見つめ合っている。

 マトリクスが二人の感情を表現するかのように震えている。

 教師は腰を揺らす速度を意図的に抑えていた。

 両手を重ね、吐息すらまぐわうように顔を寄せ合う二人。

 スクリーンは教師の視界を再現しているのか、ザクロとの距離が近い。

 あの大きな二重の垂れ目が、快楽を注がれて、ふにゃりと蕩けたように崩れている。

 笑っていた。可愛い笑顔だった。

 嫌がってる様子など微塵も感じられない。

 キモいと嫌悪し、蔑み小馬鹿にしていたゴリ松と、湿り気を帯びた情熱を確かめ合うかのように、見つめ合っていた。


『いいのか?』教師はニヤつきながら訊く。『ヒロくんが、ってこと?』『お前ら二人は』『……ヒロくんは…先生とセックスしてるって…知りません。まぁ、先生にキスされかけたとこ、見られちゃいましたけど……大丈夫です』


 そうか、今、僕が、二人を覗き見しているなんて、二人は知らないんだ。

 突き放されるような疎外感。

 その中から怒りと……まだこの光景を信じられない幼さが喚いている。


 ザクロもクスクスと優しく微笑んだ。

 二人だけの秘密を共有し合うかのように。軽くキスを重ねる。


 その時、警告音が響いた。

 マトリクスはカイジュウに一方的になぶられていた。周りでトラが喚いている。

 そうだよ、

 戦わないと、

 なんで?

 世界を……守るため? いやそんな気高い自信も勇気もない……。

 ただ、ザクロが──。

 だってほら……昔、僕は約束したんだろ。ザクロを守るって。もう二度とザクロに悲しい目に遭わせない、って。その時もザクロは泣いていた。いや、こんな喜びを顔に滲ませてはいないけど、とにかく泣いていたんだよっ!

 僕は震えながら操縦桿を握り直す。

 カイジュウの追撃をかわし、一気に跳躍して距離を取った。

 マトリクスの右腕は大破していた。レーザーブレードを左手で逆手に構える。

 カイジュウが一歩距離を詰める──そのコンマ1秒早く駆けた。


 ……まさか。


 相手はJKだろ? 教師だよな? お前…自分の教え子に手を出して許されるとでも思ってんのかよ!? この後に及んで僕はまだ……何かを期待している。主人公のピンチにヒーローが颯爽と現れ、助けてくれる。そんな少年漫画のような優しい展開を心の底から願っていた。

 いや、もう無理だろ。

 なんでまだ大丈夫だと、思ってるんだろう。危機感がなさすぎる。

 誰か、僕を助けてください。


 僕はすれ違いざまにレーザーブレードをカイジュウに突き立てた。カイジュウのコアを容易に貫く。

 たかがメインカメラが大好きな女の子の顔で……覆われているだけ、だ。


 ザクロは快楽と達成感で緩んだ笑みを滲ませる。

 見つめ合いながら教師は首を伸ばす。


『え? またキス? ……はぁい…んっ!』


 教師はそのままザクロに体を折り重ね、キスを重ねる。

 ザクロはだらりと弛緩しながらも、そのキスを求めて舌を這わせ、キスを貪る。

 恋人同士が戯れるような軽い口づけ。ザクロの方が、教師に唇を自ら押し付けて、無邪気な好意を可愛らしく振り撒いている。

 そんな顔するんだ。

 やっぱり知らない人かもしれない。

 僕の知っているザクロはもっとクールで、時々ふっと感情を滲ませるキャラクターなんだ。こんな……こんな毛むくじゃらの筋肉がうるさい中年のおっさんと、キスなんか……絶対にしない。


 ……さっき、僕と交わしたキスの感触なんて、もうザクロの中には一欠片の記憶も残っていない気がした。


☆★☆★


// 作者より:

本作は、こんな感じの話なんです。

一応最初に『なんでも許せる人向け』と記載してますので、それをご了承の上でお読みいただいたと思われますので、何も問題はないと認識しております。


もしも本作の感想や評価をいただけたら大変励みになります。また、SNSなどで拡散もぜひお願いいたします!


ただ、本作のNTR/BSSっぽい要素に関しては、ネタバレをお控えください。

何も知らない状態で本作を味わっていただきたいのです。

もし、どうしてもNTR/BSSについて言及したい場合は、「ヌゥ・エ・トラ」を代わりにご利用ください。

例:ヌゥ・エ・トラのシーンはびっくりした、など。

本作の感想欄でネタバレに該当すると思われる文章については、恐縮ですが確認次第、削除させていただきますのでご了承ください。


本作は全年齢版のため、体育教師とヒロインの濡れ場は配信停止にならないよう大幅にカットしておりますので、えっちシーンも全部見たい! という方はノクターンノベルズに投稿している本作をお読みください。


なお、本作はまだまだ始まったばかりです。

主人公は、体育教師から彼女を取り戻せるのか? それともこのままBSSルートまっしぐらなのかは作者自身もわかりません。読者の皆様の応援次第では、ループとか発生してハッピーなエンドにたどり着ける可能性がございますので、今後の展開に機体して応援いただけると嬉しいです!!


☆★☆★



// 続く

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