EP03-08 終始、体、重ねて【合宿最終日 朝のベッド】
『…っ…ンッ』
まただ……。
ノイズが頭の中で響く感覚──。
合宿三日目の朝、昨日と同じくザクロの声を目覚まし替わりに僕は起床した。
『…はぁ…はぁ…』
スマホを見やると、──もちろん教師の家のベッドが映し出されていた。
薄い掛け布団を被った教師が映っていた。
けど……ザクロが見当たらない。もしや、今日はザクロも教師に飽きて自宅に帰った? ……そんなはずがない。だって、昨日、二人は眠りに落ちる最中、ペニスを挿入し続けてとザクロが教師に懇願し、ザクロの願い通りペニスを膣内に挿入し、二人は繋がったまま眠りに落ちたのだから……。
教師の下半身にかかっている掛け布団、その股間辺りが大きく膨らんでいることに気づいた。
『……むっ…はぁぁ……お、もう朝か』
教師が目覚めた。
目を擦りながら腕を伸ばしたところで、ピクッと体が動きを止めた。さっと周りを見渡した後、自分の腰にかかっている掛け布団に視線を落とした。
膨らんだ掛け布団の内側で、何かが蠢いている。
一瞬怯んだように驚くも、すぐにニヤッと余裕の微笑みを浮かべた。そして、再び目を瞑り、狸寝入りを始めた。
膨らんだ掛け布団はゆっくりと動いていた。
教師は口元を歪めながらも、声を出さずに堪えている。
息が荒くならないよう、静かに呼吸を繰り返す。
『…うっ……』
思わず教師は呻いた。
その反応を揶揄するようにクスッと鼻で笑う音が聞こえた。
掛け布団が大きく揺れた。
淫猥な音が、映像から染み出るように聞こえてくる。
教師は体に力を込めて、目をぎゅっと瞑りながら悶えていた。
色々疎くて、鈍い僕でも……その意味を理解していた。
スマホのスピーカーから響く音が、次第に音が激しくなる。
薄い掛け布団が丸く盛り上がり、音に合わせて小刻みに揺れていた。
不意に、教師の体が痙攣する。
はぁ……とため息をついた瞬間、笑い声が混じったザクロの声が響き渡る。
教師の脈動に合わせて、膨らんだ掛け布団も跳ねる。
『はぁ~~~』と教師は盛大なため息をつく。表情が緩み、クスクスと吹き出す。
教師は上半身を起こして掛け布団を捲る。
果たせるかな、ザクロの姿が──。
『お前なぁ、朝っぱらから』
『昨日のお返しです。ってか途中から起きてましたよね? ピク! って跳ねたし。でも寝たフリなんかして、あれ、そんなに気持ちよかったんですか?』
『あぁ……最高だよ』
教師はそっと手を伸ばしザクロの頭を優しく撫でた。
その太くて逞しい指がザクロに触れると、ザクロは心底嬉しそうな笑みを浮かべ、その指を掴む。
しなやかな指が優しく絡みつく。
ぎゅっ……とお互いの力加減から、その感情が僕の視界から伝わってくる……。
ザクロはじ~~っと教師を眺めながら、まだ舐めていた。
まるでアイスを舐めるようにゆっくりと動く。
今度は、自らの頬で擦る。
まるでカワイイぬいぐるみを愛でるような表情で、頬を擦り付けていた。
すりすり……と優しく。
左右の頬で擦る。時々教師の反応を大きな瞳で観察しながら……。
ちゅっ、
ちゅっ……と音を鳴らす。
ザクロの大きな二重の瞳が爛々と輝き、妖艶な微笑を浮かべながらの愛撫。
『我慢できない? またあたしの口の中に出したい?』
教師はコクリと頷く。
教師は掛け布団を掴むと、ザクロの上に再び被せていた。
すぐにザクロが掛け布団を跳ね返す。
『なんで隠すの?』
『いや……あまりにも……破壊力がすごいというか……』
『ダメです。せんせいの顔見たいから隠すの禁止!』
じっと教師を見上げている。
ザクロの二重の大きな瞳が、彩りを増すように輝きながら。
それは……幼馴染の僕ですら、見たことのない……浴びたことのない、眩い視線だった。
重なり合う二人の指先には力が籠もっている。
『……ん? もうイキそうなんですか?』
『あぁ』
『朝から2回……。今日もまだまだするんですよ。全部出しちゃダメです』
『だったらそんなエロい顔するな……』
『ね、うまくなりました?』
『……あぁ』
『お~部活はぜ~んぜん褒めてくれないのに!』
『お前は……バレーよりもこっちの方が才能あるよ』
『イヤすぎる』
朝日の注ぐベッドの上。
静寂の中で、二人は表情を緩めて見つめ合っている。
僕が……こうして盗み見ているのが烏滸がましいと思うほど、二人きりの幸福に満ち溢れた空間。
教師は再び──。
『……はぁ、まっず…』
文句を口にしながらも、教師を憂う自愛に満ちた笑みを浮かべていた。
その眼差しは、身震いするような恐怖と嫌悪感に満ちていて、もう見ていられなかった。
僕はスマホを伏せて、その場から逃げるように部屋を出た。
☆★☆★
昼休みに頬張る惣菜パンの味は、いつもと変わらない。
よくある漫画やアニメのように、パサパサして味がしないとか、鉛を飲み込んでるような不味さもない。普通に美味しい。
今日も、僕は朝から胸がざっくりと抉られるような光景を何度も目の当たりにしたはずなのに、普通に腹が減る。屋上から広がる気の抜けた青空も灰色に見えたりもしない。
いつもの日常。
カイジュウが暴れ回ること以外は、何も変わらない。
傷ついている、フリなのかな……。僕は、ザクロに片思いしていたと、誰よりもザクロを想っていたはずなのに、実は……そこまでじゃなかったのかも。
自嘲しようと思っても、顔の皮膚が笑みを作ってくれない。
脳裏に焼きついた記憶を振り払うように頭を振る。
こんな時は、部室でロボ研の奴らとどうでもいい話をして、気を紛らわせたかった。
だが、部室には何故か笠置さんがいた。クラスの美少女トップスリーの一角、オタクにも優しい? オタク知識を備えたザクロに匹敵するレベルの美少女だ。
部員二人はまるで奴隷のように彼女の世話を焼いているのを見て、中に入るのをためらった。
「ヒロッ!!!」
パンを食いちぎったところで、トラが現れた。
相変わらず物理法則を無視してふよふよ浮いている。
非日常の化身のはずなのに、もうコイツにも慣れた気がする。
「ん?」
「来たトラ!」
「……あぁ、何しに?」
「トラのことじゃないトラッ! あれを見るトラッ!!」
トラの顔が向いた先には……巨大なリングが浮いている?
飛行機にしては、あきらかにデカすぎる。
清々しい青空の中に異物を落とし込んだかのように、カイジュウが現れた。
「三日間は大丈夫だって言ったよな?」
「うーん、そのはずだったトラだけど、どうやらトラの計算を上回ってしまったトラ。こうなっては仕方ないトラ、今から戦うトラよ!」
「今から? 午後の授業はどうするんだ」
「侵略者出現につき休校になるから問題ないトラ」
「そっか。いやでも……ザクロたちは──」
「もちろん、一緒に戦うトラッ!」
☆★☆★
// 続く




