EP03-07 終始、体、重ねて【合宿二日目 女子バレーの更衣室、シャワールーム】
また別の空間が映し出される。
眩い蛍光灯に照らされた、狭い部屋。
『一応確認しますけど、ホントにこれでするんですか?』
『もちろん。いいか……夢なんだよ。……全女子バレー部顧問の、な』
『それ先生だけです……』
女子バレー部の更衣室の中に、ザクロと教師は二人きりで佇んでいる。
教師は全裸だったが、ザクロは……これは、バレー部のユニフォーム、だろうか。
体にぴったりとフィットするブルーのノースリーブのシャツと、太ももが眩しいショートパンツを履いていた。肩から袖にかけて鮮やかな黄色のラインが二本入り、そのラインはユニフォームの裾に向かって細くなっていた。
背中には大きな10番がプリントされ、下には学校名が刺繍されている。
ザクロは長髪をポニーテールに纏めていた。
部活や体育など運動する時に長髪が顔に纏わりつくのを嫌がり、いつもポニーテールに結んでいた。
後れ毛が自然な流れでふわりと靡き、普段と異なる雰囲気にドキリと胸が鳴る。
ポニーテールもよく似合ってると思う。普段は長髪で隠れている首元も顕となり──ザクロのうなじをニタニタ不気味な笑みを浮かべて見入っている教師が相変わらずノイズだった。
ザクロはバレー部に所属し、校舎の端にある体育館で練習してるため、放課後もすれ違うことはない。試合にも応援とか行くことも無いので、ユニフォーム姿のザクロを初めて見た気がする。
更衣室の奥に置かれた背凭れの無いベンチに教師は腰を下ろすと、ザクロを誘い込む。
ザクロはため息をつきつつ、教師の股の間に腰を下ろした。
ザクロがこちらを見上げるようなカメラワークで描写される。
大きな二重の瞳が、カメラ越しに僕まで見抜くような威圧感。
もちろん、その瞳が見つめているのは教師だ。
ザクロは教師に背中を預け、わずかに頬を染めながら小さく微笑んだ。
『しかしお前はユニフォームがよく似合ってるな』
『はいはい……。ってか普段ヤラシイ目で眺めてたんてショックなんですけど』
「ユニフォームは目に悪いんだよ。特にこの太ももとかな』
ショートパンツから伸びる太ももに指を這わす。
ザクロは不快感からか、むっ…と一瞬口を結ぶも、教師の指が太ももを滑り、股まで指が近寄ると彼女の大きな瞳は快楽に蕩けていった。まるで何かを期待するようにくすっと微笑む。
ザクロの深く吸い込まれた息が、薄い吐息となって溢れる。
ザクロの体に教師の指が淫猥にまとわりついても、嬉々とした笑みを薄っすら顔に貼り付けるザクロの姿が僕を苦しめる。
『ん?ブラはしてないのか?』
『どうせすぐ脱がされるから着てません』
『……100点、だな』
『ホントグロい……』
またするのか?
しかも……女子バレー部の更衣室で……。
わかっていたはずなのに、どうしようもなく動揺する。
『……はぁ…』
ザクロは呆れるようにため息を返す。
でも、ザクロの口元が僅かに笑みを縁取り、満更でもないことが伺える。
しっとりとした吐息を溢しながら、ザクロは体を揺らして悶えている。
ザクロは瞳を潤ませながら教師を見やる。その熱を帯びた視線を受けて、教師の指がショートパンツを下げようと掴んだ時だった。
──パタパタパタッ
足音が響く。
二人の体がビクッと跳ね上がった。一瞬の間の後、勢いよく扉が開いた。
『嘘、もう?』
ザクロは教師に体を寄せた。教師もゴクリ……と唾を飲み込み、ザクロを片手で抱えながら扉を見つめていた。
『は〜、終わった終わった〜〜!』
バレー部の女子生徒が入ってきた。
抱き合う二人を見かけるや否や『あっ!』と声を上げた。ザクロと教師の体が硬直する。『やべー用具入れの鍵かけたっけ?』とその女子生徒は高い声を出した。
『私が閉めました』続いて入ってきた生徒が声をかける。
『え〜ありがとぉ!』
数人の女子バレー部員が更に入ってくる。
二人と扉の間に遮蔽物が無いため、視界に映り込んでいるはずだ。しかし、誰もザクロと教師に気づかず、自身のロッカーに進んだ。
『……普通にバレたと思って焦ったんだけど』ザクロはそれでも小声で口にする。教師もこくりと頷いた。
『ってか本当に見えてないんですね。教室の時もだけど、こんな近くにいるのに気づかれないって変な感じ……。おーーーいっ』
更衣室内に響く声量でザクロは声をかける。
もちろん女子バレー部員は誰一人として反応しない。
『ねぇ、外に行きましょうよ。みんな着替えるし……』
しかし、教師はクスッと微笑むだけで微動だにしない。
ぎゅっと背後からザクロを拘束しながら、着替える女子バレー部員を眺めていた。
『先生? ……いや、まさか…みんなの着替えるとこ見るんですか?』
硬直していた教師の指が、再びザクロのショートパンツを下げ始めた。
教師は両手でザクロの腰を持ち上げる。
ザクロは抵抗する雰囲気をにじませる。
表情や体の硬直とか……。
でも、もうザクロの心情を盗み見なくてもわかる。
ただそういうフリをしてるだけだ、と。他の部員たちへの罪悪感……は覚えているかもしれない。いや、それよりもこの状況を踏み台として、教師の情欲を更に引き上げるために……。
ザクロは悟ったのか、体から完全に力を抜いて教師に体重を預ける。
『──ユイが』
突如自身の名前が呼ばれ、ザクロは目を大きく開いた。
『休むの珍しいよね〜。明日も来れるかわかんないって言ってたし』
『ゴリ松もじゃん。あいつ元気だけは取り柄なのに』
『……てかさ、なんか怪しくない!?』
『何が?』
『ユイとゴリ松! 二人で同時に数日休むとかさ~。もしかしたら口裏合わせてサボって密会! まさかまさかの……女子生徒と教師の禁断の……』
『ゴリ松と? マジありえないでしょ』
『ってかユイって、もっと細くてシュッとした感じがタイプじゃなかった?』
『そうなん?』
『だってあの彼氏も細くてカワイイ系じゃん』
『あれって彼氏なんだっけ?』
『……適当こいてんじゃねー』とザクロは口を尖らせて言う。
『やっぱ彼氏だったのか』と教師は大袈裟な口調で笑った。
『だから違います……何度言えばいいんですか、友達です……』
『でも、キスはしたんだろ?』
その言葉をザクロは噛み締めるように聴いたが、すぐに小さく首を振った。
『はぁ……』と突き放すような、冷たいため息をつく。
雑談に興じる部員から視線を剥がし、首を回して教師を眺める。
『…せんせ…』ザクロは目を瞑り、首を左右に振る。『もう……覚えてません。忘れちゃいました……。もう先生とのキスしか、記憶に残ってないんです……』
ザクロは教師とキスを交わす。
それを合図に、教師はゆっくりと──。
誰も気づかない。
二人が座っている箇所は、ロッカーが並んだ離れた場所にあるため、触れることもない。まぁ、触れたとしても気づかないのだろう。だって、さっきあんなに真横で喘がれて、キスまでされたのに、僕は何も感じ取っていなかったんだ。
いや……でも、
ザクロが僕とのキス覚えてない……とか言ったので、そもそもキスなんかしていないのかもしれない。
『はぁ〜あっちぃ……』
『おっぱいまろびだすな』
『谷間が蒸れるんだよぉ』
不意に部員の一人がシャツを脱ぎ捨てて、スポーツブラも外して胸を露出させた。
……大きい。
前屈みになると、重力に引かれて胸が大きく垂れた。
ぶらんぶらんっ、と擬音が聞こえてくる程だった。
扇風機の前で風を浴びながら涼み始める。
『はぁ〜』
『目に毒。ってかそんなにでかいと、ゴリ松の視線キツそう』
『え〜ゴリ松先生はあんま見てこないよ』
『そうなの?』
『うん。数学の林とか視線えぐいけど、ゴリ松は頑張って耐えてるぜ。紳士なのか、それとも生徒で卑猥な妄想しないようにって部活来る前にシコってんじゃない?』
『……なんて?』
『男の人って一回出すとテンション下がるじゃん。うちの彼氏とか、まだ始まったばかりなのにすぐ出して満足するんだよね……』
『か、彼氏ッ!?』
『ひぃッ!?』
不意に教師が声を上げた。
ザクロは首をぐるっと背後に回して教師を睨む。
『いきなり奥まで刺すな……』
『悪い……』
『ってか驚きすぎでしょ』
『いや……あいつはこの前彼氏はいませんよ~! って言っていたから……』
『アスカは可愛いし、おっぱいも大きいんですよ、普通いるでしょ。ってか、なんでそんなにショック受けてるんですか……』
『まぁ……あの容姿なら引くて数多か……はぁ……』
『クソデカため息。……ちなみに、アスカの彼氏さんは、先生よりも一回り以上も年上のおじさんですよ』
『なん、だと!? それってパパ活じゃねぇか!? 俺のかわいい生徒に手を出しやがって。絶対に許さねぇッ!』
『何熱くなってるの、キモ。でもアスカは純愛だ、って。まぁ、この前写真見せてもらいましたけど、自分の父親よりも年上。ってか、自分こそどうなんですか?』
人としての倫理を外れた行為に吐き気がする。
しかもザクロを犯しながら……。
『…みんなを見るの、やめてくださいっ……』
『妬いてるのか? どの子もカワイイ子ばかりで目の保養になるんだよ』
ザクロを筆頭に、ザクロ世代のバレー部員はみんな可愛いと評判だった。井上とかも奇跡の世代とか古い漫画のネタを使って崇めていた。
『もうずっと…アスカの胸……見てる。いつもは…見てないんでしょ?』
『あのな、大変なんだぞ。人の目の前でこれみよがしにゆさゆさ揺らしおって。それで見たら見たでセクハラ呼ばわり……はぁ』
『あんなの大きいだけ…です。垂れてますよ。形は……あたしの方が…きれいです』
『いや、垂れ乳も悪くないなぁ。しかしあれを自由に弄ぶ輩がいるとは…』
──部員たちはシャワー室へ向かおうと会話が進んでいた。
『よし、俺たちも向かうか!』
教師は下品な笑みを浮かべながら、まるで品定めするかのように部員たちを眺めていた。
その視線にザクロの表情が青ざめるのがわかる。
ザクロはふらつきながらも教師に寄り添い、片手を教師の股に──。
☆★☆★
女子用シャワー室──。
二人は部員たちの中に紛れるように堂々と向かい、鍵がかかる前に中に滑り込んだ。
『さてと、あいつは……お、ここか!』
教師は舌なめずりするようにニヤついて、目当ての個室を眺めた。
中にはアスカと呼ばれた女生徒が入っていた。
女子部員しかいないからか、個室のカーテンは閉じずにシャワーを浴びていた。
『やっぱり目当てはアスカじゃん……。おっぱい星人』
『見るだけ……見るだけだって』
教師はニヤつきながら、アスカの個室に近づく。
ザクロは教師に寄り添いながらも、そっと前に立ちはだかった。
『……せんせい』
教師の視界を奪うように、唇を押しつけた。
教師は驚きつつも、ザクロのキスを受け入れる。
声にならない悲鳴を絞り出すように「せんせい……好き」と訴えた。短い言葉の端々に、ザクロの感情がしっとりと重くのしかかっている
加えて、その瞳からも、堰を切ったかのように感情が溢れ出していった。
『わかったわかった』
教師は苦笑しながらもザクロを抱き寄せる。
──部員たちはシャワーを浴び終えると、全員部屋から出ていった。
カチャリと、外から鍵がかけられる。
取り残された二人は、火照った体を冷やすために個室に入るとシャワーを浴びる。
教師は流石に疲れたのか、床に腰をおろし……その股の間にザクロが座る。
そこがで定位置と示すように。
教師は優しくいたわるようにザクロを抱きしめながら軽くキスを交わす。
しばらく余韻を楽しんでいると、ふと教師が口を開いた。
『ポニーテールも似合うが、でも俺はボブカットの方が好きなんだよな〜』
『……ヤですよ。あたし、髪伸ばしてますから』
『いや絶対似合う! なぁ頼むよ、髪型を変える気はないか?』
【どうして? どうしてあたしは髪を伸ばしているんだっけ?】
【あぁ、そっか】
【小学生の頃、放課後に教室に戻ろうとした時に、彼がクラスメイトの男子と好みの女子について喋っているのを見かけた。扉の前に立って聞き耳を立てて、それで……】
──だから……ザクロは髪を伸ばしていたのか。
『あっ…! そうやってなんでも言うこと聞くと思ったら……ねぇ……』
『いいだろ? なぁ、絆を深め合うことで、あいつのためにもなるんだろう?』
──そんなこと微塵も考えていないのが僕でもわかる。それを利用して、ザクロを……自分の好みに染めようとしている。ザクロだって……理解しているはずだ。
だが、ザクロは……。
『まぁ…考えておきます…』
// 続く




