EP03-03 終始、体、重ねて【合宿一日目 寝室】
「……トラ、戻してくれ。もうわかった。……お願いだ早く、早く…頼むよ」
次の瞬間には、自室に戻っていた。
崩れ落ちるように、ベッドに腰掛けた。
スマホを放り投げる。
「これで信じたトラか? スマホの映像や文章は偽物じゃないって。全部真実トラ」
「……僕がザクロたちを観察していたと、二人には絶対に言わないでくれ」
「どうしてトラ?」
「どうしても……。もしも二人に気づかれたら僕はマトリクスには二度と乗らない」
まだ体が震えている。深呼吸を繰り返しても、肺の中に空気が入らず、首の途中で外に放出するような違和感……。
……朝からやりまくっていたのか?
でも、明日も……いや、いくら教師が絶倫ヘンタイ教師だろうと、流石に連日何度……無理だろ?
「問題ないトラ! ユイちゃんの体を弄ったのと同様に、教師の体もちょっと弄ったトラ! なんと賢者時間を認識しないかつ何度も連続射精しても男性器が痛くならないトラ! これで三日間絆を深め放題トラよ!」
余計なことを……。
「え~だって望んだのは、二人トラよ」
つまり、明日も二人は朝から飽きるほどセックスをしたってことか。だから風呂場で幼馴染の僕以上に親交を深めていたのか。
それがあと二日も。
ははっ……なんかもう笑える。
ってか、もう……今日だけでいいんじゃない? だって、もう……十分な気がした。ザクロの思考を盗み見なくても、今の僕には手に取るように理解できてしまう。
☆★☆★
『おーい、せんせー。自分が今何をしてるのかわかってますか?』
『おう』
『返事はいい……。ってかおっぱい星人だったんですね……。はぁ、マジで失望です』
『男ってヤツは、みんなそうだよ』
『これ絶対にアスカの胸も練習中も見てますよね? あの子、あたしよりも大きいし』
その日の深夜。
僕はどうしても我慢できず、また二人の様子をスマホで観察していた。
すると、ベッドが映り込む。
……教師の部屋。
そのベッドの上に教師と……ザクロが映り込んでいた。ザクロは、教師の家に泊まっていた。同じベッドで眠っている。
二人は抱き合っている。
教師は……ザクロの胸元に顔を寄せていた。
『たまに、な』
『さいあく。豚箱に放り込むよ』
『触りたいな〜って思ったのはユイだけだぞ』
『フォロー下手クソか』
嫌悪を匂わせつつも、ザクロは優しく教師の頭部を撫でていた。
部屋のライトは点灯していないが、暗闇なのに二人の姿は鮮明に浮かび上がっていた。
教師が何か囁く。
ボソッとした声だったので聞き取れなかった。
『ヤです』
『いいだろ、お礼に明日もたくさんイカせてやるから』
『はぁ……もぉ、どうせ断っても強引にしてくるんでしょ。はぁぁぁ……どうぞ……』
そう言って、ザクロはパジャマを捲り──。
固唾を飲んで見つめていると、重力を感じさせる大きな胸で、教師の顔を左右から挟み込む。
『うぉ……っ!』
『息が当たる。これで満足ですか?』
『あぁ……すげぇな、あのユイの胸が……』
『今日だって散々触ったでしょ』
悍ましい光景に全身の鳥肌が立つ。
ある意味セックスより気持ち悪い。僕が……憧れて、でも彼女を傷つけないように……とあえて必死に視線を反らしていた大きな胸を我が物顔でむしゃぶりついている。
トラを呼んで、ワープして……どうにか二人を引き剥がさないと……。その衝動に突き動かされた瞬間、ザクロはふぅっと表情を和らげて、教師の頭を優しく抱え込む。
細長い小さな指先で愛おしそうに。
なんで……
なんでそんな顔するんだよ!?
スマホを潰すような握力を込めて握りしめていた。
せめて嫌がってくれ。否定してくれ。それだったらまだ僕が救われる。救われるけどそのためにザクロが傷ついていいのか? と同じ話題を何度も頭の中でループさせてしまう。
「……せんせ」
ザクロは呟くように教師に声をかけると、そっと両手を広げて教師を抱きしめる。
【おっさんのはずなのに……今だけは可愛いかも】
ぎゅっと強く抱きしめた後、不意に離れた。
お互いの顔が……。
音もなくキスを交わす。軽く触れ合う程度に舌先を擦り合わせた後、耳元にザクロは顔を寄せた。
『こんなことしてていいんですか? いいの? でも……そうですよね、あたし達が絆を深めることで、ロボットがもっと強くなる。だから……これって彼のため……世界のため、なんですよね?』
教師は何も言わずにちゅぱちゅぱ音を鳴らした。
ザクロの嫌がる演技。
けど、その言葉の端々や声のトーンから、教師を受け入れているのがわかる。
『なんか赤ちゃん抱えてるような気に……ううん、ならないっ! おっさん! 先生はおっさんです!』
それでもザクロは心底愛おしそうに教師の頭部を抱きしめる。
潤む瞳から、じわっと幸福感が溢れるように目を細める。
ちゅぱ……ちゅぅぅ……ぱっ……。
暗闇の中からたどたどしくその音が響いてくる。
『……おっぱいおいしい?』
──ちゅぅぅ……。
『んっ…舐め方で返事するな』
それからどれくらい時間が経過したのか、僕も覚えていなかった。
もう僕が苦しむだけだとわかっている。
でも、こうして睡魔に落ちる最中でザクロの声を耳にしていると、まるで添い寝しているような錯覚に陥る。
微睡の中で、『……でる? ……わかった、いいですよ……』
ちゅっ……。
と教師の頭部に軽くキスをしてから眠り始めた。
// 続く




