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Gift  作者: 如月双
Phase.5 Progressed編
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Phase.5-24

 この魔導式の特徴は術者に対して効力を失うというものだ。

 だからこそ、自爆特攻のような方法が取れる。

 しかし、それでも、対象に命中した時の衝撃は副産物でしかないので、それは消すことは出来ない。

 故に、鏡介の近くにいる自分はその衝撃を近距離で受けるしかない。

 それでも、彼に勝つことが出来るならば大したことではない。


 ◇


 その程度で鏡介が死ぬとは思えない。

 Driveのモードに入っているので、凛にはその確信があった。

 落ち着きの無い栞を宥めるのは思ったよりも難しく、何かあろうと意味もなく飛び出そうとするのは自殺願望があるのでは無いかと勘繰ってしまうくらいだ。


「鏡介君が、鏡介君が…!!」


 喚く彼女を無視して破壊をまき散らした中心部は未だに晴れておらず、魔導による視認さえも困難な状況ではあるが、得になにもせずにただ凛は眺めていた。


「あの子はそう簡単に死なないわよ。

 それに仮に死んだとしても、その時は…」


 私が()る。

 彼を殺したことを許せないからと言う風には聞こえず、栞は落ち着きを取り戻した。

 この人に逆らっては行けないと本能的に理解した。


 ◇


 胸部からの圧迫が未だに取れない。

 彼の身体の一部が残り、絶妙なバランスで立っているのかと思いきや、先程からその圧迫感はほとんど変わらない。

 人間独特の揺らぎにも似た差異が感じられる。

 それが示すことと言えば。


 視界が晴れる。

 目の前には涼しい顔をした白銀 鏡介。


「どうして」


 生きているのか。

 どうして無傷なのか。


「お前の魔導式は物質を直進させて、衝突したものをその地点から押し出すものだ。

 そして、直進するという性質を持ち、誰もがイメージしやすいものは光。

 光はあくまで、付属品。

 本質は押し出すという現象そのもの。

 物質を押し出すとなれば、設置面にかかる速度は一定だ、それに干渉出来れば大したことは無いだろ?」



 何を言っているのかが分からない。

 彼の魔導の本質は加速ではないのか。

 氷の足場も、CTの補助による魔導なのではないのか。

 口を開き、そこから魔導を吐き出すと衝突寸前でそれは明後日の方向へ進路を変えて進んでいく。


 ◇


「あれ、凛さん?」


 少し目を離した隙に横にいたはずの彼女の姿が見えない。

 動くなと言われているので動くわけにはいかないのだが、急に一人になれば、近くにいるのではないかと思い、人を求めて動き出してしまう。

 とはいえ、凛の恐ろしさのような肌で感じた身としては動いたら死が待っていると確信しているので辺りを見渡す程度に済ましていたが。


 ◇


「鏡介、それ以上はやる必要はない。

 私がやる。

 これ以上は精神(こころ)がイカれる恐れがある」


 震える銃口を男の額に向けたまま停止していた鏡介に後ろから凛が話しかける。


「女がこんな所に出てくるんじゃない。

 それに、改造されてないただの人間が僕に敵うわけ無いじゃないか」


 痛みにも慣れてきたのか、突然割り込んできた凛への気遣いのようなものをする余裕があるらしい。

 男の元気そうな声に銃をおろし、男の胸部から足を離す。

 自由になった身体をすぐさま起こすと、鏡介の行動を訝しむ。

 見たところ、自分に匹敵するような人物には見えない。


「鏡介に倒される程度で粋がるなよ、ガキが。

 相手に実力も分からない雑魚を私が直接殺してやるんだ、感謝くらいしてもらいたいね」


 姿が見えなくなったと思うと、鏡介が地面に崩れ落ち、男の身体は塵芥も残さず消滅していた。

 彼女の言葉を鼻で笑うことも、驚愕な事実を受け止めることも出来ずに、消えていった。


 さてと、と呟き、鏡介の身体を担ぐ。

 誰もいなくなったとはいえ、戦闘行為が静まれば誰かしらやって来るかもしれない。

 その時に自分達がこの場にいるだけは避けたかった。

 とはいえ、一番の懸念事項は、この国にまだ滞在できるかどうかである。

 一応武装の携帯が許されていない国に逃げ込み、そこで鏡介が壊れないように守ってきたのだ。

 他に行く宛もないので、なるべくならこの国にいたいのだ。

 お金もそこまで余分に持っているわけでもないので。

誤字脱字がありましたら、ご連絡下さい。


読んでくださり有難う御座います。

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