Phase.4-2
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登録して下さった方有難うございます。
これからも精進しなければなりませんね。
店員に感謝の意を伝えると、恥ずかしいのかそそくさと店を出る。
裏道を抜けても人がいるのはやはり、この地域が特殊な環境だからだろうか。
わき目を振らずに適当に歩を進める。
視野が狭くなっているのでもう前しか見えていない。
途中男に声を掛けられた気がするが、気にせず邁進。
さて、ここはどこなのだろうか。
ふと我に返り、周囲を見渡す。
人はいるにはいる。
しかし、先程の雰囲気とは違い、どこか影のある空間。
気味の悪ささえ感じる。
踵を返し、急いでこの空間から出ることを考える。
「……あれ?」
何処かで見た事のある横顔が視界の端っこに映る。
間違っていたら困ると言うか恥ずかしいので、声を掛けるにしても彼かどうか確かめるべきだと決め、下手な尾行を開始する。
◇
誰かが自分達を尾行している。
鏡介達を知っているのか、それとも自分達が知っているのかまでは分からないものの、取り敢えず尾行されている事実は変わらない。
目の前を歩く、天野 凛はそれに気付いているはずなのが、それを気にする様子はない。
敵意が感じられないからか、それともわざとなのかもしれない。
彼女がそう判断したのであれば、ほんの少し意識を後ろの人物に裂き、一見すると気にしていないような動作で少し離れた彼女を追いかける。
自分達が尾行に気付いたと思わせずに、追う者の情報を集めようにも、どこかぎこちないそれに素人ではないかと考える。
「姉さん」
「分かっているけど、気にする必要はないと思うよ。
どうも尾行者は鏡介を追っているみたいだから。
私を見てないから」
恐らくは貴方の学園の生徒か、関係者だと思うと付け足し、会話を打ち切る。
何故か歩幅を彼に合わせて並んで歩く事をする彼女に彼は首を傾げるが、何も考えずにそれを受け入れる。
◇
いつのまに女性が彼の横に並んで歩いている。
隠れながら尾行しているので、目を離す事は仕方ない事だ。
自然だった。
彼の隣に並ぶ女性も自然で、彼自身も自然と思える状態であると栞の目にはそう映る。
なんというか羨ましい。
自分もそういった関係になれないのか、今すぐにその立ち位置を交換して欲しいとさえ思えてくる。
それでも、あの二人は自然な関係と思えるが、彼氏彼女、恋人であるとは思えない。
それだけが、彼女にとっての救いなのかもしれない。
◇
「あ、揺らいだ」
急に呟いた彼女を、何かと思い、一瞥してみると悪い事を考えている時のみ見ることが出来る表情だけの笑み。
「左手の荷物貸して」
返事をする前にひったくられ、代わりに彼女の皮膚の固い掌が重ねられる。
何がしたいのか分からない。
自分が幼かった時には眠れない時に手を握って貰っていたが、今ではそんな可愛らしい事はしていない。
そんな習慣も廃れた、その事さえも忘れていた時に彼女からの行動に、嫌な予感しか浮かばない。
しばらく、その状態で歩いていると、凛は尾行を撒いたと何にもなかったかのように呟いた。
確かめてみると確かに自分達を追っている者は存在しなかった。
◇
手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を繋いだ手を手を繋いだ。
しかも恋人繋ぎという指同士を絡ませる方法で。
その事実、その光景が頭の中でエンドレスに再生されている。
恋人ではないと自分の中で判断出来た事だけにこの光景は彼女にとっては大きな精神ダメージを与えていた。
更に彼が振り払おうともしなかった事の方が大ダメージの大本になっている。
後ろ姿しか彼女には見えなかったものの、立ち方、歩き方が綺麗で今の自分では勝てないと分かってしまう。
自分を磨く為にはどうすればいいのだろうか。
化粧?
身嗜みとどう違うのか分からない。
体型?
筋肉質で、身体中に練習で負い、残ってしまった傷痕が多い、そこまで綺麗ではない、有一の美点はスレンダーな所か。
容姿、特に何も言われなかった。
誰かが有名なプロダクションに書類を送り、書類選考を通過しオーディションを受ける事になったが、試合と日程が被っていたので試合を取った。
何故か後日、プロダクションから非常識だという連絡を受けた。
そう考えると井上 栞という人物はそれ程魅力がないのではないかという結論に至り、自己嫌悪に陥る。
見て見ぬふりをしてきたのも一つの原因だと思うのだが、剣を握る以外の事を知らなかった事に疑問を思い浮かべるのがここ1年ぐらいでは遅すぎた。
今更変えようともどのように変わっていいか分からない。
友人も少ない。
オリエンテーションで同じ班だった彼女位しか今の栞には友人と呼べる存在はいなかった。
誤字脱字がありましたらご連絡下さい。
読んで下さり有難うございます。




